人が育たない企業が陥りがちなワナ【働き方改革@沖縄(16)】

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働き方改革@沖縄

先日、プライベートである施設の窓口を訪れたときのこと。新入社員らしきスタッフが先輩に付き添われながら来客対応をしていました。「ここにサインをして、この資料をコピーして、空欄に日付を書いて・・・」など一つ一つ先輩社員に手順を確認しながら応対をしていました。
「私も新入社員の時は必死で仕事を覚えていたな」と懐かしい気持ちになりながらその光景を眺めていましたが、ふとある疑問が湧いてきました。

「新人が教えてもらっていることはあくまで仕事の流れや作業のことではないだろうか。誰のために、何のために、この作業が必要なのか。仕事の目的やゴールなどについて、先輩社員は伝えているのだろうか」と。

当然、作業を覚えなければ一人前に現場に出ることができないので、しっかり流れを掴む事は必要な事です。しかし、「人を育てる」ということは「作業の流れを教える」ことだけでしょうか。



働き方改革@沖縄

◇執筆者プロフィル

波上こずみ(なみのうえ・こずみ)
Cosmic Consulting(コズミックコンサルティング)代表。組織コンサルタント。

子育て・介護と仕事との両立に苦しんだ経験を踏まえ、2016年に起業。
「働く人のモチベーションを組織の活力へ!」をテーマに、沖縄の企業や個人を対象としたコンサルティングを手掛けている。
那覇市首里生まれ。1男1女の2児の育児中。




社員に“考えさせる”してますか?



私は組織コンサルタントとして、社員が活躍し企業が成長するための組織作りに関して様々な企業のお手伝いをしています。最近では人手不足が深刻になり、業界問わず、社員の定着や育成に大きな関心を持つ企業が増えてきました。

これは、ある小売業の企業からご相談を受けた時の話です。
「社員が受け身な姿勢で困っている。専門知識はありキャリアもあるが、仕事を自分本位で考えていて、自ら動く姿勢が見られず、求める人材として育っていない。今まで研修を実施していないことが原因の一つだと思うので、主体的な人材になるために研修をして欲しい」と経営者よりご要望がありました。

実態を探ってみると、人手が足りず、早く一人前になって現場に出て欲しいという思いから、管理職やリーダーが現場スタッフに細かく指示を出しているという現状がありました。特にマニュアルもなく、現場スタッフは分からないことがあれば考える前にすぐ上長に確認し、答えを出してもらうという流れができていました。驚いたことにそれは新入社員のみならず、入社何年もたった現場社員も同様で、上司からの細かい指示を待つという風土ができてしまっていたのです。

ヒアリングを重ねていく中でさらにその背景が見えてきました。
かつて、業務の目的や意図に疑問を持ち質問したものの「もうそれは決まっていること。忙しいからとにかくやって」と跳ね返された経験をした社員もいたというのです。


当然、急を要するケースは上長の確認は大事になってきますが、日常の細かい業務まで上司に確認をしていると、自ら考えるより必然的に指示を仰ぐ人材に育ってしまいます。この企業の場合、自ら考えて動く人材を求めているにも関わらず、主体的に動こうとする人材の成長を無意識のうちに遮断してしまい、「自分で考えるより、上司に聞いて、その通りに動く方が楽」と考えてしまう人材に育ててしまったのです。

こうしたケースの場合、研修を実施することも大事ですが、同時に現場でも「考えさせる」機会を与え、気づきや学びをアウトプットできる環境づくりが大変重要になってきます。

・    この作業は何に繋がっている?
・    最終的にこの業務のお客様は誰?
・    そもそも私たちの仕事は何のためにやっていて、何を実現することがビジョン?

