夏本番、青い空から強烈な日差しが降り注ぐ。梅雨時にアーケード街をほろほろ(ぶらぶら)していた記者たちも、外へ飛び出した。
今回は浦添市、外国人住宅が立ち並ぶ「港川ステイツサイドタウン」をほろほろ。
おしゃれな異空間
高層住宅がひしめき合う浦添市港川の一角で、白い平屋建てが並ぶエリアが港川ステイツサイドタウンだ。1960年代から米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)に勤める米軍関係者が住んだが、その後は沖縄の人々が住むようになり、10年ほど前からカフェや雑貨店などが相次いで開店した。
まるで復帰前の沖縄にタイムスリップしたようなエリアは、平日でも買い物客でにぎわう。建物の間に伸びる通りには、アメリカの州の名前が付いている。
「カンザス・ストリート」の奥にあるカフェ「rat&sheep(ラット・アンド・シープ) 1 」に入ってみた。店主を務める写真家のタイラジュンさん(45)に、オススメ料理を作ってもらった。
しばらくするとカフェらしからぬ、うちなーならではの香りが。おいしそうなキーマカレーだが、においはほんのりとヤギ料理のよう。「そう、ピンザカレーです」。ヤギとブタの合いびき肉を使い、優しい味わい。カレーだけでなくピンザハンバーグも人気だ。
バスルームを活用
優しい風合いの衣服や手拭い、アクセサリーなどが並ぶ「藤井衣料店 2 」は、「ネバダ・ストリート」にある。
オーナーの「風土に合った商品を紹介したい」という思いから、並べられた服は沖縄の環境に適した涼しい素材の物も多い。
沖縄店店長の芝原冬子さん(38)の案内で店の奥へ行くと、試着室があった。鏡とすのこが置かれたタイル張りの部屋には、なぜか深いバスタブと洗面台がある。外国人住宅のバスルームをそのまま利用したのだそうだ。通常の試着室よりも広く、衣服の脱着も楽だ。「小さな子どもを連れたお母さんもゆったりと試着できるので、評判いいですよ」と芝原さん。
「フロリダ・ストリート」にあるショップ「American Wave(アメリカン・ウェーブ) 3 」には、オーナーのデービッド・クリストファー・タウさん(57)のセレクトでビンテージ感のある服や雑貨が並ぶ。
米国出身のタウさんは1999年に来沖、4年前に港川で店を開いた。「静かで優しい雰囲気の港川で、店を開けたのはラッキーだ」と語る。
彩り豊かなフルーツタルトが並ぶ「オハコルテ」港川店 4 は2009年開店、この街の老舗の一つだ。
季節限定のメニューも多く、国内外の買い物客が次々と入っていく。
庭のテラス席には住宅街の歴史を感じさせる大きな木が陰をつくり、涼しさを運んでいた。
デトックスも
通りを歩いていた石ひとみさん(30)=福岡県、サービス業=は沖縄旅行2回目で、前回に続いてこの街を訪れた。「こんな雰囲気の街は沖縄ならでは。おしゃれで、歩いているだけで楽しい」と話す。滞在時間がどんなに短くても旅程から外せないという。
カフェ「Iemanja(イマンジャ) 5 はヘルシーなおかゆのメニューが人気。「水分をたっぷり取ってデトックスしてほしい」と語る、プロジェクトマネジャーの玉城武蔵さん(31)。アパレルブランド「Wildstrawberry…(ワイルドストロベリー)」のデザイナーでもあり、店内で展示されているオリジナルの服は購入できる。店内は、オリジナルのアロマランプが優しい香りを広げていた。
カレー、タルト、おかゆを食べ、おなかがいっぱいで動けなくなった記者。しばらく休ませていただきながら、出会った方々が語った街への熱い思いを振り返り、胸もいっぱいになって街を後にしたのだった。
(2017年7月2日 琉球新報掲載)