人望厚く、公民館テイストあふれる芸人<ピーチキャッスル 真栄城将さん>◇沖縄芸人ナビFILE.25


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北谷町出身の「ピーチキャッスル・真栄城将(まえしろ・しょう)さんは、青年会の会長としてエイサー隊をまとめた経験があり、釣り・音楽・ダンスなどの活動歴もある多芸多才な人。同じ事務所に所属し交流も深い「初恋クロマニヨン・松田正(まつだ・しょう)」さんが、人物像を引き出しました。

(執筆:フリーライター・饒波貴子)

※この取材は7月8日に行いました。

「沖縄芸人ナビ」は「週刊レキオ」(毎週木曜発行)と連動中。毎月第2週のレキオに関連記事を掲載していますのでご覧ください。

イベントやお笑いライブで進行役の機会が多い、真栄城将さん(左)。しっかり者の印象がありますが、素顔は明るくてひたすらひょうきんとのこと。ナビ芸人の松田正さんは、もっと素の姿を出してほしいとリクエストしていました。(2人ともよしもとエンタテインメント沖縄所属 / http://yoshimoto-entertainment-okinawa.jp/

エイサーの名門「謝苅青年会」元会長

松田ナビ:真栄城とは真剣な話をしたことない気がする。「全裸になって」というようなお願いばかり(笑)。

真栄城:記事になるのに、こんな始まりで大丈夫ですか(笑)!?

松田ナビ:僕は読谷、真栄城は北谷でお互い中部出身。地元が近いこともあり仲良くさせてもらっていますが、僕から見るとエリート! だってエイサー界の名門中の名門、謝苅青年会の元会長だから。「そんな人がお笑いやってるば〜」っていうのが最初の印象です(笑)。謝苅青年会はどうやって会長を選んでいますか?

真栄城:高校一年生になったら青年会に入ってエイサーを始め、手踊りから小太鼓に昇格。そして大太鼓に昇格する段階があって、そのメンバー間で「今年は会長、誰がやる?」ってなすりつけ合います(笑)。

松田ナビ:みんなが憧れるポジションじゃないってこと!?

真栄城:めっちゃしんどいですから、憧れではないですね。後輩をまとめなきゃならないので、みんなと気軽に接している人が選ばれます。

松田ナビ:人当たりの良い人が会長になるんだな。今も青年会を手伝うことはある?

真栄城:手伝っています。エイサーの時はサナジ(チョンダラー)やったり。同級生は大体が交通整理係ですけどね。

エイサーの時期は謝苅青年会に顔を出し、今でもチョンダラーを演じる

松田ナビ:誘導灯持ってね(笑)。僕の地元の友達も熱心にエイサーをやっているし、真栄城とは環境が似ていて年齢も近い。高校時代に聞いていた音楽も一緒で親近感あるし(笑)、謝苅青年会の会長と知った時は憧れの眼差しで見ていた。有名な「謝苅対栄口のオーラセー」を仕切っていた会長がお笑いをやるのはうれしいし、話が合うかもと思ったよ。実際話すと釣りをやると聞いて、それも共通点だと思った。僕の友達もめちゃくちゃ釣りやるから、地元の仲間としゃべる感覚になるんだよね。

真栄城:僕のこと、ハードル上げてそんな感覚で見ていたんですか(笑)。松田さんは社交的なタイプとは言えず楽屋でもあまりしゃべらないけれど、僕らピーチキャッスルがそばを通ったら必ずわちゃく(いたずら)してくる。

松田ナビ:真栄城がいたら何かしゃべろう、っていうのが僕の中のルール。

真栄城:なんですか、そのルール(笑)。ネタ合わせの途中でも話しかけてくるから、集中してほしいですけどね。

松田ナビ:しゃべりやすくて絶対リアクションを返してくれるから、ルールは変えません(笑)。

お笑いより釣り人として有名!?

松田ナビ:YouTubeに釣りの動画をあげていますね。

真栄城:「南国ジキシーズ」という名前でYouTubeチャンネルをやっています。僕たちピーチキャッスルとカシスオレンジの仲本新(なかもと・あらた)が釣り好きで、動画を作ってみようという流れで始めました。登録者数は約2500人で、海や磯場に行ったらよく声をかけられますよ。芸人とは気付かれないけど(笑)。

松田ナビ:沖縄は年配の方から学生まで、釣り人口がいっぱいいます。

真栄城:釣り系のYouTube見る人多いですね。釣れなくてもドキドキ感や風景を見てくれるのか、見てもらいやすいジャンルなのでしょうね。「南国ジキシーズ」はピーチキャッスル、天地コンソメトルネードの与儀朴華(よぎ・なおはる)、島袋忍(しまぶくろ・しのぶ)が主要メンバーです。カシスオレンジの仲本は編集作業などのプレッシャーに耐えられず、フェードアウトしてサブメンバーになりました(笑)。

松田ナビ:そうだったんだ(笑)。確かにずっとスマホで動画をいじっている時期があったもんね。もう1年くらいやっている?

