大阪出身の「さや香」は、さわやかな見た目から想像がつかないほど、テンション高めの漫才を披露するお笑いコンビ。「M-1グランプリ2017」でファイナリストとして決勝戦に進出したことで、一躍脚光を浴びました。注目したい若手芸人として、今回たっぷり紹介します。
聞き手:饒波貴子(フリーライター)
客席がざわつくコンビ名
ーはじめまして! コンビ結成のきっかけから教えてください。
新山:NSC大阪校の同期で、卒業して約3年後にコンビを組みました。3年くらい経つと入れ替わりがあるんですよ、辞める人もいて。僕たちは在学中は別のコンビでしたが解散したんです。
石井:順調なコンビは続けていて、独り身があまりいないんですよ。でもお互い相方を探している時、僕はボケ役でしたが次はツッコミ役をやりたい。新山は逆のことを考えていて、その時期が重なって一緒にやろうってことになりました。
新山:コンビ名は侍の刀から。昔は刀を入れる「さや」が高級かどうかで、武士の位が分かったみたいです。そして「さや」の香りの強い弱いが武士同士は分かる、っていう意味から「さや香」と付けました。
石井:お前の初恋の人の名前や!
新山:…ってギャグにしてます(笑)。よく聞かれますが、僕の初恋の人の名前から付けたコンビ名です。でももっと言うたら初恋の人の名前でもなくて、イントネーション。「さや香」っていう響きが気に入り、何となく付けたんですよ。
石井:最初は全然違う名前にしようと言われていたんです。でも「コンビ名はさや香と書いて、書類出したから」って報告されて。ネタにするつもりで言っているのか分からなくて、何回も確認しました(笑)。
新山:「リンゴの唄」というコンビ名にするつもりだったんです。戦後一番の流行歌だし、2人とも椎名林檎さんが好きだから。でも同期の芸人と「もうちょっと考えた方がいいんちゃう」ってなって。
石井:むっちゃシュールなコントしそうだよな、「リンゴの唄」(笑)。「さや香」と呼ばれて出て行くと、客席がざわざわしますが覚えてもらいやすいと言われます。
新山:「男なんです~」って言ったらウケますし、いい名前と言われます!
ーお2人を知ったのが、「M-1グランプリ2017 決勝戦」でした。大きな賞レースのファイナリストになったことで、変化はありましたか?
石井:スケジュールを見返すと、2017年は10本もなかったテレビ出演が、18年は60本以上出てました。アルバイトを辞めてもいい感じにはなりましたね。
新山:テレビの本数と同じく、ギャラも6~7倍になったかな。いや、言い過ぎ…5倍くらい(笑)!? サラリーマンの同級生に追いついた感じで、やっと胸張れます! でもすっごい稼いでいる訳ではなく、やっと普通の人間。税金払って社会貢献できる大人になった感覚。フリーターから社会人になれました(笑)。たまたまM-1に出ただけで、他は大したことしていないんですけどね。
石井:やっと芸で食える、ほんまギリで生活できるようになったって話です。
ー若い女性ファンが多いコンビ、と勝手にイメージしています。
石井:そうですね。お客さんは学生さんや20代女性が多いです。去年は約300人収容の大阪「よしもと漫才劇場」で、2カ月に1回単独ライブをやっていました。「チケットあります」ってパネルを持って手売りしていましたが、M-1出演後は何もせんでもチケットがパッと売れるようになりました。そんな変わるんや〜ってビックリしましたよ。
新山:客席には男性ファンはいないですね~(笑)。なんでやろ!? 芸人仲間や裏方の男性は好いてくれてる人もいると思うんですけどね。
石井:僕たちを知らない人には、「爆発力ある新山を受け止めてください」とお願いしたいです。マイクの前に立つと新山は、爆発力があり印象に残りますよ。そんな風に見えなくて隠していますが、突然急に変わるので、そこを楽しんでもらったらという感じです。
