ヤンバル産Tシャツで地域を盛り上げたい
ヤンバルの動植物や共同売店をテーマに、徹底して地域にこだわったローカルTシャツ作りを行うブランド「ヤンバルジャクソン」。ポップでユニークな絵柄の中に、水本由香さんが自らの目で確認して動植物の特徴や、聞き込みを行った地域の歴史がしっかりと織り込まれている。豊かな自然に包まれた国頭村安波集落の古民家に暮らしながら、手作業でTシャツ作りを続ける水本さんに話を聞いた。
「ヤンバルジャクソン」というブランド名は、マイケル・ジャクソンのもじり。「私がマイケル・ジャクソンのファンなので夫がつけてくれました。一度聞いたら忘れられないインパクトがあり、お客さまにも喜んでもらって、とても気に入っています」と水本由香さんは話す。
水本さんは大阪府出身。9年前に夫の大介さんと共に沖縄に移住し、国頭村安波集落の古民家に暮らす。周囲はやんばるの森に囲まれ、「キョキョキョ…」と響き渡るヤンバルクイナの鳴き声が聞こえることもしょっちゅう。「本当にすばらしい環境だと思う」と満足そうに語る。
移住後、地域にもすぐに溶け込んだ。「沖縄の人は優しくて明るく、人なつっこい。私も大阪人なのでノリが合う。集落の人たちにも良くしてもらいました」と笑う。
沖縄の文化や風物も大好きになったが、水本さんが特に魅了されたのは、ヤンバルの動植物だ。「沖縄の亜熱帯の森は、内地の山とまったく感じが違う。昆虫や両生類も独特」と目を輝かせる。
ヤンバルの動植物をTシャツに
5年前に立ち上げたヤンバルジャクソンのTシャツには、ヤンバルクイナやジンベエザメ、リュウキュウオオコノハズク、島バナナなど、水本さん自身がデザインを起こしたユニークな動植物の図柄が描かれている。
図柄は動き出すような線で描かれ、楽しくポップな印象を与えるが、モチーフとなった動植物の特徴をしっかりと押さえているのがこだわりだ。
「なるべく正確に、実物を自分の目で見て描きたい。そうでなければ、気持ちも絵に入らない。形を崩すにしても、分かってから崩したい」と力を込める。
時には図柄に生態を織り込むこともあり、例えば水本さん自身が気に入っているという「渡り鳥のミサゴ」の図柄には、ホバリング(空中停止飛行)し、急降下して両足で海中のイラブチャー(国頭村の村魚)をつかんで上昇するミサゴの行動が描かれている。
現在約35種類あるTシャツには、それぞれのモチーフについて丁寧に紹介した解説文も同封し、購買者にヤンバルの森の魅力を伝えている。
共同売店への思い
ヤンバルジャクソンでは、図柄のデザインから印刷、各販売店への納品まで、すべての工程を水本さん夫婦2人でこなす。図柄を版から布地に印刷する刷り込みの作業も、自宅の古民家に増設した手作りの工房で行っている。
販売は、本島北部の共同売店、道の駅、リゾートホテル、観光施設などに委託している。ネット通販も行っているが、メインは店舗での販売だという。
地元ヤンバルを盛り上げたいという気持ちも、Tシャツ作りの原動力。中でも思い入れが強いのが、共同売店だ。
「現在は高齢化が進み、閉めてしまう店も多いが、共同売店は物を売るばかりでなく、行事を支えたり、ユンタクの場となったり、地域のコミュニティーにとってなくてはならない存在」と水本さん。一方、共同売店を訪れる観光客からは、「ここでしか買えないものが欲しい」という要望があり、それに応える形でオリジナルTシャツの販売を委託している。ヤンバルを訪れる観光客は動植物への関心が高く、ニーズにもうまくマッチしているという。
ヤンバルジャクソンでは、国頭村の安波、安田、伊部、奥、東村の慶佐次、高江、うるま市伊計島の各共同売店について、地域の歴史や風物を聞き取り、図柄に落とし込んだオリジナルTシャツや手ぬぐいも制作。レトロな商標を思わせる味のある図柄に仕上げた。
水本さんは「ヤンバルの自然は題材の宝庫。作りたいもの、やりたいことがまだ山ほどある」と創作意欲を燃やす。ヤンバルの新たな土産物として、地域を盛り上げていってほしい。
(日平勝也)
ヤンバルジャクソンのTシャツは安波、安田、伊部、奥、慶佐次、高江、伊計島の各共同売店、オクマ プライベートビーチ&リゾート、大石林山、羽地の駅、古宇利オーシャンタワー等で販売。
問い合わせは
☎︎ 070(4128)0624
https://yjackson.thebase.in/
(2020年1月23日付 週刊レキオ掲載)