話している表情が見えないネットだからこそもっと「詭弁」に気をつける モバプリの知っ得![45]


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社

「詭弁」
間違っていることを、正しいと思わせるようにしむけた議論。道理にあわない弁論。
(大辞林より)

インターネットは誰でも自由に意見を書き込むことができます。
いろいろな意見が出てくる一方で、「これは詭弁じゃないか」と思える、乱暴な論説が広がる側面もあります。

現在、世の中では「フェイクニュース」が注目されています。
ありもしないこと、事実に基づかないこと、いわゆる「デマ」のことをそう呼び、アメリカの大統領選の結果にも影響したともいわれています。

多くの人がフェイクに対して、敏感に身構えている一方、フェイク手前の詭弁に関しては「無自覚に拡散しているな」と感じることがあります。

フェイクと同じく、社会問題を間違った方向で認知させる詭弁に対しても、しっかりと「ノー」の意思表示をしなければなりません。
 

さまざまな種類の詭弁

詭弁とは、一見正しいように思えるが、議論をすり替えて相手を「煙に巻く」手法のことです。そのすり替え方法によって、詭弁にもさまざまな種類があります。

その中でもネットでよく見かける詭弁を紹介します。

1つ目は「誤った二分法」です。
実際には他にも選択肢があるにも関わらず、二択しか提示しないという詭弁です。

例えば「お昼ご飯を食堂で食べるのに反対するなら、お前はご飯を食べないんだな?」といった具合で、実際は「スーパーで買う」「弁当を持ってくる」など他にも選択肢があるのに、2択での答えを迫ることです。

何か物事を2択で迫るような言説には「他に選択肢はないのか?白黒ではなく、間の意見はないのか?」など注意して見る必要があるでしょう。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

さらに「誤った二分法」とあわせてネットでよく見かける詭弁が「ストローマン・藁人形論法」と呼ばれるものです。
これは相手のいい分を捻じ曲げて引用する方法です。

例えば「この食堂では食中毒などのトラブルが多発しているから、しばらく利用を控えるべきだ」との主張に、「あなたは全ての食堂で働いている人を侮辱している。食堂がなければご飯を食べられない人もいる。その主張は間違いだ!」とあさっての方向に解釈し、勝手に反論するのです。

こうした詭弁が重なることで、論点がどんどんとおかしくなることもあります。
ネットの伝言ゲームで「誤った二分法」と「ストローマン」が混ざると、「お昼ご飯を食堂で食べるのに反対するなら、お前は餓死してもいいのか?」と飛躍し、最後は「食堂反対派は餓死したがっている」となるのです。

詭弁はここで紹介した2種類だけではありません。
最低限Wikipediaの詭弁の項目はチェックし、頭の片隅に「こうしたものがある」とワクチンとして残しておくことをお勧めします。
https://ja.wikipedia.org/wiki/詭弁

特にTwitterは要注意

インターネットの数あるサービスの中で、Twitterと詭弁の相性は抜群です。
Twitterは「140文字制限」があるため、どうしても言葉を削る作業が必要になります。その過程で、詭弁がまぎれ込むのです。

本来は、さまざまな角度・視点で考えなければいけない社会問題も、詭弁を使えば140文字で「ズバッ」と言い切り、一見すると正しいように見えたりします。
複雑な問題も、詭弁を使うことで分かりやすく(なったように)感じ、広く拡散していくのです。

詭弁に翻弄されないためにも、あらかじめ詭弁に対しての警戒心や免疫をつけておくことが大事です。

また、あらかじめ詭弁に対しての免疫をつけることで、自分自身が使わないように気をつけることができます。

と、ここまでえらそうに書いて来た私も、恥ずかしながら過去のTwitterの投稿で無自覚に詭弁を使ってしまっていると思います…。
それだけ詭弁は私たちの身近にあり、気を抜けば侵食されるものだと強く意識しなければなりません。

なぜデマと詭弁を容認してはいけないのか?

この連載ではインターネット上でのトラブルや問題点を取り上げ、注意喚起・周知になればと思い、書いてきました。

その中でも、特にデマについて多く取り上げています。
それは「デマの拡散と訂正の拡散が釣り合わないため、後者に加担したい」「デマによって毀損された個人・団体の名誉を少しでも回復させる」「デマを知ることで似たようなデマの拡散を防げる」などが主な理由です。

さらにデマ(および詭弁)を許してはいけない理由として「本来は丁寧かつ慎重に進めなければいけない社会問題についての認識・意識を、全てぶち壊す」が挙げられます。

当然ですが、社会問題を簡単に解決できる魔法のような方法はありません。
世の中にはいろんな立場の人、いろんな考えの人がいるわけで、みんながある程度、納得しつつ、(予算を含む)現実的な案として何かを決断して進めるためには、相当丁寧な議論が必要です。

こうして少しずつ進めてきた議論を、デマや詭弁は一瞬で台無しにし、過去に戻します。

「食堂の例え」で説明すると、トラブルを起こした食堂の問題点を解決しようとしている最中、「食堂反対派は餓死を望んでいる!」ととんでもない主張がはびこり、これに対して「餓死は望んでないよ!」と応答することで、本丸である「食堂の今後」の議論が弱まるのです。

デマにしても、詭弁にしても、長い目で見ると百害あって一利なしです。
惑わされないように、そして自分がうっかり使ってしまわないためにも、常に警戒し、ネットに接する必要があるでしょう。
 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」3月11日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/