新山:僕の意見が入った思想強めのネタが多いので、みなさんとディスカッションしたいんですよ。恋愛ネタが多いし好きな歌の歌詞をネタに入れたりして、「このメッセージええな~」みたいな感覚を持ってほしい。お客さんと新山がディスカッションしながら成長しているのを、石井が横で見守っている構図が、さや香の色が一番出るんちゃうかなって思います。
石井:僕はホンマに見てるだけ。見て思ったことをその場で言うてるだけなんです(笑)。
僕らの漫才見て、恋愛してください
ー力を入れている事を教えてください。
新山:去年はライブのために、毎月6本くらい新ネタを作っていたんです。多いと思うので、もうちょい減らして1本ずつを深くしていこうと思っています。力を入れているのはネタ作りですが、去年はテレビに呼んでいただいたりいろいろな経験をしました。それらを生かして広げていきたい気持ちもあるので、どうしようか考えている状態なんですよ。
石井:やっぱりネタが中心ですよ。個人としては学生時代にダンスをやっていたので、バックダンサーやエキストラの仕事も入り、よしもと芸人になってから昔よりダンスしてますし、確実に上手くなっています。学生の時は2年程ちょっとやっただけなので(笑)。
新山:石井は今芸人枠じゃなくて文化人枠で、マネージャーが多分違います(笑)。
石井:そっちの方ちゃうねん。お前と一緒や(笑)。この前はインドのダンスを特訓させられましたし、世界のダンスが踊れるようになりたいと思ってますよ。沖縄の踊りもいいですね! 体の動きをお笑いに活かすことも考えていますよ。
新山:僕の特技は恋愛相談。ネタも恋バナが多いです。人間を成長させるために恋愛はすごく有効だと思っていて、相手がどうやったら喜んでくれるかなど、人を思う行動で人間はすごく成長すると思うんです。だから推奨しているんですよ。
石井:お前に推奨されんでも、みんな恋愛するわ(笑)!
新山:僕らの漫才見て、「好きな人に告白してみようかな」とか思ってほしい。恋人ができてお笑いライブから遠のいても全然いいんです。今見に来てるお客さん全員が巣立つことを考えますし、恋人と時々デートで見に来てくれるのが理想。空席があっても構わない(笑)。けんかしてるカップルが漫才を見て、「ごめんな~」って帰り道で言えたらいいなって思ってますけどね。恋愛しないと人類はつながらないし、お笑い見に来る女の子は控えめなタイプが多いから、積極的になってほしいです。
石井:新山はホンマに、ツイッターとかでファンからの恋愛相談受けてますし、ラジオには深刻な悩みも来るようになり、大変ですよ。
新山:ラジオで恋愛相談のコーナーやってて「彼氏できました」、「進展しました」と実際に救われた声が届いてるんですよ。いつか本を出版したいです。
石井:すごくディープな相談も来るようになったけど、今まで何人の女性と付き合った?
新山:6人付き合いました。
石井:そんな多くないやん!? 僕もそれくらいなので年相応で普通じゃないですか。
新山:反論の余地ありです。数で決めるのは大間違いで、どれだけ真剣に向き合ってきたかが大切。例えば僕が30人くらい付き合ってきたとしたら恋愛の達人ではなく、上手にモテることができる男だと思うんです。女性を落とすのが上手いとか。でも僕が言うのはモテるとか落とすではなく、真剣に恋愛と向き合う技術。その技術を男女どちらも身につけてほしいし、砕けてもいいからぶつかれって若い世代に伝えていきたいです。
石井:このインタビュー、どんな記事になるんやろう!? 新山はボケてないし、お笑いやっててもいい事を言ってたりする。だから僕もツッコミができず、ウケない事があるんですよ。ウケ狙いやスベるとか関係なく、ボケていないので何て返したらいいんですかね(笑)。
新山:新ネタ披露の時は、基本的にウケるなどは度外視。いい事を言いながら個性とミックスさせる事を意識しています。でもなかなか難しいので、意識を集中させながら頑張っています。納得できるネタができればいいですけど、なかなか・・・。
―恋愛がテーマで相談にものってくれる芸人さん! 新しいタイプだと思いますが、新山さんはどうして芸人に!?