真栄城:1年半くらい。やり始めは毎日動画をアップしようと頑張りましたが、予想より大分キツくて・・・(笑)。お笑いやりながらバイトもやって、撮影して編集もと続けていたら寝る時間がなくて。メンバー崩壊状態になってきたので、行きたい時に釣りに行こうとゆとりを持つようになりました(笑)。

釣り好きが高じて開設した、YouTubeチャンネル「南国ジキシーズ」が好評

南国ジキシーズ YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCv9Uva-SZtMmZt44kNqmCbw/featured

松田ナビ:真栄城は男の子がやる事を一通りやってきている気がする。小さなころから遊びでやっていた釣りを今も生かしていて、バイクもダンスもパチンコもやって、青年会会長でエイサーやって、家庭を持つパパの一面もあり・・・でもあまりアピールはしないタイプ。

真栄城:エイサーやっているって、アピールしますか!?(笑) 子どもは2人いて、求められたらパパの顔を出しますが、家庭的な面とお笑いを分けたい方かも。そんなにパパしていない現実もありますし・・・(笑)。

松田ナビ:良いパパじゃないって事!? まだモテたい気持ちがあるんだな(笑)。そういえば一度見かけた真栄城のお父さん、ロン毛で髪縛っていて個性的だと思いました。上半身裸だったかな?

真栄城:時と場合によりますが、裸の時もあります(笑)。オトーもずっとエイサーをやっていましたし、面白い人だと思いますよ。ダンスもやっていたらしいので、オトーの生き方を僕がなぞっている感じです。

松田ナビ:北谷地域でエンタメを担ってきた真栄城一族! お父さんも仲間内を笑わせるようなタイプなのかな!? 真栄城はひょうきん者だから、もっと表に出してほしいと個人的には思っている。キチンとした感じに見えますが、とにかくひょうきん。いろんな事が出来るんだけど、その良さを発信していない気がする。そこが出来たら、めっちゃ人気者になるはず!

真栄城:発信方法が分かっていないんでしょうね。楽屋のノリやお酒を飲んでいる雰囲気が大好きなので、そういう本来の自分に近い姿を素直に出せたら良いなとは思っています。

松田ナビ:本来の真栄城将をいろんな人に見てほしい。お笑いは子どもの時からやるタイプでしたか?

真栄城:小学校のころいじめっ子がいて「歯を食いしばって踏ん張らないと、コイツにずっと突つかれてしまう」と思う時期がありました。「男なら踏ん張るぞ」と言い聞かせ、全校生徒で体操する時めちゃくちゃ踊りまくったんです。なぜ踊ったのか自分でも分からないんですけど、クラスメートには「コイツなんだ?」と思わせ、いじめっ子には「いじめたらヤバい」と思わせる作戦に出て、プチスターになりました(笑)。

松田ナビ:初めて脚光を浴びた瞬間・・・今思えば、笑いをとる快感に目覚めた瞬間だったのかな。

真栄城:そう思います。僕はナインティナインの岡村隆史さんが大好き。岡村さんが髪の毛全部剃って前髪をちょっと残しているころ、その髪型をまねて登校していました。オトーにバリカンで切ってもらったら「良いね」と褒めてくれました(笑)。派手なタイプではないですが、人気はあった方かも!? 内心は恥かさ〜(恥ずかしがり屋)で、ビビや〜(小心者)ですけどね。

松田ナビ:真栄城がお笑い始めたきっかけは・・・確か『めちゃ×2イケてるッ!』のオーディションじゃなかった? 

