先日、漫湖水鳥・湿地センターを訪ねたら、写真展「いち+いちの世界~こどもフォトグラファーが撮った生物たち~」を開催中でした。同センターで毎年開催されている「漫湖みんなでミュージアム」の写真部門で入賞した2人は、日頃からいろいろな生き物を撮影しているとのこと。展示用に大きく引き伸ばされた写真は、どれもしっかりした構図で、それぞれの生き物の動きをよく知った上で撮影していることがわかります。視点の違いも面白い。
もちろん、ピントもぴったり。近頃のデジカメはどれも性能がいいので、ピントを素早く合わせてくれます。でも、どうしたら生き物の生命力を感じられる写真が撮れるでしょうか?
ポイントは、ピントを合わせる場所。目のある生き物であれば、やはり目にピントを合わせること。目元がぼんやりしていると、どんな生き物もちょっと迫力がありません。生き物が逃げなくてゆっくり撮影できるなら、まず目を狙ってピントを合わせ、ピントを固定したまま構図を決めてシャッターを切ると、生き生きとした写真になります。
目のない生き物や植物は、見せたい部分を意識して、そこにピントを合わせます。花なら雌しべかな。普通のカメラなら、シャッターを半押しした状態でピントが固定されます。スマホで撮影するなら、オートフォーカスで撮影するのではなく、画面をタップした場所にピントを合わせてシャッターを切るようように設定しておけば、構図を決めてから生き物の目の辺りをタップして撮影できるはずです。機種によって設定方法は異なりますから、いろいろ試してみてくださいね。
じっくり撮影できる場合はいいのですが、野生の生き物の場合、こちらの動きに驚いてすぐに逃げてしまうこともしばしば。運よく、生き物がこちらを警戒して今にも逃げ出しそうに身構えているなら、遠くからでもとりあえず、1枚撮影! そして、生き物を驚かさないように、ゆっくりそ~っと近づきつつ、1枚、また1枚と、間合いを詰めるたびに撮影します。十分近づく前に逃げられても、後でトリミングして拡大すれば大丈夫。
生き物の撮影に慣れてきたら、生き物の暮らしぶりがわかるような写真にも挑戦してみてください。餌を狙っているところ、メスをめぐってけんかしているところ、子育てしているところなど、もしかしたら研究者さえ知らない行動が撮影できるかも。
近所で見られる生き物をあれこれ撮影して、自分だけの生き物図鑑を作るのも楽しそうですね。
私が子どもの頃は、カメラなんて触らせてもらえず、「生き物を集める」と言えば昆虫採集でした。近頃は、なんだか生き物が少なくなったし、つかまえるのもかわいそう。
でも、フィルムの枚数や現像代を気にせず写真が楽しめるデジカメのおかげで、生き物を殺さなくても、生き生きと活動している生き物の姿を残せるようになりました。もちろん、自然の魅力を伝える時には生態写真が大活躍。みなさんも、デジカメで「新しい生き物集め」いかがですか?
鹿谷法一(しかたに自然案内)
しかたに・のりかず 琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島生まれ。海に憧れて沖縄に来て、もう30年以上。専門は甲殻類。生物の形と機能の関係に興味がある。趣味は本とパソコンとバイクいじり。植物を育てるのも好き。