「わら算」をお正月飾りに!?【島ネタCHOSA班】


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年明けに向けて、「わら算」をお正月飾りに生かす体験講座があったそうです。そもそもわら算とはなんでしょうか。

(那覇市 わらしべ長女さん)

デジタル時代にわら算の体験講座。何とも超アナログな題材にそそられた調査員、わら算作りを体験してきました。同講座は、沖縄の地域文化おこしを主軸に活動する「NPO法人あきみよ」(棚原洋子代表理事)が、浦添市特産の桑茶を用いた沖縄そば作り・お点前の体験とともに「トントンハウス」(沖縄市登川)で実施しました。

結び文化を伝承

わら算とは昔、文字を持たない沖縄の民が稲わらを結んで数を数えたり記録したりしたという、いわば縄製の計算機のイメージしかない調査員。実際にわら算を作ることに興趣が湧き、わら算作りの伝承者が存在することにも妙に感慨を覚えました。

わら算を伝承指導する玉代勢賀園(英)さん

当日の講師は、「賀園飾り花結び」主宰の玉代勢賀園(たまよせ かえん)さん(85)です。「19歳の頃、木目込み人形や伝統の琉球人形を学び始めて以来、ありとあらゆる人形を手がけてきた」と玉代勢さん。細やかなその手仕事は「飾り花結び」に及び、48歳で師範として携わることに。そして東京で開催された飾り花結びの会本部の展示会で沖縄のわら算に出合ったのでした。

結び文化の伝承からわら算を捉え、独自の歴史性を重んじた玉代勢さん。「出身地の石垣島では戦前までわら算が使われていたので、30年前親戚のお年寄りを訪ねるも最初は教えてもらえず、習得するまでは何度か島へ通いました」

稲わらを綯(な)うわら仕事の手ほどきを受ける一方、文献をひもときながら玉代勢さんは県内でもまれなわら算作りの存在に。「これからは、地域の講習会などで技術を伝えていきたいと思っています」と語ります。

結縄の収穫算

琉球王朝時代から使われてきたわら算はおおむね、米の量を表す大きな単位「俵」4本を親縄にして、「斗・升・合・勺・才」と単位を下げて束ねた各小縄を一列に並べた形状や、上部に大きな単位をまとめて束ねたもの、それらが混合したタイプに類別されるといいます。沖縄本島では主に取引や契約の記録と計算などに、宮古島・八重山諸島では人頭税に伴う税量の徴収や記録に用いられました。(「沖縄県史第九巻民俗」)

わら算の収穫算(石垣島) 収穫算 1石(4俵)7斗5升4合2勺8才

体験講座では、素材の稲わらは今年の11月稲刈りを終え乾燥を施した金武町の田んぼからもたらされたもの。「こうべを垂れるほどの稲穂も調達できて、まさにお正月飾りにふさわしいわら算に仕上がりそうです」と、玉代勢さん。

玉代勢賀園(英)さん

一列形状のわら算作りは、親縄4本を15センチほどなうことからスタート。稲わらを両方の手のひらに3本ずつ、左右をつなぐわら1本両方の指で挟んで撚(よ)り合わせて、根元をしっかり引っ張ってから先はほどいた状態にします。

さらに単位を一つ下げた「斗」は、両方の稲わらを両手のひらで互い違いにすり合わせ、ひたすらすり合わせ…、この間、無の状態の調査員。長くなってきた縄を両膝で押さえ込みすり合わせつつ、「これがわら仕事というものですね」と調子に乗っていると、「この調子で60センチほどを1本用意します」と、玉代勢さんから発破がかかります。

わら算で仕立てた風流なお正月飾り

縄はそれぞれはみ出したわらや穂先をカットして形を整えます。そして「俵」単位の縄に結びを3玉こしらえた「斗」単位の縄を巻き付けて、さらに単位を下げた異なる結びを順次並べて巻き付けたら出来上がりです。

わら算は古来、地域によって結び方や読み方が異なるといいます。さて、出来上がったわら算を単位の大きい結びから読むと、合計1石(4俵)7斗5升4合2勺8才の収穫算となりました。

(2023年週刊レキオ新年号掲載)