「女性活躍」が進まない本当の理由~沖縄の実態から考える【働き方改革@沖縄(5)】

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女性活躍推進法が2016年4月に施行され、2年以上経ちました。皆さんの職場で“女性活躍”は進んでいますか。

「『女性活躍推進』と聞くと、『もっと女性が頑張れよ』と言われているように感じる。女性が働きやすい社会ではない中、仕事、家事、育児など、さまざまな役割を担って毎日必死で動いている私たちに、これ以上頑張れというの?」

組織コンサルタントという職業柄、多くの働く女性と接する機会がありますが、女性たちからは諦めや失望感にも似た声が聞こえてきます。今回は「女性活躍」をめぐる沖縄の現状について考えてみたいと思います。




◇執筆者プロフィル 

波上こずみ(なみのうえ・こずみ) コズミックコンサルティング代表

子育て・介護と仕事との両立に苦しんだ経験を踏まえ、2016年に起業。「働く人のモチベーションを組織の活力へ!」をテーマに、沖縄の企業や個人を対象としたコンサルティングを手掛けている。1976年、那覇市首里生まれ。1男1女の2児の育児中。



女性活躍推進って何?



女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、働く女性の活躍を後押しするために、従業員301人以上の事業主に状況把握や課題の分析、行動計画の策定を義務付けているものです。従業員300人以下の事業主は努力義務とされています。

具体的には、女性の管理職比率をあげることや、働く環境の課題解決に向けて企業ごとに目標を掲げ、その実現に向けて環境を整備していく-などの内容となっています。

男性中心の社会構造からの脱却を打ち出し、政府主導で働く女性の環境整備に向けて始動したのは大きな一歩であると評価できるかと思います。

一方、この動きによって女性が働きやすい社会が実現できているのでしょうか。企業の中で本当に女性活躍は進んでいるのでしょうか。



沖縄の企業で働く女性たちの挑戦




沖縄の企業で働く女性の現状や課題を調べようと、沖縄県経営者協会・女性リーダー部会が「かふーあがちゅんプロジェクト」として、「働く女性の意識調査」を実施し、11月に調査結果を発表しました。

※参照記事:沖縄の企業で働く女性1172人の“本音”から見えること【「働く女性の意識調査」結果より】
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-834024.html



調査結果からは、女性活躍推進や働き方改革が社会課題となる中、沖縄で働く女性が実際どのように感じているのが示されました。特に記述式回答で寄せられた「自由意見」では女性たちの“本音”が浮き彫りになっています。

同調査の結果を踏まえながら、筆者が接してきた女性たちの声から垣間見えてきた、沖縄における実態を少しだけご紹介します。



「これ以上頑張れっていうの?」



「女性活躍推進など、働き方改革など騒がれているが、現実、女性がまだまだ活躍し辛い現状であり声を発信しても何ら届かない環境だと思います」

かふーあがちゅんプロジェクトの調査結果にあった「自由意見」の一つです。

「もっといい仕事がしたい」
「キャリアもあきらめたくないし、プライベートも充実させたい!」

女性たちがそう思っても実現できないのは「女性を取り巻く環境が追いついていないからではないか」「私たち女性がいくら頑張っても、何も現実は変わらない」・・・そんな女性たちの悲痛な思いが浮き彫りになっています。



「女性活躍推進」がうまくいかない理由



ではなぜ「女性活躍推進」がうまくいかないのか。そこには、企業においても家庭においても共通して、日本特有の男女の役割分担の意識に原因があると言われています。よく言われる4つの原因を挙げてみます。

① 家事の分担が進んでいない

県内で働く子育て中の男性が体験したエピソードです。

彼の家庭は共働きで、二人の子育て中です。ある日、子どもが熱を出してしまい、仕事が休めない奥さまの代わりに彼が急遽、仕事を休むことに。会社に「子どもが熱を出したので年休をいただきたい」と電話を入れると、「お前の奥さんは何をしているんだ? なんで奥さんが休まないのか? 男が休んで何をするのか?」とののしられたと言うのです。

