災害時の「募金中抜き」デマは復興を遅らせてしまう モバプリの知っ得![63]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

7月5日から降り出した大雨で、西日本で大洪水が発生しました。6月の大阪での大地震、そして沖縄での台風など、日本全国でさまざまな自然災害が起きています。

今回の豪雨では車や家屋が水に沈んでいくショッキングな映像がネット上でも広く拡散されました。こうした映像を見て、胸を痛めた人も多いと思います。

大災害の時は皆が不安になり間違った情報が広がります。
残念なことに、今回の西日本豪雨でもインターネット上で多くのデマが広がりました。

この連載でも繰り返し述べていますが、デマや流言、また正確性に欠ける情報は人々を惑わせ苦しめることになります。災害時にはなおのことです。

今後こうしたデマを少しでも防ぐために、今回広がったデマを改めて確認しましょう。
 

「窃盗グループデマ」は要警戒

まず最初に広がったのは、残念ながら災害デマの定番になりつつある「窃盗グループが来ています」と言うものでした。

例えば「外国人が窃盗をしている」「このナンバーの車は窃盗グループです」といった具合です。

少しややこしいのは、実際に災害時に窃盗や業者を装った詐欺等も発生しており、警察も注意するよう呼びかけていることです。

広島県警発表「被災者を狙った泥棒と詐欺にご注意ください!」
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/318289.pdf

覚えておきたいのは、デマの特徴は事実に尾ひれをつけ、特定の人物・所属の人たちを犯人扱いすることです。

いかんせん一部分が正しいだけに、信じる人が出てきて拡散されやすくなります。また、窃盗グループと決めつけられた人たちが逆に“自警団”によって襲われる可能性もあります。

100年前から続く、残念な災害デマです。

関連記事-災害時のデマ拡散NO! 救える命を守るため私たちにできること モバプリの知っ得![60]
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-744864.html

こうしたデマを拡散した人は「注意するにこしたことはないから」と善意で広めたと思います。当初は信じていなくても、こうしたデマが何度も繰り返されるうちに「火のないところに煙は立たない」とデマを少しずつ信じるようになり、いつの間にか「またあいつらか」と事実や歴史をねつ造することになります。

災害時の情報は、警察や行政の発表を待ち、慎重に取り扱う必要があるでしょう。

広島県警発表「デマ情報に惑わされないで!」
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/318287.pdf

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

大阪府知事も広げた「募金中抜きデマ」

今年2月に発生した台湾大地震の時には、下記のような「ここに募金するとお金が中抜きされるので注意してください」としたデマがツイッターで広く拡散されました。

“台湾の地震で募金する時の注意事項ね
ドラえもん募金(朝日系列。一部しか届かず残りは朝鮮へ)

サザエさん募金(フジ系列。同じく。)

日本ユニセフ(一番ダメ。アグネスチャンやスタッフの収益に大半が消費される。)

ピースウインズ(北朝鮮系。言わずもがな。)
募金する際は直接日本赤十字へ!”

※該当のツイートは削除済み

関連記事-台湾地震で発生した「デマ」と繰り返される「外国人差別」 モバプリの知っ得!
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-667490.html

募金先によってお金の使い方が異なるため、事情を踏まえた上で募金をすることは大事でしょう。

しかしながらデマはよくありません。

こうしたデマで募金に対する間違った認識が広がり、お金が集まらなくなれば復興を遅らせることになります。

台湾地震の時はとあるツイッターユーザーの投稿が発信元となりましたが、今回の西日本豪雨では松井一郎大阪府知事が、地震の寄付の話題に関連して「因みに共産党の募金活動は、先ず自分たちの経費を差し引くので注意しましょう」とした義援金デマをツイッターに投稿。

松井知事はのちに勘違いだったと陳謝しています。

大阪・松井知事、共産党の募金は「先ず自分達の経費を差し引く」 抗議受け「申し訳ありません」
https://www.j-cast.com/2018/07/11333627.html?p=all

市井のユーザーでなく、公職者、それも大阪府知事が募金に関するデマを流したこともあり、インパクトは大でした。

今後、災害時には類似する「○○に寄付すると中抜きされる」という言説が広がることが予想されます。

そうした情報を見た時には、より一層の警戒心を持ち、しっかりと考える必要があるでしょう。

安倍首相クーラーデマも

今回の西日本豪雨では、さらにデマが続きます。

“倉敷の友達が言ってた。「急に避難所に自衛隊が来てお風呂が設置された。クーラーがついた。ここは比較的被害が少ない地域なのになぜ優先的に?警備体制がやたら凄くて、今日から学校も再開なのに何があるのかと思ったら安倍総理が来るんだって。あれアピールのために慌てて準備したんだよ。」と。”

こうした投稿も、ツイッターで拡散されました。
要は「安倍総理と自民党は被災地のためでなく、アピールの復興をやっている」と言うことなのでしょう。

しかしこの投稿も、世耕弘成経済産業大臣や防衛省が否定し、デマであることが判明しました。

BuzzFeed-エアコンと仮設風呂は、安倍首相の視察にあわせた設置? 世耕経産相や防衛省が否定
https://www.buzzfeed.com/jp/kensukeseya/west-heavy-rain2?utm_term=.wx6053lNo#.hoXgdA6x7

政府の対応を注視し「復興支援」が適切なものであるのか、チェックすることは大事です。

しかしながらその情報が正しくなければ、現場で混乱を発生させる可能性がありますし、結果として復興の遅れにつながることも考えられます。

災害時は、多くの人が被災地を救いたい一心でさまざまな情報を発信し、拡散します。しかし、その情報が正しくなければ、人々に間違った認識が植え付けられます。

その結果、復興が遅れ、災害対策が前に進まないことが予想されます。

災害時だからこそ、情報の発信・拡散は慎重にしなければなりません。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」7月15日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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