沖縄から次世代リーダーを発掘・育成する人材育成プログラム「Ryukyufrogs(リュウキュウ・フロッグス)」。“想い”をカタチにしようと、新サービスの構築に挑み続けた8期生9人を応援しようと、国内外で活躍する起業家やベンチャーキャピタリストら8人のスペシャルゲストが12月11日の成果発表会「LEAP DAY」に駆け付けました。世の中に新しい価値を生み出し続ける8人の講演を全文書き起こしで順次紹介します。第5回は、ビル・ゲイツも認めたマイクロソフト社きってのプレゼンター、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長の澤円(さわ・まどか)さんです。
(次回は12月30日公開予定)
社会はどう変わるのか
これから世の中がどう変わるのか、テクノロジーによってどう変わっているのか、ご紹介したいと思っています。
まず、自己紹介しておきますと、ここで1番大事なことを申し上げます。これさえ皆さんの覚えていただければ結構です。わたしはこう見えてもサラリーマンです。サラリーマンを自由に生きることのできる時代がやってきました。やったもんがちです。
マイクロソフトテクノロジーセンターという、マイクロソフトの持っている全てのテクノロジーを全てのセグメントに対して提供していく、そういった部署ですが、琉球大学の客員教授もやらせていただいていて、沖縄県とは非常に縁が深いです。必ず毎年集中講座でお邪魔をして講演をしています。興味があれば、来年も行きますのでご参加してみてください。
ほかにもスタートアップでFiNC(フィンク)というヘルスケア系のスタートアップですが、こちらも顧問として、役割はセキュリティーアドバイザーとして関わってて、サイバーアタックとか会社の中のセキュリティーを守っていく、そういったところのアドバイスだったり、あるいはビズリーチがまだ6人しかいなかったころから関わり、こちらも顧問をしています。主に人のマネージメント、、ピープルマネージメントに関するアドバイスをマネージャーを中心に行ったり、あるいはその延長線上として新入社員研修をやったりしています。
サラリーマンですが、復業、複数の業務に携わる、いろいろな時間をうまくやりくりし、様々な仕事をしています。これをバックグラウンドから支えているのが、まさにテクノロジーなんです。
テクノロジーが進化することによって、こういった働き方が可能になってきています。 さて、そのテクノロジーの話に少し踏み込んでいきましょう。社会とテクノロジーというものはどういった関係があるのか。
ニューヨークの街はどう変わったのか
これを見てどこだかすぐ分かる方はどれくらいいらっしゃいますか。正解はタイムズスクエア、ニューヨークの1番有名な場所です。
1905年に撮られた写真で、見ていただいて分かりますが、馬車だらけなんですね。まだエコシステムが完全に馬車です。この20年前に車というものは発明されていましたが、そのときに言われていたのが「悪魔の乗り物」だと言われていました。
何しろ、エンジンという火のつくものが、ボンネットにあるわけですから、危ないじゃないかというものが1つ。もう1つがビジネスエコシステムを大きく崩す可能性がある、壊してしまう可能性があったんですね。
先ほども言いましたが当時のニューヨークは馬車を中心にビジネスが回っていました。当然それにまつわる仕事というものがあるわけです。
例えば、この当時は全米の採れる穀物の25%は馬用でした。そしてこうして馬車を走らせているので、当然馬車をメンテナンスする仕事であったりとか、馬車をつなぎ止めておく場所を提供する仕事、あるいは馬を世話する、蹄鉄を打つ、そのような仕事がたくさんあったわけですね。それが雇用を生んでいたわけです。
車が出てくると、そういった雇用がなくなるのではないか、という話なんです。
20年後です。もう馬車はどこにもいないわけです。みんな車に置き換わりました。エコシステムは完全に車に置き換わったわけです。
では馬車をケアしていた人はどうしたのか。失業した? 違いますね。仕事を変えただけです。ガソリンスタンドだったりとか、メンテナンスする仕事だったりとか。まさにテクノロジーの進化と、働き方が融合していった結果なんですね。
