子どものころ「吉本新喜劇」が大好きだったという、女性コンビ「ハイビスカスパーティー」のちあきさん。大人になって芸人活動を始め、コントや漫才を披露する他「おきなわ新喜劇」にも出演するなど活躍を続けています。特技である英語は独学で習得したそうですが、現在は手話で喜劇を演じる「劇団アラマンダ」にも所属し「新しい言語を学んでいる楽しさがある」と実感。「ウケてもらえた時は漫才でもコントでも手話でもうれしいです。でも手話でウケた時は、より心を動かされます」と語ります。表情豊かにいろんな衣装を着て全力投球でお笑いに臨むちあきさんの魅力に、ナビゲーターの「初恋クロマニヨン・松田正(まつだ・しょう)」さんが迫りました。
(執筆:フリーライター・饒波貴子)
ちあきさん、ナビ芸人の松田正さん(どちらもよしもとエンタテインメント沖縄所属/http://yoshimoto-entertainment-okinawa.jp/)。沖縄のお笑い界は女芸人さんが少なく「女性同士で切磋琢磨できるくらい増えてほしい。女芸人だけのライブを開催したいです」とちあきさんは願っています。
勢いで国際結婚!? 楽しく働いて出会った運命の人
松田ナビ:「お笑いをやろう」と決めたきっかけから教えてください。
ちあき:子どものころ「吉本新喜劇」をテレビで見てメンバーになりたいと思っていましたが、特に芸人を目指すこともなく社会人になりました。でもある日思い立ち、よしもとの養成所・NSC沖縄校に入ったんです。
松田ナビ:既婚者のちあきのダンナさんはトルコ人。どんな風に出会いましたか?
ちあき:英語がしゃべれないまま米軍基地の店で働かないといけない状況になり、英語を勉強しなければと思った時期があったんです。その時に向かい側のじゅうたん屋の店員に話し掛けたのですが、その人がトルコ人でダンナになりました。
松田ナビ:ダンナさんがお笑いライブを見に来ることはある?
ちあき:結婚して10年、お笑いを始めて8年。前にイベント会場に来たことはありましたが、最近初めて劇場で見てくれました。ダンナは日本語が話せませんが、表情や雰囲気で楽しみ「良かった」と言い、アンケートに感想も書いていました。
松田ナビ:周りのお客さんの笑い声が伝わったりして、ダンナさんも面白い気持ちになったんだろうね。お笑いを始める前は何をしていましたか?
ちあき:よしもとの養成所に入ったのが27歳のころ。それまではコールセンター、テーマパーク、季節労働他、いろいろなところで働きました。楽しく働きたい気持ちがあったのと飽き性な性格で、コロコロ変えていたんです。海外に行きたい気持ちもありました。テーマパークで働いている際に出入りしている業者さんの中に海外で買い付けをしている方がいて、声を掛けられ内職を手伝うことに。「この人の近くにいたら海外に行けるかも!?」と何となく思ったんです。そしたら「パスポートを作るなら出張に連れて行くよ」と言われ、ギリギリ間に合って香港へ。それからしばらく、その人の鞄持ちをしていました。
松田ナビ:本当にそんな仕事があるんだ(笑)! 秘書という肩書きで鞄を持つ業務があるのでは!?
ちあき:鞄持ちが仕事です(笑)。鞄を持ち、社長が絶対に靴ずれするので絆創膏を貼って給料をもらっていました。社長は日本人で1人で仕事をしていたので、私が唯一の従業員。沖縄を拠点に台湾や韓国にも行き、2年くらい続けました。働く条件は「結婚しないこと」でした。
松田ナビ:社長の女ってこと(笑)!?
ちあき:よく言われますが、朝出勤して炊き込みごはんを作り鞄持ちしていました(笑)。
松田ナビ:どんな仕事(笑)!? 身の回りのお世話をするマネージャーのような存在だね。
ちあき:はい。それがきっかけで「基地の中に出店するのでお前が見てくれ」と社長に言われたんです。そこで勤務したことでダンナと出会って結婚したので、しっかりクビになっちゃいました(笑)。
笑いのためなら制限なし!? 不器用なので日々挑戦
松田ナビ:お笑いはどんな風に始めましたか?
