今年度も残すところあと1カ月。実は私はこの時期が好きではないのです。なぜかというと、学校の先生方の転勤が決まる頃だからです。
私は小学校、中学校は養護学校(現特別支援学校)に通い、クラスは私1人だけのことが多かったです。授業中、担任の先生と、私の2人で過ごすのがほとんどだったので、私にとって担任の先生は大親友。先生のことが大好きで、いっぱい私のことを伝えたいし、認めてもらえたいし、先生のことも知りたかったです。本当の友だちだったら放課後や土日も遊びに行ったり、家に電話したりできるのになぁ、と思っていました。
私は小学校1、2年生が同じ担任の先生で、大好きな人でした。でも彼女が転勤することになり、それを知ったのは修了式の直前でした。子どもの世界は大人が思うよりもはるかに狭く、生活に関わる一人一人が大切なのです。大好きな先生が一瞬にしていなくなり、会いたいのに、会えない。8歳の私は本当に悲しかったです。学校のそんな仕組みは「諦めることも大事」という大人の世界を突きつけられた感じがしました。そして大人への信頼、期待を裏切られたできごとでした。
先生と児童生徒の関係は繊細であり、とても難しいですよね。先生は職業的に必要なこともあり、児童生徒の家族環境をはじめ、多くのことを知っています。でも逆に子どもが先生のことを知る機会は少なく、プライベートなこと、例えば家族のことなどを聞いてもにごされることがよくあります。対等ではないこの関係が私は悲しいです。職業上、仕方のないことかもしれませんが、大好きな、信頼している人に、一線を引いて付き合わなければいけないのは、子どもにとっては本当に悲しいことです。
大人になった今でも同じ不安や悲しさに直面することがあります。わが子の保育園の先生と仲良くしたいのに、保護者は先生のプライベートを聞かないのがマナー、お茶をしに行くなんて絶対にできません。本音をいうと、子どものことなど関係なく、魅力的な先生と仲良くしたいのですが。
現場で働く先生方にお願いです。転勤が分かったら、できるだけ早く児童生徒に伝え、たっぷりとお別れの時間を持ってほしいです。そして連絡先を交換できるとよりうれしいです。「先生」「児童生徒」という肩書のせいで、付き合いが途絶えると、傷を抱えてしまう子どももたくさんいるからです。「大好きな人とつながっていたい」という子どもの気持ち、大切にしてほしいです。
(次回は3月5日に掲載します)
伊是名夏子
いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。
(2018 年2月19日 琉球新報掲載)