などを意識的に伝えながら、時には問いを投げかけながら、「考えさせる」ことを上司から部下に促していくことがポイントです。

現場でできることはたくさんあるにも関わらず、「研修をやれば主体的な人材が育つ」と研修頼みの企業は少なくありません。



求心力と遠心力



気づきや学びをアウトプットする環境づくりには、企業の理念が土台になります。

理念とは、組織の価値観や根本的な考え方を意味します。

組織の志すものは何か、その志や価値観に少しでも共感できているか。組織で働く一人ひとりがその理念が何を意味し、どう実現するのかを考えることが育成においては大変重要になってきます。

理念は扇子に例えると、一つ一つの羽根をしっかりと土台で固定しておく要のようなものです。

「理念は綺麗事に過ぎない」と言う方もいらっしゃいますが、仮にその理念に求心力がなければ、要のない扇子と同じ状態です。一つ一つの羽根がバラバラになり、機能しなくなるのです。

そして求心力とともに大事になってくるのが、社員一人ひとりの遠心力です。


働き方改革@沖縄

求心力と遠心力。

要にしっかりと軸足を置き(求心力)、もう片方の足でどれだけ広く展開し、広い視野で物事を捉えて事業を展開できるか(遠心力)。この求心力と遠心力のバランスがしっかり取れている企業ほど、人材が成長し定着につながる企業と言えます。

短期的な視野で物事を捉え、一方的に答えを与えていないでしょうか。

「いま何が起きていて、それは何を意味しているのか」
「この状態は自社や自分の仕事にどう影響するか」

視座を高くもち、観察できているか。自分でしっかり考えているか
そういう意識を持つように人材を育てていますか。

先述の企業では、その後、組織の理念を土台に社員をどう育てていくか、経営者と管理職が一緒になって定期的に意見交換をするワークショップを行っています。まだ進行中ですが、参加している管理者から、
「今まで部下に対して、良かれと思って常に答えを与え指示を出していた。今思えば、そのせいで部下が指示待ちになってしまったのだろう。これからは相手に考えてもらうような問いかけをしてみたい」などの発言が見られ、育成の重要性に気づき始めています。



答えが一つではない時代



今は「VUCA」の時代と言われています。「VUCA」とは、Volatility(変動、激動)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(不明確さ)の頭文字から取った言葉で世の中では、数々の激動が起こっており、極めて予測不可能な状況に直面していることを表しています。沖縄も例外ではありません。
正解は一つとは限らない時代だとも言われています。

組織の中に置き換えてみると、先輩たちの仕事のやり方や成功してきた経験も、時代や環境の変化の中で必ずしもそれが正しい方法だとは限定できなくなってきているのです。

そんな激動の時代に生き残るためには、右から左へ物を移すといった単純な作業を教えることではなく、「今何が起こっているのか」ということにアンテナを立て、自ら考え動き、ビジョンに向かってメンバーを巻き込む人材育成が重要になってきます。まさしく主体的に動く人材です。

そのためには、どのように社員を育てるのか、理念を軸に、組織としての考えや意図を持たなければなりません。付け焼き刃的に研修を実施するのではなく、一つ一つのアクションに意図を持つことです。それは日々の現場の中でも、もちろん研修の中でも、あらゆる場面でできるアクションです。
戦略的に人材を育成することが不可欠な時代になっています。

あなたの企業は、志を共にする仲間と成長できる環境になっていますか。




【執筆者プロフィル】

波上こずみ(なみのうえ・こずみ)
Cosmic Consulting(コズミックコンサルティング)代表。組織コンサルタント

那覇市首里出身。株式会社JTBワールド、一般財団法人沖縄観光コンベンションビューローを経て、2016年Cosmic Consulting設立。
【働く人の生き生きを組織の活力へ】をビジョンとし、主に働き方改革や人材定着、人材育成プログラム構築、組織開発など、人事面から変革を起こすための組織活性コンサルティングを行っており、マスコミ、福祉法人、ホテル業界、飲食業界等、多種多様な業界に対してのべ100社以上のコンサルティング実績を持つ。
コズミックコンサルティングのHP→http://kozumi-naminoue.com/




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