これは何十年も前の話ではありません。沖縄でもこうした考えがまだまだ根強いのが現状です。

さらに沖縄特有の事情として、仏壇行事や親戚付き合いなどで、たくさんの仕事を担わされてきたのは女性であり、それが「当たり前」という雰囲気がいまだにあります。

フルタイムで働く女性が増えるなど時代が変化しているにもかかわらず、こうした古い価値観や慣習にしばられ「女性がやるべき」という無意識のプレッシャーで動き回らざるを得ない女性たちがたくさんいるのです。

上記の調査の「自由意見」には
「沖縄の女性は、職場だけではなく家事の負担が減っていないと感じます。嫁ぎ先の親戚付き合い(お盆など)で女性はパタパタしているのにも関わらす、男性はお酒を飲んで遅くまでつきあわされるので、沖縄の男性の意識を変えることが大切だと思います」という声もありました。

仕事や家事でもヘトヘトなのに、男性の家事参加もなかなか増えず、沖縄の女性たちはとにかく毎日の生活に必死なんです。このような現状で、果たして女性活躍が見込めるのでしょうか。

「これは家庭の問題で、会社としてはどうしようもできない」という経営者の声も耳にします。

ですが経営者の皆さん、あなたの企業で働く男性社員に家族はいませんか。

企業としても男性社員の家事参加を積極的に促すことで、ひいては自社の女性社員も含むあらゆる人材が働きやすくなる環境につながるのです。



② 業務の見直しが進んでいない
  • 女性の管理職を増やす
  • 女性のキャリアパスを明確化する
  • ライフステージが変わっても働き続けられる制度を導入する

など、新しいアクションを起こしている企業も増えてきました。ところが、そんな先進的な企業で働く女性たちですら表情が曇っている・・・というケースも多々あります。

こうしたケースの場合、従来から続いている仕事を見直すことなく、過去のしがらみや「こうあるべき」との思い込みで、時代に合わない業務を続けているケースが多々見受けられます。

これまで女性たちが担当することが多かったお茶汲み、コピー取り、事務所の掃除、単純な入力作業などについて、「本当に必要なのか」「どのようにすれば効率良く生産性が上がる仕事になるのか」と見直したことはあるでしょうか。

加えて、今まで男性がやってきた業務を「男女平等だから」と女性に割り振ってはいないでしょうか。残業を前提とした男性的な働き方が残る風土で、従来の業務のやり方を見直すことなく女性に仕事を任せることは「女性活躍推進」ではないのです。



③ 育児中の女性に特化している

女性活躍推進ということで、育児中の女性に対する制度を積極的に導入・推進している企業もあるかと思います。もちろんそれも労働者を守り働きやすさを促す一つの手法であり、制度がを整えることは大切です。

ところが、どんなに制度が整っていてもその恩恵を受けるのが「育児をしている女性だけ」になり、該当しないメンバーに負担がかかってしまうような状況では、環境は良くなりません。むしろ組織内の不協和音にもつながりかねません。

「女性だから優遇されている。男は気軽に休めないのに、女だけいいよな」

「女性は育休が取れていいよね。男性は一生休むことなくずっと走り続けなければならないのに」

「育児中の女性ばかり優遇される。独身女性、子どもがいない女性はプライベートを充実させることを望んではいけないのしょうか」

企業で働く人から、そんな声が聞こえてくるのです。

「子育て中の女性は大変だから…」と一方的に決めつけて、あえて責任の軽い仕事しか割り振らず、モチベーションが下がっているというケースも少なくありません。

また、子育て中の女性ばかりが優遇されて、そのしわ寄せを独身女性が受けている、という課題もよく耳にします。

当然ながら『女性』といっても、子育て中の女性もいれば、独身の女性もいます。同じ子育て中の女性であっても、祖父母のサポート体制が万全な女性もいれば、そうでない女性もいます。

「育児中の女性だけ」と限定するようなやり方ではなく、一人一人がどのように働きたいのか、どうすればその人が最大限に力を発揮できる環境になるのかを考えることが重要なのです。
 