その変化に対してついていくころができれば、仕事はなくならないんです。
そもそもテクノロジーの話をすると、コンピューターとはみんなで使うものでした。
これはメインフレームというものです。IBMさんがつくっている巨大な汎用機というものです。それに対して端末、端末という言葉、端っこの末なんです。
なんでそのような言い方をするのかというと、昔は大きいものに考えてもらい、そこから紙がピーっと出てきて、端末では何も考えない。映し出すだけ。コンピューターが考えているものを見て、仕事をしているんですね。
当時の端末はディスプレイはなく、紙テープとかそういったものでやっていたんですね。それが今や皆さんの手の中にあるスマートフォンというものは、当時のメインフレームと呼ばれていたものより、はるかにはるかに演算能力というものが高くなっている。すべて手の中にテクノロジーもあれば、ビジネスチャンスすらもここの中にあります。スマートフォンさえあれば何でも見ることができて、始められるということになっているわけです。
すべては手のひらの中に収まる時代になりました。
テクノロジーのインパクト
テクノロジーはどんな風に我々にインパクトを与えるのか? 人間とコンピューターの闘いはずっと昔からいろいろ競われていたわけです。
カスパロフが、ディープブルーというコンピューターを相手にチェスで闘いました。カスパロフは全世界で人類史上最強と言われていました。ものすごい強かった。広い部屋に円卓を並べ、100人の前にチェスの台を置き、その中を走りながらチェスをやって、100人全員に勝っちゃう。本人が息も切らさない間で、みんなをやっつけちゃう。そのカスパロフが1回、ディープブルーとやりました。コテンパンにしました。
翌年、リベンジを受けました。そのとき負け越してしまったんですね。信じられないようなミスをしてしまって、人間特有のもろさをいうものを出して負けてしまったということがあったんです。
当時、全世界すごい驚いたんですが、将棋はあと50年かかると言われました。将棋でコンピューターが人間を倒すのはあと50年と言われました。
なぜかというと、手の数が違うからですね。相手の駒を取り、それをまた指すことができる。そしてひっくり返ったりと、要素が多いのであと50年かかると言われました。
でもどうでしょう。電脳戦がすでに行われ、ロボットアームが指すのですが、今やコンピューターが大きく勝ち越している状況です。それぐらい、どんどん進んでいる。
最後の砦は囲碁。これは大丈夫だろう、まだまだ時間がかかるとだろうと言われました。なにしろチェスは次の手がだいたい24手なんです。囲碁は次のパターンが200手以上。
これは数学やっている方はすぐに分かると思うのですが、べき乗でものすごいパターンが予想できるわけです。これはまだコンピューターに負けないだろうと思っていたのが、コテンパンに負けてしまったんですね。あっと言う間に負けてしまいました。
ヨーロッパチャンピオンを3回も取っているファン・フイ氏が5回やって、5回とも負けています。Googleのディープラーニングの仕組みAlphaGoが、5連勝したんです。
それぐらいテクノロジーは、ある一定の条件下では人間をはるかに凌ぐ能力を持ちます。それを驚異とみるのかチャンスとみるのか、それは我々次第ということになっています。
機械学習の進化
機械学習、人工知能だったり、AIという言い方をしたり、ディープラーニングという言い方をしたり、いろんな言い方がありますが、ここでちょっと面白い音声を聞いてみたいと思います。
【ドライブスルーのやり取りの中で実際に聞こえている音声】
これぐらいの音質なんですね。アメリカのドライブスルーって。オーダーを間違えられた方は結構いると思います。
チーズバーガーを頼んだのに入ってなかったり、これ地味に腹立ちますよね。チーズが食いたかったんだよ!ってね。でも無理もないんですよね。あの音質なので、なかなか聞き取るのは難しいんです。これをテクノロジーがどうするのか?
