ココロ、オドル 洗骨 両監督に聞く
現在公開中の映画「ココロ、オドル 満月荘がつなげる3つのストーリー」の岸本司監督と5週連続で県内1位の動員数となっている映画「洗骨」の照屋年之監督から、お互いの作品の印象や沖縄で映画をつくる意味について話を聞いた。
(聞き手 金城実倫)
―お互いの印象は。
照屋年之監督 岸本さんは「映画バカ」だと思う(笑)。短編「born、bone、墓音。」の撮影時に、自費で粟国島に来て、ボランティアスタッフとして参加してくれた。映画をつくることが好きな方だと感じた。
岸本司監督 あの時はゴリさん(照屋)の撮影の様子を見たくて、現場へ行った。ゴリさんはとにかく撮影が速い。とてもびっくりする。
照屋 元々演者なので現場がストップすると気持ちが途切れてしまう。だから撮影時には事前にいろんなパターンを準備している。
―お互いの作品についての印象は。
照屋 「ココロ、オドル―」は座間味島の自然をふんだんに使って、美しく描いている。物語にも人の温かみを感じさせる。
岸本 「洗骨」では家族が一生懸命によりを戻そうとする場面を、引いた目線で映し出している。人の不幸を端で笑うような演出には感銘を受けた。
照屋 笑わせようとする面白さよりも、一生懸命やっているのに、なぜか滑稽に見えるのが自分は面白い。例えばお葬式でお焼香を上げるために正座をしすぎて転んでしまい、お坊さんの頭をつかんでしまうなど、そのような場面を、自分の映画では取り入れている。
―2人は「沖縄を変えた男」(2016年)で監督と主演の間柄だった。
岸本 沖縄の英雄である栽(弘義)監督を、映像で批判したかった。高校球児に暴力を振りかざしながら甲子園へと導く栽監督の役はゴリさんが適役だと感じた。
照屋 主役を演じて、岸本さんは映画が好きすぎると思った。多くの映画作品を見ているから、自分の好きなシーンやあこがれのカットをすぐ自分に取り入れていると感じたし、撮り方も自分ではまねできないようなつくりだった。
―沖縄で映画を撮る意味とは。
照屋 人のおかしさや悲しさ、苦しさを表現できればどこでもいいが、沖縄はその題材が多すぎる。いろんな物語や歴史、珍しい風習が描ききれないくらいある。だから撮る。
岸本 沖縄は映画づくりの宝庫だと思う。多種多彩な形の文化や自然が残っていて、作品をつくるごとに沖縄の魅力に取りつかれる。
―最後にお互いの作品の見どころを。
岸本 「洗骨」は沖縄の伝統的な風習をほぼありのままに伝えている。そして人の生と死を真正面から描き、その間にある人間模様や家族の生き方を忠実に捉えている。劇場で見てほしい。
照屋 「ココロ、オドル―」は登場人物すべてが人生に不満や不幸、悲しさを抱えているが、最終的には自分の力でなんとかして明日へと向かっていく。とても勇気づけられる映画だ。
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「ココロ、オドル 満月荘がつなげる3つのストーリー」は桜坂劇場で、「洗骨」はスターシアターズ系で公開している。(2019年3月28日現在)。