2018年1月。沖縄も久々に寒い日が続きましたね。先日、ベランダの雨音が妙に大きいな〜と思っていたら、どうやら霰(あられ)が降った様子! 証拠写真を撮れなかったのが、ちょっと残念。そんな寒さの中、海の中では春への準備がゆっくりと進んでいます。浅いイノーで暮らすアメフラシの仲間は、冬の海野菜をモリモリ食べて栄養を蓄え、2〜3月の産卵の季節に備えます。春を迎える頃、海の生き物たちがたくさんの卵を産めるのも、冬の海藻のおかげなんです。
※参考記事:沖縄の〝海野菜〟オススメ4種 歩いて採って味わおう! しかたにさんちの自然暮らし(38)
見たことある? アメフラシの卵は〝ゼリー〟の中に
ところで、アメフラシたちの卵って、見たことありますか? よく知られているのが、ウミゾウメン。タツナミガイというアメフラシの仲間の卵塊です。頭部を左右に振りながら細長く生み出されるゼリー状の糸の中には、とっても小さな卵がびっしりと詰まっています。しかも、同じところに何度も生みつけるようで、色の異なる卵塊がくっついています。色の違いは、卵の成長段階が異なるから。生みたては明るい色だった卵も、卵の中で赤ちゃんが育つにつれて暗く濃い色に変わっていきます。
戦後、食料のない時代はこの卵を食べていたそうですよ。ちなみに「雨降らし」という名前は、敵に攻撃された時に背中から出す紫の液を、空に広がる雨雲に例えたものです。
ウミウシの卵はリボンのよう
アメフラシに近い仲間のウミウシたちは、薄くて柔らかいリボン状の卵塊を生みます。フリル状に波打つ卵塊は、白やピンク、オレンジなど、色も形も大きさも様々。波に揺られ、海の中でもよく目立ちます。これも、拡大して見ると、中に小さな卵がきれいに並んでいるのがわかります。いったい何粒の卵が入っているのか見当もつきませんが、栄養たっぷりの卵がたくさん入っているのに、どうして魚に食べられてしまわないのでしょう?もしかしたら、魚が嫌いな成分が入っているのかもしれませんね。
海草藻場には卵がいっぱい
アメフラシもウミウシも、実は貝殻を持たない巻貝の仲間です。巻貝も、種類によって卵の形は様々。例えば三角形に巻いた貝殻を持つイモガイの仲間は、石の下や海藻の影などに、小さな卵が詰まったカプセルをいくつも並べて産みつけます。薄っぺらいカプセルの中には、卵の粒がうっすらと透けて見えますよ。
他にも、イノーの海草藻場では、と〜っても小さな卵を見つけることができます。海草の葉の上だけで暮らす、「葉上性貝類」たちの卵です。海草の葉の表面を、目を凝らしてよ〜く探すと、1ミリにも満たないような、半球状の透明なカプセルが見つかるはず。中には小さな卵が10粒ほど。カプセルの形から、クサイロカノコかキンランカノコの卵でしょうか。ただ残念なことに、イノーの浅瀬の埋め立てが進んだことで、彼らは海草類と共に準絶滅危惧種に指定されています。たくさんの卵から貝が生まれて、昔のように増えてくれるといいな。
2月になれば、昼間に潮がよく引くようになります。お天気のいい日は、のんびりと、暖かい日差しを受けながら、新しい命を探しに行ってみようかなぁ。
さて、「しかたにさんちの自然暮らし」は、これでいったんおしまい。4月から新シリーズにリニューアル予定です。どうもありがとうございました。またお目にかかりましょう!
鹿谷法一(しかたに自然案内)
しかたに・のりかず 琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島生まれ。海に憧れて沖縄に来て、もう30年以上。専門は甲殻類。生物の形と機能の関係に興味がある。趣味は本とパソコンとバイクいじり。植物を育てるのも好き。