真栄城:22〜23歳で役場の臨時職員だった時、江頭2:50さんの「めちゃイケの新メンバーオーディションやるぞ〜!」って告知を見て、テレビの前で震えながら「参加する」って思わずオトーに言い、「行って来い」と後押ししてもらいました。オカーは「何言ってんの?」って感じでしたけど(笑)。でもエイサーをやっていたので夏開催の東京会場は諦め、仙台会場に行ったんです。

松田ナビ:仙台まで行ったとは! お父さんは自分もファンキーだから応援してくれたんだ(笑)。

真栄城:短パン半袖姿で仙台に行きましたが、夏の終わりででーじ寒かった。会場に入った瞬間に大好きなめちゃイケメンバーがいたんですよ。30秒くらいの自己紹介タイムをいただいたんですけど舞い上がってしまい、ボケられずに単に自己紹介で終わりました。

松田ナビ:若くて策略が弱すぎ(笑)。今だったらエイサーの格好で行こうとか考えられそう。相当なお金をかけて仙台に行って、自己紹介している場合じゃない(笑)!

真栄城:お笑いが全くできませんでした(笑)。そんな経験をして、相方の桃原優樹(とうばる・ゆうき)に「お前は、吉本に行った方がいいんじゃない?」と言われ、沖縄によしもとの養成所ができる事を知り入所したんです。

幼稚園のころに出会った仲良しコンビ、ピーチキャッスル

松田ナビ:気持ちとタイミングが一致! 幼稚園からの同級生・桃原とコンビを組んだのは、養成所に入ってから?

真栄城:そうです。桃原は別の友達と2人で入る予定で、僕も別の同級生と入るつもりでした。でもそいつは入学金の工面で苦労してドタキャン。桃原の友達もなんとドタキャンしていて、面接会場で「せっかくだから一緒に組んでみようか」って事になりました。そういえば松田さんとは一緒の面接でしたよ。キャリーバックを引きずりながらギリギリに会場に入ってきて、その後相方2人も来て「なんだ、このバタバタした3人組は!?」と思いましたよ(笑)。

松田ナビ:もう10年前だから、覚えていない(笑)。そんな過去もあり振り返ってみると、いろいろとコミュニケーションを取ってきましたね。

真栄城:事務所内で松田さんとしっかりコミュニケーションを取っているの、僕くらいじゃないですか(笑)!? 松田さんの相方、新本さんと憲吾さんに「松田と真剣な話し合いの場を持つ時は、お前を通すかも」って言われましたよ(笑)。

相方と遊び、仲良く楽しく芸人活動

松田ナビ:真栄城が怒っているのを見たことないけれど、相方と衝突しないように意識している? ネタ合わせの時は空気が良いとはいえないし、煮詰まったりしたら相方に当たりたくなってしまう時もあると思う。桃原は結構はっきり物を言うタイプだし、真栄城が一歩引いたりしているのかな?

真栄城:イラつく事は多少ありますよ。でも面白い事を考える時にイライラしたら進まない、って思います。だから桃原がやってみたいボケは、試すようにしています。グチャグチャになったらやりながら直していこうって気持ち。桃原からは提案が多くなってきていると感じます。違うなと感じた時は、「そのボケ、お前らしくないんじゃない?」という風に伝えています。

松田ナビ:勉強になります。相談するような雰囲気にして真栄城が応えているんだ。僕は性格が悪いから相手を怒らせようとする(笑)。真栄城は言い方が優しいから魅力を感じるし、僕から言えば天使のような存在(笑)。その方がお笑いに向いているのではと思う。

真栄城:お笑いを難しく考えられないので、感覚でやっているのが大きいのかも。考えるタイプの桃原とは真逆、というコンビ関係もあるかもしれません。

よしもと沖縄の芸人で結成したラップ集団「Gラッパーズ」でも活躍

松田ナビ:「ストイックにお笑いやっています」みたいな、芸人のアスリート化がたまにある。数年前は、そういう雰囲気に酔いしれそうになっている自分がいた。でも見ている人に「この人アホだな。自分の方がマシ」と思わせるのがお笑いじゃないか、と最近思うんだよね。カッコつけず「こんなヤツがいるんだから自分も頑張って生きていこう」と思ってもらえるようになりたいです。それでいうと真栄城は参考モデルの1つ。

真栄城:褒められているのか、逆なのか分からなくなってきた(笑)。

松田ナビ:最大級の賛辞のつもり(笑)。いるだけでその場が明るくなるような人が良いよね。残念ながら僕は明るさを持ち合わせていないし、練習や努力でどうにかなることではないから真栄城はいいなと思う。自分のチャームポイントを考えるとそこじゃない?