左側が会話をリアルタイムで全てテキストに落としている状態です。これは十分に実用化できていて、すでに使われています。
もうひとステップあるんです。右側はオーダーに関わるキーワードだけピックアップをして、タグ付けして落としているんですね。
このタグができているということはどういうことか。データを調理マシーンに渡してあげれば、すぐに調理ができるということになる。さらにもう少し分かりやすく、テキストに起こして、お客さんにパッと見せて、確認してオッケーということもできるんですね。
ここまで実用化できる状態なんです。もう1つ見てもらいます。
左が小籠包の美味しいチャイニーズレストランのホームページですが、そこで駐車場あるとか聞いたり、あるいは日曜日やってる?とか、あなたのお店で1番売れている物はなに?とか聞いています。
これを答えているのが全部ボットです。自動応答です。今までは電話をしたりして聞いていたんです。今やITの力でボットが応えてくれる。当然こちらの方がクオリティーがいいんです。
電話応対は回線がふさがり、レストランにとっては場合によっては機械損失になる。この間、別の予約の電話を受けられないですよね。駐車場がありますよって応えてる時間、極端にいえば一円にもならない。もしかしたら、100人の予約を逃したかもしれない。他の店に取られてしまうかもしれない。
そういった簡単なやりとりであれば、テクノロジーに置き換えていこうじゃないか、そういう流れなんですね。
いつだってゲームチェンジャーはいるわけです。これまでのビジネスをがらっとかえるようなゲームチェンジャーはいるんですが、今はテクノロジーがゲームチェンジャーになっている。インターネットからやってきています。
UBERは1台もタクシーを持たないタクシー会社なんて言われ方をしますが、提供しているのはプラットフォームだけ。スマホのアプリとプラットフォームを提供しているだけなんです。にも関わらず爆発的に大きくなっている。
そしてairbnbもそうです。これもプラットフォームを提供しているだけなんです。ホテルなんか建てる必要なんかなくって、プラットフォームを用意して、インターネットに公開して全世界で使えるようにした。これだけなんですね。
でもゲームは大きく変わってしまいました。既存のものは大きく、音を立てて崩れていってしまっている。築いた時には壊れている。築いた時にはビジネスは破壊されているということになっている。
これに対してどう対応していくのか? 早く気がつかないといけない。
ITをやる意味
講演である学生からこんな質問をうけたんですね。「ITってやらないといけないんですか? 苦手なんです私。非常に不安なんですけど」って。
やらなきゃいけない?ってキーワードに対してはまあ、やった方がいいっていう言葉になるんですが、もうひとつ付け加えるとしたら、こう考えていただきたいんですね。沖縄で車って運転しなくちゃいけないものなんですか?って。もってないことがダメじゃないんです。ポリシーがあれば、それはそれで構わないんですが、なんで免許を取ったのか?
必要だからとったんですよね。つまり、ITをやっておくことについて、わたしはこういう言い方をします。「コスパがいいんです」とコストパフォーマンスがいいんです。昔のでっかいコンピューターより高性能のコンピューターを普通に手にしているわけです。
そしてITをやっておけば、これはトッププログラマーになれだとか、ITを生業にしろとか、IT企業に就職しろとか言っているわけじゃないんです。テクノロジーに対してアレルギー反応を持たないように、自分の方から積極的に関わるということをすれば、他の何を始めることより、はるかにコストパフォーマンスがいいんですね。
テクノロジーは世界のビジネスモデルを大きく変える力があるんですね。その一部分を自ら握る、つかみにいけばいい。それだけの話なんです。
ですので「ITはやったほうがいいですか?」っていうことには、得られる得っていうのが、他のものに比べるとはるかに大きいですよって僕は言うんですね。コストパフォーマンスが圧倒的にいい。
そして「今から初めても先行者いっぱいいるじゃないですか?」そういう言い方をする人もいます。誤解しないでください。テクノロジーはめっちゃくちゃ進んでいるんですね。進むスピードが速いんです。5年前、10年前の知識がこれほど役に立たない業界はなかなかない。
僕は元々コボルという言語のプログラマーでした。その自己紹介をしただけで、場合によっては笑いが起こるぐらい。そのぐらいウルトラレガシーな言語なんです。こんなの持っていても全然役には立たないんですが、テクノロジーに触れることを止めなかった。要するにずっとタッチし続けた、それによって僕はこの立場にいることができる。
ちなみに私は文系出身ですからね。テクノロジーに全然明るい人間ではありませんが、続けて新しいものをずっとキャッチアップするのであれば、その結果、今の立場であったりとか、こういったオファーとかを受けることができる状態になっています。
そして行動することによって面白い人たちに必ず会えるんですよね。会ってみたい、ちょっとタッチしてみたいなって人にいつのまにか会える状態になります。ですので、触れなきゃいけないんですか?やらなきゃいけないんですか?と、ある面においては答えはイエスですが、触れないという選択しをとるのもありなんですが、もっと気軽に触れても良いのではないかと思っています。
テクノロジー「と」付き合ってもいいし、テクノロジー「を」仕事にしてもいいし、テクノロジー「も」やってもいいし、1番さけてほしいのはテクノロジー「に」振り回される。これはあんまり楽しくないので、テクノロジーの後ろになんかちょっと付け加えてもらって、みなさんなりのテクノロジーとのつきあい方を考えて欲しいと思っています。
なんらかの形でみなさんのキャリアなのか、人生であったり、そんなところにプラスになるように、テクノロジーを生かしていけばいいのではないかと思います。
(次回は12月30日公開予定)
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