先日の台風は沖縄の海を久しぶりにかき回したあと、日本を駆け抜けて行きました。
強い風と波はいろいろなものを島に運んできます。ヤシの実や珍しい貝殻などを見つけると嬉しくなってしまいますが、最近はありがたくない漂着物もたくさん目に付きます…それは海を漂うごみたち。
一体どんなものが多いのでしょうか?
1. タバコのフィルター
海岸で見つかるごみの中で、一番数が多いのがタバコのフィルターといわれます。街でポイ捨てされた吸い殻が、雨水と一緒に道路の側溝に落ち、川を通って海岸にやってきます。
タバコは紙と葉っぱでできている、と思っている方はいませんか?
実はフィルターはプラスチック繊維。紙はなくなっても、ふわっとしたフィルターだけが、いつまでも分解されずに残るのです。
2. ペットボトル
遠くの海から流れつく代表的なごみ。沖縄では日本のものに混ざって中国のペットボトルがたくさん見つかります。
そうすると中国を悪者にしがちですが、これはマナーの良し悪しではなく、人口の多さとともにごみも増えるということ。
最近はベトナムやマレーシア製もよく見られます。ボトルのラベルを見ることで、海流のつながりと、世界の人口や消費生活の変化を感じ取ることができます。
3. 漁具
海ならではのごみ。カエルの顔のように見える黒い浮き玉、細長い楕円形の青い浮き。大きな発泡スチロールの塊にロープが巻きついているものは、養殖筏の浮きでしょうか。
そして漁網…漁業系のごみの多さは、私たちの食卓を支える漁業が活発な証拠でもあります。
でも、どうしても海という自然の中では、ロープが切れてしまったりするんですね。切れた漁網が海を漂流すると、人知れず魚がかかって死んでしまうことも。
せめて打ち上がった漁具は私たちが片付けたいものです。
4. プラスチック類
海のごみで一番問題なのがプラスチック類。社会の中で大量に使われて、たくさん海に流れ出て、世界中を漂流し、やがて一部が浜に流れ着きます。そうすると、太陽の紫外線と熱、波や砂にもまれ、劣化してどんどん砕けていきます。
大きさが5ミリ以下に砕けた「マイクロプラスチック」は、海鳥や魚の胃袋、プランクトンの体にまで入り込んでいることが分かっています。
暮らしに便利な材料のプラスチックですが、海に散らばったごみを見ていると、私たちはこの使い方を見直す時期にきていると感じます。
5. シーグラス
中には「きれいなごみ」もあります!
砂浜で時折見つける、すりガラスのかけら。ビーチで捨てられた飲み物のビンが割れて、砂に揉まれたものですが、これを集めたクラフトやアート作品もあります。
素敵な作品を一つご紹介しましょう。浦添市港川の「隠れ家カフェ清ちゃん」
オーナーの島田春奈さんは、シーグラス作家。自分で拾い集めたシーグラスのアートをたくさん展示しています。こんなふうに美しく蘇らせてもらって、ガラスのかけら達も喜んでいるみたい!
海のごみは、私たちの社会を映す鏡のよう。秋から冬は、黒潮に運ばれるごみが北風で沖縄の島々に寄せられます。
今度海に行くときは、ごみ袋を1枚ポケットに入れていきませんか?
見つけたごみを1つでも拾ってごみ箱に運ぶのは、海へのごくささやかな恩返し。あなたも素敵なシーグラスを拾えるかもしれませんよ。
鹿谷麻夕(しかたに自然案内)
しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京で生まれ育ち、20代半ばで文系から理系に転向、沖縄に来てサンゴ礁を学ぶ。その後、しかたに自然案内を主宰し、県内で海の環境教育を行う。本と音楽と野良猫を好む。