最近よく聞く「成年後見制度」って何? 【沖縄の相続】暮らしに役立つ弁護士トーク(15)


この記事を書いた人 仲程 路恵

「家族や自分が認知症になったら、財産管理はどうすればいいの?」

そんな心配事を耳にすることが増えてきました。団塊の世代が全て75歳以上になる2025年には、認知症の高齢者が現状の7人に1人から、5人に1人に増えると厚生労働省研究班が推計しています。誰もがいつ直面してもおかしくない問題です。最終回は、万一に備えるために「成年後見制度」をご紹介します。

≪成年後見制度って、どんな制度なの?≫

認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な人は、不動産や預貯金などの財産の管理、介護などのサービスや施設入所の契約、遺産分割協議などをする必要があっても、自分ですることが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約でも、内容を十分に判断できずに契約してしまい、悪徳商法の被害に遭う恐れもあります。

このように判断能力が不十分な人の権利を保護するのが成年後見制度です。

成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

≪家裁が選任する法定後見制度≫

皆さんが一般的によく耳にするのは「法定後見制度」だと思います。法定後見制度は、判断能力の程度など本人の状況により、「後見」、「保佐」、「補助」の3つに分かれています。家庭裁判所が、判断能力が低下した本人のために、本人の状況に応じて、審判により、「成年後見人」、「保佐人」、「補助人」を選任します。 

選任された「成年後見人」等は、本人の利益を考慮しながら、本人を代理して契約などの法律行為を行ったり、本人が自分で法律行為をする際に同意を与えたり、本人が同意しないで行った不利益な法律行為を後から取り消して、本人の権利を保護します。

≪弁護士が選ばれるケースも!≫

成年後見人等を選任するには、本人、配偶者、4親等内の親族や市町村長などが家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。申し立てをする際に、成年後見人等の候補者を付して申し立てることができますが、候補者が必ず選任されるとは限りません。

どのような保護・支援が必要かなど、本人の実情に応じて家庭裁判所が選任するので、親族以外にも、法律の専門家である弁護士や福祉の専門家などが選ばれることもあります。

例えば、本人の子どもなどは将来的に、本人の財産を巡り対立が見込まれる場合があり、成年後見人等には親族ではなく、弁護士が選任されることがよくあります。

選任された成年後見人等は、本人の身上監護や財産管理を行い、その事務について、家庭裁判所に報告するなどして、家庭裁判所の監督を受けることになります。

≪元気なうちに準備できる任意後見制度≫

法定後見制度は、あくまで、本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に成年後見人等の選任をしてもらう制度です。そのため、本人が元気なうちは申立をすることはできません。

一方、本人が元気なうちに、本人の判断能力が不十分になったときに備える制度があります。それが「任意後見制度」です。

任意後見制度とは、本人の判断能力が十分なうちに、将来、判断能力が不十分な状態になったときに備えて、自分であらかじめ選んだ受任者(任意後見人)に、療養看護や財産管理について代理権を与える任意後見契約を締結するものです。

任意後見契約は、公証人の作成する公正証書で結ばないといけません。

本人の判断能力が低下した後に、本人から委任を受けた任意後見人が、契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督の下、本人を代理して契約などをすることにより、本人の権利を保護します。

― 執筆者プロフィール ―

弁護士 尾辻克敏(おつじ・かつとし)

 中央大学法学部、中央大学大学院法務研究科卒業。司法試験合格後、県内にて1年間の司法修習を経て、弁護士業務を開始。常に相談者の話を丁寧にお聞きし、きめ細やかな法的サービスを的確かつ迅速に提供し、全ての案件に誠心誠意取り組んでいる。

 相続問題・交通事故、企業法務等を中心に取り扱う。相続問題では、沖縄の風習や慣習、親族関係にも考慮した適切な解決を心がける。

弁護士 尾辻克敏