沖縄の長い夏、休日や夏休みは、きれいな海で思い切り楽しみたいですね。
とはいえ、サンゴ礁の海で気になるのは危ない生き物たち。そこで、今回は特に知っておいてほしい生き物と、もし出会ったらどうするか?をご紹介しましょう。
まずは、海で泳いで出会うかもしれない危険生物です!
その1:触手から毒針を発射「ハブクラゲ」
沖縄の海で一番気になるのは、やはりこれ、ハブクラゲです。透明で四角いカサの四隅から、糸のような触手が何本も、長さ1メートル以上伸びています。その触手には、毒針を発射する「刺胞」という細胞があります。夏の初めはまだクラゲが少ないのですが、8月になると、特に漁港や防波堤の内側などの、波が静かで少し濁った場所によくいます。海水浴は、日焼け防止も兼ねて、ラッシュガードなどで肌を守りましょう。
万が一、ハブクラゲに刺されたら…? 触手が肌に触れると、ビリビリッと電気が走るような痛みがあります。でも慌てないで!こちらが暴れると、かえって柔らかい触手が絡みつき、ちぎれて肌に残ってしまいます。決して肌をこすらず、すぐに岸に上がってお酢をかけてから、肌に残った触手を剥がして、病院に行きましょう。
お酢は、毒を中和したり傷を治したりするわけではありません。刺胞を「酢締め」にして、それ以上毒針を発射できなくするんです。だから、もしお酢をかける前に、肌に残った触手を取ろうとしてつまんだら、その指も刺されてしまいますよ。ハブクラゲの毒はとても強く、そのままにしておくと肌に痕が残ることもあるので、必ず病院で処置を受けてくださいね。
なお、全てのクラゲにお酢が効くとは限りません。またイソギンチャクなどに刺された時も、お酢で良いわけではありません。中には、お酢の刺激でかえって毒針が発射される場合もあるようなので、「お酢はハブクラゲだけ」と覚えておいてくださいね。
その2:美しくて怖い「ミノカサゴ」、待ち伏せの名人「オニダルマオコゼ」
カサゴやオコゼは、ひれの先が毒針になっています。中でもミノカサゴの仲間はとってもきれい。夜行性で、昼間はよく岩陰に隠れています。背びれや胸びれを広げて優雅に漂うので、写真を撮りたくなりますが、そのひれの先に触れると激痛! 間違っても手を出さないで。
また、オニダルマオコゼは待ち伏せ型の魚。砂地に埋もれたり岩そっくりの姿でじっとしたりしているので、私たちはまず気づきません。これを間違って踏んづけたら、背びれの棘の猛毒が足に注射されて、大変です。海では足を守るために、ちゃんとマリンシューズなどを履くようにしましょう。
その3:「ウミヘビ」はコブラの親戚
ウミヘビの仲間はコブラの親戚です。ハブ毒のような血清はなく、神経を麻痺させる強い毒を持っています。また、空気呼吸をするので、息を吸いに水面に上がってきます。そのとき、泳いでいる私たちと出会うことがあります。ただし、ウミヘビの口は小さく、人間のような大きな生き物を咬みにはきません。もしウミヘビに出会ったら、私たちの方は決して手を出さず、そっと離れてください。きっとしなやかで美しい泳ぎを見せてくれるでしょう。
海の生き物で、向こうから人を狙って刺しにくるものはありません。ただ、毒のある生き物たちは自分が強いことを知っていて、あまり逃げません。だから、こちらが彼らの住みかにお邪魔するつもりで、もし出会っても慌てずに、こちらから離れて行けば大丈夫。危険な生き物をむやみに怖がらず、気をつけながら、海を安全に楽しんでもらえたらと思います。
沖縄の海の危険生物についての詳しい情報は、沖縄県の「気をつけよう!! 海のキケン生物」のサイトやリーフレットを参考にしてくださいね。
鹿谷麻夕(しかたに自然案内)
しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京で生まれ育ち、20代半ばで文系から理系に転向、沖縄に来てサンゴ礁を学ぶ。その後、しかたに自然案内を主宰し、県内で海の環境教育を行う。本と音楽と野良猫を好む。