新山:大阪で生まれ育ったので、昔からお笑い番組を見ていて、ダウンタウンの松本さんが大好きなんです。小学校の時は四文字熟語で「松本人志」と書きました(笑)。でも芸人になりたいとは思っていなくて・・・実は国立の教育大学に進学したのがきっかけなんです。その大学は滑り止めでの合格で、第一志望じゃなかった。でも親に国立大学に行ってくれとお願いされて。悩みましたが親の希望を受け入れて、その代わりに自分の好きな事をやってみようと思ったんです。それで自分でお金払ってよしもとの養成所、NSCに入りました。親はめっちゃ怒っていたので最初の頃は作家コースに通っていると嘘をつきました。でも、どんどん部屋にコントで使う小道具が増えていって、おかしいな〜ってバレてしまいました(笑)。
石井:嘘ついてるんだったら、部屋に小道具置くなよ!
新山:教師になる大学に行ったのに芸人目指しているって事で、めちゃめちゃ怒ってましたが、徐々に認めてくれるようになりました。M-1グランプリの決勝進出できたのも良かったです。
日帰り続きなので、ゆっくり来ます!
ー沖縄の話をしていただきましょう!
新山:暑くてビックリしました! 今出してもらったお茶、キンキンで夏に飲むお茶ですよ。こんなの大阪では冬には出ない(笑)。
石井:確かにキンキンのお茶。1時間ちょっと飛行機乗るだけで来られるのに、こんなに暖かいんですね。初めて沖縄に来たのは中学校の修学旅行で、めっちゃ楽しかった。でもどこに行ったのか、もう覚えていなんです。僕は大阪の大正区に住んでいたので沖縄の人が多く、沖縄の珍しいものが手に入ったり料理を食べたりしてましたよ。でも大人になって旅行では来れてなくて、沖縄花月出演のために来ても日帰りばかり。
新山:僕も初沖縄は中学の修学旅行。平和学習して首里城やナゴパイナップルパークに行き、ビーチで遊びました。沖縄のみなさんは陽気なイメージで、普段の生活で笑っていそう。芸人が笑かさんでも、笑顔でいられるんじゃないですか。
石井:沖縄出身の先輩芸人、大自然のロジャーさんと仲良くさせてもらってて、実家に遊びに行く話もしています。一緒にいて楽しくてすごくいい人。大阪のある交差点で倒れはった年配の方を見かけたというロジャーさんは、声がかけられなかったと後悔していました。「沖縄だったら絶対声をかけたのに、都会に染まった自分が嫌だ」と反省しているのを見て、ホンマにいい人なんや〜。ロジャーさんにずっと付いていきたいと思えたほど大好きです!