ちあき:よしもとの養成所・NSC沖縄校が開校されると知りましたが、すぐには入りませんでした。でも結婚して3年目くらいに、ふつふつとした気持ちが込み上げてきたんです。やりたいことに挑戦していない私が母親になった時、子どもの夢を全力で応援できるんだろうかと疑問を感じました。なので自分のやりたいことやろうと決め、NSC沖縄校に入ったんです。ダンナもOKでしたよ。
松田ナビ:未来の子どものことまで考えてお笑いの道へ。ダンナさんには「コメディアンになる」と説明したの? 普段のお前はそんなやつじゃない、と反対されなかった?
ちあき:コメディースクールに通いたいと伝えました。外国の人だからなのか、やってみればいいという感じでしたよ。でも学生時代は人前に出るのが嫌で、学芸会ではせりふがある役は演じたことがなく、リコーダー隊の端にいました。緊張でえずくような子だったので、お笑いの世界を目指す行動に時間がかかったと思います。
松田ナビ:ハイビスカスパーティーというコンビで見ると、相方のゆかが緊張しそうで、ちあきは物おじしないイメージです。
ちあき:逆ですね。最初のころから今も、緊張していないように見せています。入所したのが27歳で今年37歳になりますから、年齢からも落ち着いて見えるかもしれませんね。
松田ナビ:肝がすわっていてとにかく面白いことをやりたい、というのが僕から見たちあきのイメージ。NGにしていることはありますか?
ちあき:限界までいくのが基本です。笑いが取れるならスッポンポンになりたいくらい(笑)。NGを挙げるとしたら昔のことを言われることですかね。物静かだったのでそこに触れられたら嫌だな~と思ってしまうかもです。
松田ナビ:体を張る系もセクシー系も、何でもやっているもんね。例えば同級生が来て、「コイツおとなしくて静かでしたよ」と言われるのは嫌なんだ。
ちあき:そうですね、思い出のアルバムとかを出されたらやっぱり嫌かも。でも基本的には何でもやりたいし、何でも大丈夫だと思っています。
松田ナビ:器用なちあきは物まねにギャグ、いろんなことをやっています。自己分析ではどんな芸人さんですか?
ちあき:逆に不器用だと思っています。常に自信がないからとにかくやってみて、反省してまたやっての繰り返し。ネタに関しては相方のゆかが作ってくれるので大丈夫ですが、ネタ以外のトークなどはあの時こう言えば良かったとめっちゃ引きずります。自分をなかなか客観視できないと反省しています。
松田ナビ:舞台でスベったら家まで持ち越す!? 持ち越した時に暗くなる雰囲気やスベった感覚、ダンナさんは理解できるんだろうか。
ちあき:分からないと思うので、あまり表に出さないようにしています。持ち越していたら車の中でワーッて感情を出して、それから家に入ります。
松田ナビ:なるほど~。舞台に出たりテレビ番組でロケをしたり、活動はいろいろありますが何をしている時が楽しいですか?
ちあき:いろんな人に会って話をするロケが楽しいです。こうした方がいいよとダメ出しもらうのも、言ってくれる人がいるとうれしくなります。
松田ナビ:ダメ出しされると、僕は「うるさい!」と思ってしまいそう(笑)。
ちあき:自分のお笑いをしっかり持っている松田さんは、ストイックボーイですからね。私はお笑いが分からないまま始めたので、こんな方法があるんだとやりながら学んでいます。
目標は、英語で漫才やMCができるコンビ
松田ナビ:結成8年のハイビスカスパーティー。どういう関係のコンビですか?
ちあき:仲は悪くありません。でも初恋クロマニヨンさんのように、ぶつかり合うほどの熱い友情があるとは言えません(笑)。
松田ナビ:いや、僕たちトリオ間に熱い友情はないよ(笑)。けんかするタイプのコンビは周りにいるけれど、ハイビスカスパーティーの険悪な状況は見たことがない。
ちあき:ゆかは穏やかな性格ですし、お笑いの好みをお互い押し付けることなどはしません。ネタ合わせしているのか、けんかなのか分からないコンビがいますよね。それくらいぶつかった方がいい物ができるのかなと思ったりもしますが(笑)。
松田ナビ:ちあきは穏やかな方!? 怒ったりする?
