「敷居高い」イメージ 変えたい
沖縄市の一番街商店街に店を構える創業72年の「おやかわ呉服店」。3代目の親川雅矢さん(33)は、「着付けが難しい」「敷居が高い」などと敬遠されがちな和服に親しんでもらえるような取り組みに挑戦している。手軽な浴衣レンタルやコラボ商品の開発、商店街と連携したイベントなどを通して、着物文化の普及を目指す。
着物や浴衣、反物、和装小物などが並ぶ「おやかわ呉服店」に入ると、洋服の上に作務衣(さむえ)を羽織った3代目の親川雅矢さん(33)が現れた。「(着物は)敷居が高いというイメージを覆したい」と、普段の生活に取り入れやすい着こなしの提案や、イベント企画、浴衣レンタルなど、老舗の呉服店に新風を吹き込んでいる。
おやかわ呉服店は1950年に雅矢さんの祖父、故・親川要貴さんが「親川商店」として創業した。越来村(現沖縄市)嘉間良の「胡差(コザ)中央市場」に店を構え、着物以外にも洋服などを扱っていたという。その後、軍用地返還後の55年頃に現在の場所に移転。後に「おやかわ呉服店」へと改称し、着物の専門店となった。客層は9割が地元の人。「正直な商売をすること」というポリシーは代々受け継がれ、地域に根差しながら発展してきた。
着物の販売・レンタルの他、手入れも行う。「手入れに関しては京都にある専門業者と提携して、染み抜きや丸洗いなどのリクエストに対応している」といい、着物の販売だけではなく、アフターケアも充実させている。
1・2階の売り場に加え、「父の代で始めた」という撮影ができるスタジオと美容室も3階に併設。「着付けからヘアメーク、撮影まで完結できる」のが金額を抑えられる理由だ。
浴衣レンタルで若者にPR
父で現・代表取締役の智さん(62)に続き3代目になる雅矢さんの前職は飲食店の店長。「最初は着物に全く興味なかった」ものの、子どもが生まれたのをきっかけに深夜まで及ぶ仕事からの転身を決意。26歳の時に同店に入社した。
入社後すぐに始めた浴衣のレンタルは好評だ。「浴衣は着物の入り口」と考える雅矢さんは、気軽に利用できるよう価格を抑えたプランを作った。浴衣一式と着付けがセットで1泊2日3500円。必要な小物類も付くので手ぶらで来店でき、返却の際の洗濯も不要だという。「高校生に話を聞く機会があり、浴衣を着たことがなく、そもそも祭りにも行かないと言われた」。雅矢さんは、今年からは高校生向けに1000円のプランも用意した。店の存在を知ってもらい、成人式の振袖の利用にもつながることを期待する。
利用客には、下駄の代わりにスニーカーを組み合わせたり、帯締め代わりにベルトを使ったりと、洋服のように手軽に着られるスタイリングを提案している。自らも「和服を着るときは洋服の要素を取り入れたい」という雅矢さん。「洋服感覚のカジュアルスタイルであれば簡単に着られる」と話す。交流サイト(SNS)でも積極的に情報を発信。投稿をきっかけに来店する若者もいる。
イベントやコラボ商品開発も
雅矢さんはコザ商店街連合会事務局長、一番街商店街青年会長も務め、商店街と連携したイベントなども企画。浴衣コンテストや浴衣を着て出かけるイベントなどで、着物に親しむ機会を生み出すと同時に、商店街の活性化もねらう。
コラボ商品も手掛けた。昨年は沖縄市住吉のアパレル・アートギャラリーショップ「CENTER SOUND STORY」と共同でオリジナル浴衣を製作。今年は、沖縄市を活動拠点とするプロバスケットボールチーム、琉球ゴールデンキングスとコザ商店街連合会のコラボ浴衣をプロデュース。「CENTERSOUND STORY」がデザインを担当した。「着物に全く興味のない人でも、キングスが好きな人経由で少しでも興味を持ってもらうことができれば」と期待する。
さまざまな試みで着物の普及を目指すおやかわ呉服店。「着物を着る人が少なくなってきているので、間口を広げたい」と意欲を見せた。
(坂本永通子)
おやかわ呉服店
沖縄県沖縄市中央 1-14-17
TEL 098-937-3018
(2022年7月21日付 週刊レキオ掲載)