④ 不透明な評価と男性主体のコミュニケーション

キャリアアップを望まない女性に話を聞くと、「そもそもキャリアアップの定義が社内で明確になっていない」という意見も上がってきます。こうした企業に特徴的なのは「長時間勤務ができて、上司に気に入られる人が昇進する」という噂が飛び交い、実際に不透明な評価による昇格が起こっていることです。

調査結果でも「ゴルフ、飲み会、勤務中のランチなどは上司が男性だと男性しか誘われないし、女性は行くつもりもないので、コミュニケーションの差が生まれている」という声もありました。

このような不透明な評価や、男性主体の社内コミュニケーションが「社風」となっている企業で「女性活躍」の実現が程遠くなるのは言うまでもありません。
 




どうすれば女性が活躍できる環境になるか



沖縄でなぜ女性活躍推進が実現できないのか、主に4つの課題を挙げてみました。では今後どうすればいいのか、解決のための対応策を幾つかご提案します。



① 「働き方」の意思確認をする

男性女性問わず、社員がどのように働いていきたいのか、社員一人一人が望む働き方に耳を傾け、会社側と働き手側が共に環境を作っていくことが必要です。定期面談やコミュニケーションを通して、企業側と働き手側の意思確認を進めましょう。単に希望を聞くだけではなく、どうすればその環境を作っていけるかを双方で話し合える場づくりをしましょう。

② 業務を共有化する

育児中の社員のみならず、これからは介護で時間的な制約が出てくる社員が男女を問わずに増えてきます。「この仕事はあの人しかできない」という属人化を防ぎ、業務をできる限り共有化し、チームで成果をあげるという仕組みを進めていくことが、社員の定着と女性活躍につながります。



③ 時間だけで評価しない仕組み

長時間労働を美徳化せず、成果に対して評価する仕組みを整えましょう。そのためには、自分たちの業務の成果とは何かを経営者・管理職含めメンバー全体で納得するまで議論していくことが不可欠です。

④ 働き手の意識改革も

働き手の意識改革も重要です。一人一人が「うちの会社はダメだ」「上司が理解してくれない」と愚痴をいったり他者を責めたりするのではなく、「自分がどうありたいか」「どのように働いていきたいか」を内省し、その思いを発信し、自ら組織を変える努力が必要です。



自分の強みを生かすにはどういう働き方を希望するのか、その働き方を実現するためには自分自身も含めてどのように取り組みが進めばいいのか、希望や思いを建設的に上司や社内に提案する姿勢も求められています。



誰もがやりがいを持てる働き方を



「女性活躍推進」を実現することは、男女問わず働く全ての人の「活躍」につながります。さらに生産性が高く、その人のライフステージに合った柔軟な働き方を実現することで、企業も働き手も成長し続けることが可能になります。

施策や行動目標を絵に描いた餅にせず、企業や社員の実態に即しながら、社員一人一人が伸び伸びと実力を発揮できるような企業が増えることが「『女性活躍推進』の成功」と言えるのではないでしょうか。

女性はもちろん誰もがやりがいをもって働き、持てる力を発揮できる環境が整い、「女性活躍」という言葉自体が必要ない世の中になることを期待してやみません。
 




企業の人事担当者の皆さんにも多くご参加いただいている沖縄労働局主催の人材定着支援セミナー=2018年8月、沖縄県内

執筆者プロフィル 波上こずみ(なみのうえ・こずみ)コズミックコンサルティング代表
1976年 那覇市首里生まれ。沖縄県立首里高校、東京経済大学卒業後、2001年JTBワールド(東京)に入社。04年に帰沖し沖縄観光コンベンションビューローに入職。05年に結婚、08年に長男、11年に長女を出産。復職後、同ビューロー初の組織内人事担当者として、人材育成プログラムを構築、講師を務めた。父親の介護問題にも直面し16年に退職。自身の経験を生かし同年4月、組織コンサルタントとして起業した。 

波上こずみ公式HP http://kozumi-naminoue.com/




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