本連載も4回目です。連載中も学校講演会を行っていますが、行く先々の学校で連載記事が掲示され、「読みました」という声を頂き、本当にうれしく思いました。そして先日の12月3日の石垣市立八島小学校講演会で訪問学校が延べ100校となりました!
これまでの学校講演会の中で忘れられない一人の生徒がいます。ある島の高校生でした。
その生徒は身体の性は女性として生まれ、一方で自分自身を男性と感じていました。講演後、個別に相談をしたいと保健室にやってきてくれました。本当は学ランを着用したいが学校に前例もなく、そもそも親が男性の服装を着ることを認めてくれないので悩んでいました。約30分間の相談を受けましたが、その間涙は止まらず、繰り返し言う言葉が「島にはもう二度と帰ってきたくない」でした。
その生徒の話を聞きながら、私自身も涙をこらえるのに必死でした。まだ若くこれからいろんな将来があるはずなのに、その生徒の心は押しつぶされそうになっていました。同時に「どうして大人は子どもをこれほどまでに追い込むのだろうか」という思いがわいてきました。
私は沖縄出身ではありませんが、沖縄が大好きです。沖縄出身の方は地元への思いが深く、「ウチナーンチュ」であることを誇りに思っている方も多いと感じます。しかしLGBTの人は、おそらくその多くは沖縄で、特に地元の地域で生活することを困難に感じています。
例えば、お盆や正月などの親戚の集まりや地域の行事が多い沖縄では独身だと「結婚しないのか」と聞かれる機会が多かったり、長男なんだから、女なんだからといったプレッシャーを感じたりすることも多いと思います。そんな状況でLGBTの人は地元の人間関係に疲れ、地元を離れる人も多くいます。特に田舎や離島ではそうした生きづらさがより強いと感じます。
親戚や地域のつながりは沖縄の良さであると思います。都会にはないお互いの助け合いや協力、心の温かさが今もあります。しかしその一方でLGBTの多くはそこに居場所が見つけられず、地元を離れます。まだ若い高校生ですら「島には二度と帰ってきたくない」と言い続け、涙を流しながら大人に訴えてくるわけです。
私はあの子の涙を一生忘れないと思います。あんな心の痛みを感じる子どもが一人でも少なくなるように、前向きに生きられるように、私は学校講演会で伝え続けていきたいと思います。そして、いろんな人が地元を好きでいられる、そんな本当の意味で温かい心をもった沖縄であってほしいと願います。
(2018年12月18日 琉球新報掲載)
たけうち・きよふみ 岡山県津山市出身、沖縄県在住。レインボーハートプロジェクトokinawa代表。LGBTをテーマに学校講演会を数多く行う。