新山:沖縄に来ても日帰りで、県民の方と触れ合う機会がほとんどありません。沖縄芸人の後輩とかと連絡取れるくらい仲良くなりたい。いろんな所を案内してほしいですよ。いつか宮古島に遊びに行きたいです。
石井:プライベートで満喫したいのに、出来てないから悔しいですよね。海に行ってゆっくり過ごしたいんです。こっちに来ても沖縄気分になるのは、帰りの空港で1人でオリオンビールを飲む時くらい。休みがちゃんとあったら絶対に沖縄に来て、海で遊んで食べて飲んで楽しみます! 野菜嫌いなんですけど、ゴーヤーは不思議なくらい大好き。苦いのがだいぶ好きですね。他に沖縄そば、ジーマーミー豆腐などいろいろ好きなんですよ。
新山:僕もよく沖縄居酒屋に行くくらい好きで、島ラッキョウは絶対注文します。天ぷらでも塩漬けでもどっちもおいしいですよね。帰りの空港ではポーク卵おにぎりを食べて、オリオンビールを飲む。飲み過ぎて気分が悪くなり、トイレに駆け込んだ思い出もあります(笑)。
―最後に目標を教えてください。
石井:M―1グランプリ決勝進出は目標の1つ。先に話した恋愛話や僕の思想とウケるネタを融合させることができたら、M-1の結果もついて来ると思っているんですよ。他の人たちがやれへんもので、僕らだけの形のネタを作っていきます。
石井:主軸は新山なのでついて行きます。僕がおることでちょっとでも、点数を上げたいと思っているんです。2018年はM-1決勝に行けず関西の賞レースもダメだったので、今年は賞レースで認められるコンビになりたいと思っています。賞レースが順調だったらどんどん勢いに乗れますからね。
新山:僕は結果にとらわれず、自分のイメージ通りのネタが出来たら大丈夫やっていう確信があるんです。できるかできへんかの話ですね。やりたいことを追求し、石井には世界のダンスをマスターする目標を持ってもらいながら頑張ります!
「ハイサイ気分」
ようこそ沖縄へ! 本土から来沖する有名人を歓迎する、連載インタビュー。近況や楽しいエピソード、沖縄への思いなどを語っていただきます。
【さや香 プロフィール】
<Twitter>
さや香 新山(にーやん)@sayaka_niiyan
さや香 石井 @sayaka_ishii
結成年月:2014年
☆新山 士彦(にいやま のりひこ)
性別:男性
生年月日:1991年10月17日
血液型:B型
出身地:大阪府 東大阪市
趣味:映画鑑賞、漫画、音楽、小説、スポーツ観戦、けん玉、野球、勉強
出身:2012年 NSC大阪校 34期生
☆石井 誠一 (いしい せいいち)
性別:男性
生年月日:1988年05月28日
出身地:大阪府 大阪市
趣味:ダーツ、ボーリング、カラオケ、アニメ、TVゲーム、漫画
出身:2012年 NSC大阪校 34期生
◆よしもと沖縄花月4周年4大キャンペーン◆
オープン4周年を記念して、3月より4大キャンペーンスタート!
【キャンペーン期間】3月1日(金)~3月31日(日)
その①中学生以下無料!
期間中、中学生以下のお客様は無料でご覧いただけます。(※一部対象外公演あり。当日券のみ)
その②4人で来たら1人無料!
4名以上でご来場のお客様は1名無料となります。(※当日券のみ、一部対象外公演あり)
その③4周年記念特別公演
●3月9日(土)①13時開演 ②15時開演 ③17時開演
出演:ハイキングウォーキング/アキナ/ライス/マテンロウ
【痛快!?たま子オバァがちょーんどー!】出演:宮川たま子/大屋あゆみ/初恋クロマニヨン/ピーチキャッス/SPゲスト:ハイキングウォーキング
●3月10日(日)①13時開演 ②15時開演 ③17時開演
出演:ウーマンラッシュアワー/アインシュタイン/ライス/マテンロウ
【おきなわ新喜劇】ガレッジセール/ありんくりん/カシスオレンジ/A16/普久原明/田仲メリアン/宝眞栄日也美/仲地智子SPゲスト:具志堅用高
その④沖縄芸人特選沖縄そばカレンダー44名様にプレゼント
沖縄芸人がオススメするそば屋さんを紹介したカレンダーを、抽選で44名様にプレゼント!
対象期間中にご観覧いただいた劇場公演の半券1枚で応募できます。
【よしもと沖縄花月】
那覇市前島3-25-5 とまりんアネックスビル2階 ☎︎098-943-6244
公式サイト==> http://www.yoshimoto.co.jp/okinawakagetsu/pc/
饒波貴子(のは・たかこ)
那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。