ちあき:そんなに怒りません。日常でイライラすることはあっても、ネタのことなどでゆかに怒ることはありません。
松田ナビ:吉本新喜劇が好きで入ったと聞くと納得します。コメディエンヌ感があるというか、普段から演じている感じがあるよね。
ちあき:そんなつもりはないんですけど、何か演じている感じが出ているのかもしれませんね。でも1人では何もできないので、ゆかには感謝しています。タイプは違いますが、彼女がいなければ辞めていたと思うんです。
松田ナビ:お笑いを始めた時の感想は? 思っていたのと違ったりした?
ちあき:NSC沖縄校は100人入れると聞いていて、端っこにいれば何とか卒業できるかもしれない。100人いたら何かできるかもしれない、という気持ちでした。でも実際は10人くらいしかいなくて、隠れる場所がない、どうしようと戸惑いましたよ。他は男子だったこともあり、事務所から先輩のゆかと組むのはどうかという勧めがあったんです。お試しでコンビを組んで今に至ります。
松田ナビ:別れ話を聞いたことはないけれど、正式に付き合いましょうということもなく、「私たちってどんな関係!?」が続いている。
ちあき:そうですね、「これだけ一緒にいるから、そういうことなんだよね~」という状況(笑)。
松田ナビ:男メンバーとコンビになろうとは思わなかった!?
ちあき:内川サンライズと組みたいと最初は思っていました。今はおとなしくなりましたが、当時の彼は大回しする中心人物だったんですよ。でも内川は他の人とコンビになり、その他のみんなもコンビを組んでいたので、私にはピン芸人になる選択肢だけが残されました。
松田ナビ:ゆかと始めてどうでしたか?
ちあき:彼女が先輩ということもあり、早くから仕事をいただいていました。そのおかげで、活動当初からいろんな経験をさせてもらっています。
松田ナビ:ひそかに取り組んでいることはありますか?
ちあき:英語でMCができたらいいなと思い、スキルをもう少し上げたいです。ダンナとの会話は英語がメインで、日本語とトルコ語がちょこちょこ入る程度だったんですよ。でもダンナが日本語の勉強を始めたので、今は主に日本語で話し英語とトルコ語が少々。そんな感じで私の英語は中途半端なので、語学留学を考えていたんですよ。数カ月行くつもりでしたが、コロナ禍で行けなくなりました。でも「英語で漫才したいね」とゆかと話していて頑張りたいです。あとは、普通に主婦していますよ。
松田ナビ:え~っっ! 家事をしているってこと? 家庭の匂いはしないけど。
ちあき:そうですね、家庭の匂いはあまり出していません。他は手話で演じる「劇団アラマンダ」の活動、「よしもと住みます芸人」として沖縄の情報を発信しています。
松田ナビ:タクシードライバーもやっていなかった? きっかけは!?
ちあき:浦添市が「うらちゃんmini」というコミュニティーバスを運行していたんですが、運転手不足で走らせることができなくなったんです。浦添市全力応援芸人を担当している私は二種免許を取って協力しよう、と思いました。それで「うらちゃんmini」の運行に関わっているタクシー会社で研修を受け、二種免許を取った後にタクシーを運転してみようということになったんです。午前の時間帯に、おじいちゃんおばあちゃんの病院送迎などをしていました。
松田ナビ:タクシー内で会話はしていましたか?
ちあき:女性運転手ということもあって、おばあちゃんたちは「頑張って!」とよく声を掛けてくれました。コミュニティーバスは一回だけ運転しましたが、お客さん同士が知り合いで「最近あの人見ないね~」、「今日は買い物の日なんですね~」など家族のような会話が飛び交っていましたよ。
松田ナビ:今後ちあきがコミュニティーバスの運転手をする可能性があるかもしれない。いろんなことをやりたいですか?
