東京の小学校に8年間勤務していたルナさんは、第二子出産を機に地元沖縄へ帰郷。
4歳と1歳のお子さんを育てながら、現在は学習支援員として学校現場に復職しています。
子どもの権利条約(以下「権利条約」)を授業で習うのは6年生ですが、それ以前に「いじめ」や「差別」は権利侵害であり、なぜしてはいけないのかを子ども自身に考えさせるアプローチが必要です。
東京でルナさんが実践してきたことを中心に、小学校の先生という立場から見た子どもたちや、関わり方次第で大きな変化が見られた親御さんの話を聞きました。
―学童期に学ぶ人権や権利教育とはどのようなものですか?
関東の多くの小学校では年に3回いじめに関するアンケートをとっていました。いじめは全国的に大きな問題なので、それを予防するために一人ひとりの声の聞き取りに力を入れていました。その前提から道徳の授業では相手の気持ちを考え、イヤなことは拒否できるなど、人権を意識した伝え方をしていました。私が勤めていた学校では人権教育の研修は必須で、同和問題やDVなどさまざまな事例が盛り込まれた冊子を使って教員としても毎月継続して学んでいました。
―アンケートにはいじめ以外の回答もあったのでしょうか。
個人的な小さなつぶやきやささいなケンカのことも自由に書かれていたので、権利条約にある子どもの意見表明権は守られていたと感じます。深刻なケースは担任だけでなく管理職や養護教諭、時には校長のサポートが入ることもありました。保護者や地域の人に対してはオープンで、授業参観では1週間の期間を設けて実施していました。学校のことを隠さず知ってもらう方針だったからか風通しはとてもよかったですよ。
―東京の子どもたちや親御さんについて教えて下さい。
2年生の担任をしていた時、問題を抱えた家庭の子:Aさんがいました。毎日遅刻をしてくるので両親に連絡をしたら、電話口から怒鳴られたり罵倒されたりしたこともありました。幸い特別支援学級を受け持った経験があったので、Aさんの特性に配慮した指導を重ねるうちに徐々に落ち着いてきました。校内はもちろん外部(役所や児童相談所)との連携もできていたので心強かったことを覚えています。
―ちょうどその頃に上のお子さんを授かったそうですね。
目に見えておなかの赤ちゃんが育っていく時期だったので、胎児のエコー写真を見せたり関連絵本を読んだり、子どもたちに「みんながどれだけ大切な存在なのか」の話をしていました。授業参観時には両親への感謝をテーマにした手紙を書いてもらい、Aさんが「お母さん、私を生んでくれてありがとう。大好きだよ」と発表した時は教室中から大きな拍手が巻き起こりました。学級便りにそのエピソードを載せたら、今度はAさんのお母さんからお礼の電話をいただいたんです。
―感動的です。プラスのエネルギーが伝播したんですね!
一人ひとりが持って生まれた個性を伸ばし、引き出すことができたら、子どもは見違えるほど成長します。自分らしく育つ権利を保障することが多様性を認める社会に直結するのではないでしょうか。私も親となり、子どもが生き生きと成長する姿は周りを変える力があると実感しています。さまざまな親子のかたちがありますが、どんな親であっても子どもは彼らが大好きで愛されたいんですよね。助けが必要な親の支援と両立することで、子どもが自分らしく育つ環境は好転するのだと思います。
<次回予告>
★11月は児童虐待防止推進月間★
毎年11月は【 児童虐待防止推進月間 】として、厚生労働省が主体となり子どもの権利を普及・啓発する活動をしています。
沖縄県では4月に「沖縄県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例」を制定したこともあり、コロナ禍の今年は特に力を入れています。
当連載では思春期の子どもをテーマに、元高校教諭のえくぼママと助産師さんにインタビューをしました。若年妊娠や性暴力の背景にも迫りながら、子どもが「虐待から守られる権利」についてご紹介します!
★子どもの権利を考えるオススメ本
『うばわないで! 子ども時代』
編著:増山均・齋藤史夫
出版社:新日本出版社
権利条約第31条、休息と余暇(気晴らし)・遊び・文化芸術活動に参加する権利に焦点を当て、豊かな子ども期のあり方を考える。
(えくぼママライター やけなみわ)
☆ プロフィル ☆
やけなみわ
神奈川県出身の二児の母。元編集者・ライター。現在は小学校のPTA活動を中心に、子ども食堂のボランティア、平和・環境活動、親子英語クラブの運営に携わる。趣味は観劇。旅行。スキューバーダイビング
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