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不便さが減る魔法の一言 100cmの視界から―あまはいくまはい―(26)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

車いすに乗っていると街中で不便なことはたくさんあります。お店の入り口に段差があって入れなかったり、トイレが狭くて使えなかったり。エレベーターが混んでいて乗れず、移動に時間がかかることもよくあります。でも思いやりの一言で、不便さが激減することも!魔法の一言で、私が感動したサービスを紹介します。

大好きなファストフード店で1人ランチ。1階には数席しかなく、2階がメインの客席です。お手洗いも2階なので私は使えません。1階席でフライドポテトを待っていると、店員さんが「お手洗いが使えなくて申し訳ないです。手が洗えない代わりにと言ってはなんですが、アルコールを含ませたおしぼりです。よければお使いください」と持ってきてくれました。インフルエンザがはやっている時期だったので感動しました。トイレが使えないのを承知で利用しているお店でしたが、その気遣いがとてもうれしかったです。

また、新しくできたケーキ屋さんでのことです。試食を配っていたので並んで待っていました。でも私の前に横入りする人がたくさんで、全然もらえません。小さい私が目に入らないのか、1人で買い物すると思われていないのか…。悲しい気持ちになりながらも待っていると、店員さんが「先にお待ちのお客さまがいらっしゃいますので、順番にお待ちください」と横入りのお客さんを制してくれたのです。車いすユーザーというより、1人のお客さんとして見てもらえたその一言がうれしくて、ケーキもさらにおいしく感じました。

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どんなお店にも車いすでも入れて、みんな同じように自由に買い物ができたらありがたいです。でも人は一人一人違うので、誰にとっても使いやすいを形にするのは難しいでしょう。そんな時ちょっとのサービスや一声で、不便さをカバーできることがあるのです。

階段があり車いすが入れないお店では、テークアウトメニューや、数席だけでもいいので車いすが入れるスペースを用意してもらえるとありがたいです。車いすトイレがない時は、最寄りの車いすトイレを表示してもらえたら便利です。エレベーターが満員で車いすが乗れない時は、エレベーターに入った人が降りてくれ、譲ってもらえると助かります。

私が自分からお願いすることもできますが、毎回毎回お願いすると疲れてしまい、時にはやりたいことを諦めてしまうことも。まわりから「〇〇しましょうか?」と声を掛けてもらい、対応策を一緒に考えてもらえるとうれしいです。
 

(次回は26日に掲載します)

伊是名夏子

 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2018 年5月29日 琉球新報掲載)