働くあなた 休めていますか?【働き方改革@沖縄(9)】

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オーストラリアでカルチャーショック




「なんで休みの日にお店が開いていないの!?」
「休みにサービスを受けたいのに、営業していないなんて考えられない・・・」

15年以上も前のことですが、筆者はオーストラリアに留学していました。1年間現地で生活する中でたくさんのカルチャーショックがありましたが、中でも「基本的に休日は働かない」という国民性の違いにとても驚きました。

例えば、一般的に企業が休みである週末や年末年始、日本においては一般客向けの店舗や事務所は基本的に稼ぎ時であり、営業しているのが当たり前という感覚があると思います。

ところが、オーストラリアでは休みの日にはほとんど店舗が定休日で(都心部では異なる場合もありますが)、街が静まり返っていました。人々は一般的な娯楽施設ではなく、自宅で家族と過ごしたり、公園や海岸で友人と楽しんだり、自分たちなりに楽しみ方を工夫するのが休日の過ごし方でした。
 




◇執筆者プロフィル 

波上こずみ(なみのうえ・こずみ) コズミックコンサルティング代表

子育て・介護と仕事との両立に苦しんだ経験を踏まえ、2016年に起業。「働く人のモチベーションを組織の活力へ!」をテーマに、沖縄の企業や個人を対象としたコンサルティングを手掛けている。1976年、那覇市首里生まれ。1男1女の2児の育児中。



筆者自身、最初の数カ月間は日本とのギャップに驚き、「稼ぎ時にサービス業や小売業が休むなんて信じられない。客が必要としているのに!!」と不便さを何度も感じていました。

別の日の出来事です。
閉店間際のスーパーで買い物をしていると、私以外にまだ何人も客がいるにも関わらず、店内の電気が消え始め、従業員が出入り口のドアを閉め始めたのです。

「まだ買い物してるのに、まるで追い出すように閉店の準備をするなんて信じられない」と怪訝に思っている私の反応とは真逆で、他の客は「あっ、急がなきゃ」と言い、買い物を終えたら店員さんに、「遅くなってごめんなさいね。良いディナーの時間を過ごしてね」という言葉をかけていました。
 



「働く人」にもプライベートがある



こうした状況に私はただ驚きました。それは「お客様第一」という考え方が根付いている当時の日本の環境とは真逆の光景でした。

「なぜ休みの日はお店が開いてないの?なぜ客がいるのに営業しないの?」

「客がいるのに、急かすように閉店作業をしているのはなぜ?」

オーストラリアの友人たちに聞いたところ、「労働者である前に、私たちは1人の人間。労働者として責任も果たしている。彼らにだって私たちにだって家族がいるし、自分の大事なプライベートがある。それを大事にしたいと思うことは人として当然じゃない?」と。この答えにただ愕然としました。

日本にいるとそんなことは全く考えたことがなく、自分が利用したいときにお店やサービスが利用できないことを不便に感じ、「なんで開いてないの!!」と一方的に不満を抱いていました。

当然ながら、サービスを提供する側には働く人がいて、私たちと同じようにプライベートがあり家族がいて自分の生活がある。それなのに自分が消費者という立場になった途端、それが見えなくなっていたのです。

一人一人が自分本位ではなく、「みんなの生き方を尊重した社会」というのはこういうことなんだと痛感させられました。

筆者がこの経験をしたのは15年以上前の話ですが、それから20カ国以上、さまざまな国を旅行していく中で同じような体験をすることが多々あり、日本人がいかに勤勉で働き過ぎの人種であるか、ということを実感させられました。
 



物やサービスを生み出すのは「人」



決して、勤勉であることが悪いというわけではありません。先輩たちが勤勉で必死に働いてきたからこそ今の日本があり、それは尊敬すべきことだと思います。さらに欧米のやり方がベストだと言いたいわけではありません。

日本製の商品は抜群の性能だし、日本のサービスは本当に素晴らしい。人を思いやる気持ちや協調性、おもてなしの心は、他国とは比較できないほど素晴らしい素質であり、誇れる文化だと思います。

ただ、あまりにも便利になり過ぎ、かつ物が溢れすぎ、物やサービスを生み出し作り出しているのは「人」だということを、私たちは忘れていないでしょうか。働く人のことを軽視していないでしょうか。

翻って我らが沖縄ではどうでしょうか。
ゆいまーる、イチャリバチョーデーなどの言葉に代表されるように、相手を思いやり、困っている人はみんなで助けるという、誇れる精神文化がある地域です。

一方で、サービス・小売業が多い地域でもあります。必要としている時にサービスを受けるのは当たり前という意識が根付いていないでしょうか。

企業側も、お客様のニーズがある限り常に対応し続けることが当然と考えていないでしょうか。「そこで働く人」のことにどれだけ理解があるでしょうか。

全国的に働き方改革が進む中、沖縄においては「有給休暇をしっかり取得できて、業務もしっかり回して超過勤務はない、なんて企業はまだ希少だ」という感覚がないでしょうか。
 