ちあき:そうですね。地域の人と会話をしながらバスを運転するのは楽しいです。周りからはやりすぎじゃないと言われたりしますが(笑)、いろんな経験をしたい気持ちがあります。芸人がやっていいのか考える時もありますが、まずはやってみて学べることから学んでいきたいです。
松田ナビ:社長の鞄持ちは普通しないはずなので(笑)、元から好奇心が強い方だろうと思えました。普段意識をしているポリシーはありますか?
ちあき:直感に従うことですかね。いろいろな仕事があるとしたら、少しでもワクワクするかどうか。ワクワクしない時は引き受けないようにしています。少しでも興味を持てた場合はやろうという気持ちです。やらずに後悔するのが嫌なんです。
松田ナビ:ゆかとコンビを組んだのも直感だったんだろうね。このインタビューを受けたのも直感(笑)!?
ちあき:はい。松田さん、私に質問することないだろうと思いましたけどね。
松田ナビ:質問いっぱい考えてきた(笑)! 今、何をしている時が楽しいですか?
ちあき:仕事はもちろん楽しいし、今まではシュノーケリングとか海で泳いでいる時が一番楽しかったです。でも最近は趣味がなくて。
松田ナビ:ちあきはパーティーピーポー?
ちあき:違います! クラブに行くなど大人の遊びを覚えたのは、ちゃんと大人になってからですよ。でも25歳で結婚したので、遊びに出掛けていたのは独身のころ迄です。
松田ナビ:ダンナさんはテレビに出ているちあきを見たら、どんな風にリアクションするの?
ちあき:それが見ないんですよ。人伝てに聞いているみたいですが、反応は意外に薄いです(笑)。
松田ナビ:でもダンナさんとは仲良しで仕事は楽しく、順調そうでいいですね。今後の展望を教えてください。
ちあき:一緒に仕事をしたいと思ってもらえる人になりたいです。売れるとか売れないとかよりも、「ちあきと一緒に仕事ができて良かった」と言ってもらえるのがうれしいです。
松田ナビ:繊細なところもありますが、大胆なパフォーマンスも兼ね備えているちあきはすごいです。ますます頑張ってください!
【対談を終えて・・・】
☆ちあき☆
楽しかったです! もうちょっと何かできたり、いろいろお話できたりしたんじゃないかな~という気持ちもありますが、松田さんのかわいい一面を見ることができました(笑)。次は松田さんの裏の裏までのぞくために、生まれたころから今までのことを聞いてみたいです(笑)。
☆松田ナビ☆
大喜利もギャグもフレーズも、どれもストロングスタイルでやっている芸人さん、というのがちあきのイメージです。女性芸人というところで勝負しているのではなく、「ザ・芸人」。やっぱりそうだったと答え合わせができました。
【プロフィール】
★ちあき/ハイビスカスパーティー
生年月日:1986年9月25日
出身地:沖縄市
趣味・特技:シュノーケル、ボディボード、トルコ語、日常英会話ができる
Twitter:@hibiscus_chiaki
Instagram:@chiaki_hibiscus
★松田 正(まつだ・しょう)/ 初恋クロマニヨン
生年月日:1984年8月22日
出身地:読谷村
趣味:ソフトボール/漫画
特技:野球
Twitter:@hatsukoimatsuda
【インフォメーション】
◆ ちあきさんが劇団員の<手話で喜劇を演じる「劇団アラマンダ」>
最新情報はここをチェック!
Instagram https://www.instagram.com/gekidan_aramanda/
Twitter https://twitter.com/gekidanaramanda
◆Output LAUGH PROJECT VOL.5 -Output 11th ANNIVERSARY-
ケビンス × 初恋クロマニヨン × カシスオレンジ スリーマンライブ
日時:3月13日(月)19時開場/19時30分開演
会場:ライブハウス「OutPut」(那覇市牧志)
料金:前売り2500円/当日3000円(ドリンク代別)/配信料金1800円
出演:ケビンス / 初恋クロマニヨン / カシスオレンジ
司会:ナガハマヒロキ
※詳しくはライブハウス「OutPut」公式ホームページ(http://outputop.com)よりご覧ください。
饒波貴子(のは・たかこ)
那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。