真栄城:元気でしゃべりやすくて・・・そんな感じでしょうね。知らない人から話しかけられることも多い。例えば朝パチンコ屋さんで並んでいる時、人がたくさんいるのにおじさんがわざわざ僕のところに来て、「ニーニー(お兄さん)、今日何番台が出ると思う?」とか、世間話をされる。

松田ナビ:話しかけられやすい人っているんだよな。

真栄城:よく声をかけられるので不思議です。隣の席のオバーに「にーさん、ちょっと変わりに押しててちょうだい」と頼まれて、5時間くらい手伝った(笑)。桃原はそんな事一回もないらしいです。

松田ナビ:パチンコの話ばかり(笑)。性格は顔に出るっていうし、警戒心を感じない話しやすい雰囲気なんだよ。そしてノリですぐ服を脱ぐ(笑)。

真栄城:あんたが脱げって言うからでしょう(笑)! 中部出身の人間らしさと謝苅公民館のノリですかね(笑)。

松田ナビ:そうだ公民館! 僕が真栄城から感じていたのは公民館の雰囲気だ。夜フラッと公民館をのぞいたら、畳間に座って紙コップでお酒を飲んでいそう。そんな「公民館のにーちゃん」っていう感じをもっと出してほしい。さらなるパワーアップに期待しています。何かポリシーはありますか?

真栄城:当たり前ですが楽しくやる事。そうじゃなきゃお笑いは続けていけないと思っています。あと、コンビ同士のコミュニケーションもしっかり取りたい。地元の友達であり相方でもある桃原は、ビジネスパートナーであり遊び仲間。全部ひっくるめて今後も付き合っていきたいです。そして地元のエイサーは毎年打ち上げには参加して、ほぼ脱いでいますから期待通りですね(笑)。

松田ナビ:真栄城のしかめっ面は見た事ないし、盛り上げ役でいつも楽しくやっている。コンビ仲も良くて、その楽しさが観客や視聴者に伝わると思います。遊びを仕事に引き上げられる人は素晴らしいと思うし、この世の中で生き残っていくだろうと個人的に感じます。

真栄城:相方の桃原とは2人で釣りに行ったりします。抵抗あるコンビもいるでしょうが、僕らは全くありません。でも初恋クロマニヨンさんも仲良く見えますよ。

松田ナビ:仲が悪いとは思わないけれど、ピーチキャッスル程ではないからうらやましい。仲の良さは狙って作るものではなく生まれ持ったものだと思うよ。自分の短所だと思う点は?

真栄城:意外にタンチャー(短気)で、ちょっとムッとしたらスパッと終わらせる。ネタ合わせで煮詰まったら「眠い、帰ろう!」みたいな感じです。もう出てこないから朝早くやろうとか、風呂入ってリラックスした時に出てくるかもしれないって思います。

松田ナビ:それはいい。せっかちな面があるかもしれないけれど、潔く言われたら腹立たないかもな。では長所は?

真栄城:能天気なところでしょうね。家庭がありながらお笑いやってますし(笑)。そして連絡事項など一つ一つキチンと確認するので、マメな方かもしれません。

松田ナビ:お笑いやる上で大事かも。返信が遅い相方だと腹が立つし、しっかりしていた方がいいですね。今回僕は能天気で公民館テイストのある真栄城が大好き、と実感できました。最後に展望をお願いします。

真栄城:もう一段階上がって一皮も二皮もむけた先に、ピーチキャッスルらしいお笑いができると思っています。今それが見えかけているような気がするのでその方向を見て、楽しむ気持ちを忘れずに進んで行きます!

【対談を終えて・・・】

☆真栄城☆
松田さんとこういった形で話をするのは初めてで、とても楽しかったです。でもいつもと違って、一回も目が合わなかった(笑)! それも含め、普段話さないことも話題にできた良い時間でした。

☆松田ナビ☆
能天気というワードが出ましたけど、それがいい形で出ている人。「芸人さんはこうあるべきだろう」・・・真栄城を見ていたらそんな風に思えます。

【プロフィール】

★真栄城 将(まえしろ・しょう)/ ピーチキャッスル
生年月日:1986年5月17日
出身地:北谷町
趣味・特技:釣り、エイサー、ダンス、パチンコ 
Twitter:@peachsyo

★松田 正(まつだ しょう)/ 初恋クロマニヨン
生年月日:1984年8月22日
出身地:読谷村
趣味:ソフトボール/漫画
特技:野球
Twitter:@hatsukoimatsuda

 


 

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饒波貴子(のは・たかこ)
那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。