めんそーれは「造語」だった? マブイロードを歩くVol.1


めんそーれは「造語」だった? マブイロードを歩くVol.1
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 始まりました! 琉神マブヤーARISE(アライズ)。2008年10月、ご当地ヒーローとして誕生した琉神マブヤーは今年10周年を迎えます。シリーズ8作目となる今回のタイトルはARISE。皆様に愛され、育まれてきた沖縄生まれのヒーローたちが再び立ち上がり、生まれ変わっての登場です。

 このコーナーでは毎週、番組の中で取り上げたテーマに関する面白ネタや歴史、舞台になった観光スポットなどをご紹介します。

 さ~て、記念すべき第一回は『めんそーれ』誕生秘話の巻。

 

海洋博がきっかけ

ビンスル御嶽でマブイグミをされるタケル(10月7日放送回より)

 沖縄のそこかしこで見かける『めんそーれ』の看板。一般的には『いらっしゃいませ』と訳され、観光客を迎えるキャッチフレーズとして知られています。

 今回那覇に出現した悪の軍団(マジムン)のボス・ハブデービルは観光客で賑わう街に興奮し、那覇空港到着ロビーにあった「めんそーれ」のマブイストーン(魂)を奪います。そうすれば人々からおもてなしの心が失われ、沖縄観光は大混乱におちいると悪知恵を働かせたのです。

 ところで、この「めんそーれ」という言葉、不思議に思ったことはありませんか?

 なぜなら、日常の会話で「めんそーれ」という一言でお客様を迎えることは皆無だからです(*1)

 語源は日本語の古語「参り召しおわれ」(まいりめ)や「参り候え」(まいりそうら)とされていますが、ではなぜ「めんそーれ」が「いらっしゃいませ」と訳され、広く普及したのでしょうか?

 時は42年前に遡ります。1972年12月21日、那覇市で『海洋博を成功させる会』が発足しました。海洋博とは『海、その望ましい未来』をテーマに復帰記念事業の一環として開催された一大イベント。正式名称は沖縄国際海洋博覧会です。

 翌日の琉球新報と沖縄タイムスには『EXPO、75 海洋博開幕まであと800日』と題した特集が同時掲載になり、『めんそうれぇ お国ことばで客を迎えよう』が提言されました。

 これは同年秋、鹿児島国体を視察した沖縄県婦人連合会の宮里悦さんが、現地で歓迎を表すフレーズに『まっちゃげ申した(*2)』が使われていたことに着想を得たものです。そう、「沖縄もぜひ、郷土色豊かな言葉でPRできないか」と考えたわけですね。

那覇空港国内線ロビーにも「めんそーれ」の看板が

議論になった言葉

 ところが、この提言は後に激しい議論を呼び起こします。「めんそーれは敬語ではない。お客様に無礼である」と読者からクレームがついたのです。

 作家の大城立裕氏は著書『沖縄 風土とこころへの旅』(現代教養文庫)の中で当時の騒動に触れ、このように述べています。

「『ようこそ』にあたる言葉を決定する会議で、『いめんせーびれー』が正確で敬語にあたると異を唱えた人がいた。しかしそれでは複雑すぎるということで、正確さを少しセーブした」

 つまり、使い方としては正確ではないが、そこはあえて大目に見て、耳心地のよさや馴染みやすさを優先させたわけです。いいものは大胆に取り入れ、オリジナルにしていく発想はいかにも沖縄らしいですね。

 そんな経緯を経て誕生した「めんそーれ」ですが現在は沖縄の言葉として最も知名度の高いフレーズになりました。

 言葉は生き物。毎年生まれては消えていく流行語もありますが、この「めんそーれ」はずっと受け継がれていく『しまくとぅば』になるでしょう。というわけで、皆さん、めんそーれ 琉神マブヤーARISE!

*1 一般的には「またん、めんそーれ」(又お越しくださいませ)や「~むっちめんそーれ」(~をご持参ください)という言い方で使われています。
*2 お待ちしておりましたの意

     

石を祀る壺屋のパワースポット

 壺屋といえば焼物店が軒を連ねる「やちむん通り」が有名ですが、通り沿いには荒焼きの登り窯では唯一現存する南ヌ釜(ふぇーぬかま)や、裏手には「いしまち通り」という300年以上前の古道などがあり、見どころスポットが散在しています。

 今回、主人公のタケルがおばあにマブイグミをしてもらったビンズル御嶽(うたき)もそのひとつ。ビンジュルグヮーとも呼ばれ、集落を守護するタチクチ(村建て)の霊石が祀られています。

 壺屋では最も重要な聖地で、地域の神事はすべてここで催されます。ビンズルの背後に神木のように立つ大きなガジュマルも印象的です。
 

県指定文化財・南ヌ窯