県産ヘナ・琉球藍への思い貫く 株式会社レイ企画 代表取締役 中村はる美さん


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植物染毛料をゼロから開発

16年前、1本のヘナの苗木を譲り受けたことをきっかけに、ヘナと琉球藍の研究を重ね、県産の植物染毛料を開発した中村さん。「ユーザーさんに信用してもらうためには、見えないところでも手抜きをしてはいけない」と徹底的な衛生管理の下、商品の製造に取り組む=那覇市天久のレイ企画直営サロン「サロン・ド・レイ」 写真・村山望

県産ヘナと琉球藍による人と環境にやさしい植物染毛料を販売する株式会社レイ企画。きっかけは、16年前にあるイベントで譲り受けた1本のヘナの苗木だった。苗木を栽培することから始めて、県内の研究機関と協力しながら研究を重ね、商品化を実現。同時に、ヘナと共に、髪を黒く染めるためには欠かせない琉球藍の加工技術も確立し、2015年に特許を登録した。さらに今年、これまで廃棄されていた琉球藍の茎を活用した線香を開発し、注目を集めている。

レイ企画の代表取締役・中村はる美さん(61)は、明るくパワフルな女性だ。社長業で全国を飛び回りつつ、那覇市天久の事務所2階の直営サロンで髪染めの施術を行い、1階の工場に立つこともある。

ヘナは糸満市、琉球藍は本部町で栽培されたもの。それらを工場で染毛料へと加工しているが、洗浄、異物の除去から始まる製造工程は、大変な手間がかかる。だが中村さんは「ユーザーさんに信用してもらうためには、手抜きはしない。手抜きするなら、ものづくりはやらないほうがいい」と断言する。

琉球藍の茎。染料の含有量が低いため、廃棄されていたが、独特の香りに注目した

きっかけは1本の苗木

「16年前、国産のヘナはなく手探り状態でのスタートでした」。店舗プロデュースや企画、セラピストの仕事で活躍していた中村さん。「そのころ、白髪が生え始めて…。でも私は化学染毛剤のアレルギーで、頭皮を痛めてしまった。当時お手伝いしていた健康サロンでも同様の方が多く、頭皮のケアをしてあげたいと思ったんです」

中村さんは沖縄モズクの成分に注目し、頭皮用のローションを開発。ローションをアピールするため出店した展示会で、ある来場者から「ヘナって知ってる?」と1本の苗木をもらい、翌年、糸満市の畑で栽培を開始した。

生葉の洗浄から徹底した衛生管理を行う(提供写真)

ヘナはインド原産。高温を好むため、県外では商品化できるほどの葉を付けないが、糸満市の畑ではよく育った。栽培を広めようと県内各地の農家に苗木を譲渡したところ、北部の土壌では生育が悪く、中城村以南が適地だということも分かった。

「沖縄でヘナが育つなら、安心な髪染めを提供できるかもしれない」。中村さんは、沖縄工業高等専門学校でヘナの色素含有量の試験を依頼。後に栽培を定着させつつ、「オーガニック琉球ヘナ」の製造体制を確立した。

琉球藍の線香も開発

化学物質に頼らずに髪を黒く染めるには、ヘナだけでなく藍も必要となる。ヘナはオレンジ色に染まるが、藍と混ぜると化学反応で黒く染まる。

藍には種類があるが、中村さんは、琉球藍にこだわった。「よく使われているインド藍(ナンバンコマツナギ)は、アトピーの方には使えない。全然性質が違うんです」。藍農家にかけあって理解を得、原料を確保した。

生葉の洗浄から徹底した衛生管理を行う(提供写真)

商品化には琉球藍の加工の難しさがハードルとなった。単純に粉末にするだけでは、髪に染色せず、劣化も早い。中村さんは県工業技術センターの協力を得て研究を開始。研究員と共に試行錯誤を繰り返し、生葉から色素と酵素を別々に加工し、粉末の鮮度を保つ独自の工程を確立。2015年に特許を登録した。その後、琉球大学に成分分析等を依頼し、更に上質な琉球藍白髪染めを完成させた。

ゼロからヘナと琉球藍に向かい合ってきた中村さん。今年、その仕上げともいえる商品を発売した。これまで廃棄されてきた琉球藍の茎を使った線香「真髄(FUNISHIN)」だ。

琉球藍には独特のとがった香りがあるが、淡路島の老舗メーカーが白檀と組み合わせることを提案。互いの魅力を引き出す香りのマリアージュが生まれた。

優しくも気品ある香りの琉球藍線香「真髄(FUNISHIN)」
琉球藍線香のパッケージには、天描画家大城清太さんが描いたジーファー(かんざし)をあしらった。「女性を守るという意味が込められています」と中村さん

「コンセプトの『真髄』は、思ったことを最後まで貫くということ」。茎まで有効に活用することで、琉球藍を沖縄の財産として後世にまで残したいという思いを貫いた自身の生きざまが商品名に込められている、と話す。

「最初はどうなるか分からず、無我夢中で作ってきましたが、ヘナと琉球藍を通して多くの出会いがあり、今は私が作る商品を待ってくださっている方がいる。すごい体験をさせていただいていると思いますね」と中村さんは笑顔を浮かべた。

(日平勝也)


株式会社レイ企画

那覇市天久1068-7
TEL 098(988)0463
 

(2023年5月18日付 週刊レキオ掲載)