「管理職になりたくない」が多い職場は…



「働き方」を見直すことで長時間労働が減り、人材が育ってきたという沖縄県内のある企業の事例をご紹介させてください。

サービス業の同社に対して、私は「働き方改革」をテーマにコンサルティングを行いました。こちらの企業も昨今の人手不足の影響で、慢性的な長時間労働が課題になっていました。有給休暇どころか、週休がなんとか取れているという状況でした。労働時間や休日取得率など、数値的にデータを分析しても深刻な状況になりつつあり、定着率や採用率も芳しくない状態でした。

そこで要因を分析するために、管理職を中心として「業務の棚卸し」を行いました。実際にどれくらい働いていて、何の業務にどれだけ時間がかかっているかということを中心に記録を取ってもらいました。

※参考記事:今こそ業務の棚卸しを!スクラップ&ビルドにもポイントがある【働き方改革@沖縄(7)】
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-857324.html

そこで浮き彫りになったのは、店舗管理責任者がかなりの時間働いていたことでした。現場スタッフが不足している時間帯にヘルプとして働いているのはもちろん、現場スタッフがしっかり配置できている日でさえ、管理者が出勤していました。

「現場は回せていると思いますが、なぜ出勤していたのですか」

そう質問をしてみると
「責任者として店舗にいる必要があると思っている」という考えの方々がほとんどでした。

個々にヒアリングをしてその背景を深掘りしてみると、部下になかなか仕事を任せきれず、責任者として一人で業務を抱えていたことが分かりました。

同時に、責任者の長時間労働や休日出勤が多い店舗は、人材が育っておらず、スタッフの定着率が良くない傾向にあることも分かりました。

「自分が責任をもって店舗を運営しなければ」という姿勢は、責任感が強いという点では大変評価ができる点かもしれません。少し前の時代には、休みも取らずに「会社のために身を粉にして働く」ことは、お手本になるような働き方だったかもしれません。

しかし、長時間働き続けることが評価され、それが職場の「風土」になってしまった場合、その上司の姿を見ている部下はどのように感じるでしょうか。

「あんな風になりたい」と思うでしょうか。

実際、部下の多くが管理職になりたがらないといった組織や部署では、往々にして、上長自身が長時間労働の傾向があるのです。

「自分が苦労すればすべてまとまる。誰にも迷惑をかけていない」とおっしゃる方もいますが、次世代育成や人材定着といった側面からみると、こうした姿勢は逆効果になっているのです。

こちらの企業ではコンサルティングを続けていく中、一人の店舗管理責任者が自身の働き方を見直し、「自分が頑張れば回ると思っていたが、それではその下の社員が育たないことにウチアタイした・・・」と気づき、意識的に仕事を部下に任せ、休みを取るようにしました。

その結果、全体の長時間労働が改善されつつあると同時に、責任者がいない時にどう現場を回すかということでチームの結束力が強くなり、現場が自主的に動くようになったという良い傾向が生まれつつあります。
 



働く人を尊重できる企業が成長する



企業活動ですから、当然のことながら収益を上げなければ、お客様やステークホルダー(利害関係者)に迷惑をかけるだけではなく、そもそも社員の生活も成り立ちません。ですから、企業活動を疎かにしてもいいから社員は休めと言っているわけではありません。「甘やかす」とか「手を抜け」というわけでもありません。

不確実な未来だからこそ、人の柔軟なアイデアや創造性が必要とされています。柔軟なアイデアを生み出すためには、まずは健康で元気な身体を維持し、頭も心も柔らかい状態であることーつまり人間らしさを大事にすることーが前提ではないでしょうか。

「社員は会社のために忠誠心を持ち、会社が求めるように働き続ける」といった従来型の働き方からの脱却が今、求められています。これからの時代は、働く人の生き方を尊重できる組織が成長するのは明白です。

人間は機械ではありません。
健康で、人間らしい生活を大切にしながら働くこと。
一人一人が自分らしく、自分の強みを発揮し、その強みが掛け合わされてチームとして成果を出すこと。それが、付加価値の高いものやサービス、アイデアを生み出せると考えます。
 



2019年の10連休をどう過ごしますか?



改元に伴い、2019年のゴールデンウィークは10連休となります。

「そんなに休めるわけないさー」と言うセリフも聞こえてきますが、いかがでしょうか。

あなたの周囲は、休める環境が整っていますか。
休むことに理解はありますか。

企業も個人も、休み方のあり方を今一度、考え直してみましょう!
 



企業の人事担当者の皆さんにも多くご参加いただいている沖縄労働局主催の人材定着支援セミナー=2018年8月、沖縄県内

執筆者プロフィル 波上こずみ(なみのうえ・こずみ)コズミックコンサルティング代表
1976年 那覇市首里生まれ。沖縄県立首里高校、東京経済大学卒業後、2001年JTBワールド(東京)に入社。04年に帰沖し沖縄観光コンベンションビューローに入職。05年に結婚、08年に長男、11年に長女を出産。復職後、同ビューロー初の組織内人事担当者として、人材育成プログラムを構築、講師を務めた。父親の介護問題にも直面し16年に退職。自身の経験を生かし同年4月、組織コンサルタントとして起業した。 

波上こずみ公式HP http://kozumi-naminoue.com/




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