食べて、飲んで、つながって。楽しみながら、誰かの役に立ちたい。
沖縄少年院の元法務教官で「日本こどもみらい支援機構」代表の武藤杜夫さんが、友人らと6年前にスタートした月1回のチャリティーイベント「かふぇ で ゆいまーる」の積立金が2020年2月、300万円を突破。4月にもミャンマーで小学校建設に着手する予定だ。
那覇市内で2月9日夜に開かれた6周年記念パーティーで、寄付先である認定NPO法人アジアチャイルドサポート(池間哲郎代表理事)が報告した。
「沖縄のゆいまーる精神をアジアに届けたい」
「教育の種をまき、貧困の連鎖を断ちたい」
アジアチャイルドサポートの活動に感銘を受けた武藤さんが、仲間たちと続けてきた取り組みが、実を結ぼうとしている。
〝チャリティー模合〟無理せず楽しく
「かふぇ で ゆいまーる」は2014年2月、武藤さんが友人らと立ち上げ、続けてきた活動だ。食事と飲み物は参加者が各自で持ち寄り、会費千円を全額寄付に充てる〝チャリティー模合〟ともいえる仕組み。「誰かの役に立ちたい」という人が楽しみながら無理なく参加できるよう編み出したスタイルだ。
開催場所の確保に困ったことも度々あったというが、近年は賛同者の久手堅大悟さんが、経営する那覇市樋川の「DOCGおきなわダイニング」を無償提供している。
2017年に法務教官を辞し「日本こどもみらい支援機構」を立ち上げ、沖縄を拠点に、生きづらさを抱えた少年少女からの相談や就業支援、一時保護などを続けている武藤さん。その活動を応援する人々が集い、新たなつながりも生まれている。長野県でも支援者の一人が「かふぇ で ゆいまーる」を開催。沖縄・長野両県でこれまで計102回が開かれ、延べ2500人余が参加したという。
学びの場、災害時の避難場所にも
「かふぇ で ゆいまーる」からの寄付を活用し、ミャンマーで学校建設を進めるアジアチャイルドサポートによると、建設予定地はシャン州カロータウンシップワーピョン村。今も小学校はあるが竹製の校舎で雨天時には授業が困難だという。
新施設は子どもたちの学びを支えるのはもちろん、災害時の避難場所としても使えるようレンガやコンクリートで建設予定だという。総工費は約500万円。アジアチャイルドサポートに寄せられた寄付金も充てる。21年6月を完成目標としている。
アジアチャイルドサポート次長の宮城哲也さんは「6年間の継続は簡単なことではない。皆さんの思いをミャンマーの先生や子どもたちに伝えたい」と感謝を込めた。
参加者同士もつながる場に
「かふぇ で ゆいまーる」の立ち上げ人の一人でもある久手堅美咲姫さんは「多くの人の支えで続けられた。出会う人同士もつながり、色んなゆいまーるが生まれた」と笑顔で話した。
武藤さんは「沖縄もこれまで色んな国や人に支えられてきた。沖縄の子どもたちを取り巻く環境も大変だが、もっと困難な地域もある。沖縄の子もアジアの子もどちらも大切。視野を広く持ちたい」と話す。目標だった学校建設の目途が立ち、一つの節目を迎えた「かふぇ で ゆいまーる」は今後、3カ月に1度の開催となるという。「志を持つ人が出会い、人と人がつながる場所が『かふぇ で ゆいまーる』。これからも肩肘を張らず楽しく人とつながりながら、誰かの役に立つ取り組みを続けたい」と武藤さんは楽しげに語った。
(佐藤ひろこ)
◆「かふぇでゆいま~る」のフェイスブックはこちら → https://m.facebook.com/cafedeyuimaru.jp/
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