YouTubeで人気の「テキスト動画」の問題点とは モバプリの知っ得![73]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

動画サイト「YouTube(ユーチューブ)」が子供からお年寄りまで、幅広い世代から人気です。
総務省が調査した、「ネット動画視聴の広がり」では、76.8%の人が「YouTubeを利用したことがある」と答えています。

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc132230.html

特に60代の利用は59.5%と、66%の韓国についで2位となっており、アメリカ37.5%・英国35%と比較してもかなり高い数字になっています。

YouTubeには幅広い世代が楽しめる様々な動画がありますが、その質は玉石混交です。
中には広告収入狙いの、嘘にまみれた動画も沢山投稿されています。

私たちの身近な存在であるYouTubeだからこそ、使い方には気をつけたいです。

お金を稼ぐことができるYouTube

YouTubeは視聴するだけでなく、自分で動画を投稿して世界中の人に見てもらうことができます。
また「チャンネル登録者数1000人以上」などいくつかの条件を満たせば、自分の投稿した動画と一緒に流れたCMの再生回数によって、広告収入を得ることができます。

広告収入は条件によって変化するものの「1再生=0.1円」と言われています。
つまり動画が100回しか再生されなければ広告収入は10円ですが、動画が10,000回再生されると広告収入は1,000円になります。

YouTubeに動画を投稿し、その広告収入で生活している人たちを「YouTuber(ユーチューバー)」と呼びます。トップYouTuberの再生回数は数十億回を超えており、推定される広告収入はトッププロスポーツ選手並みとなっており、小学生の「なりたい職業ランキング」でも上位に入るほどです。

しかしながらYouTubeは誰でも動画を投稿できます。そのためYouTube上には無数の動画があります。YouTube視聴者の目も肥えてきているため、適当に作った動画では再生回数は増えません。
「見て良かった」と感じてもらえる動画をしっかりと作成してファンを作り、それをコツコツと続けないことには、生活できるだけの収入も得ることができないのが現状です。

「なりたい職業ランキング」上位に入るもののトップYouTuberに求められる技術は相当高く、簡単にはその地位にたどり着けません。「子供たちの夢である一方、一部の天才たちしかたどり着けない」という構造はプロ野球選手やサッカー選手と同じであるとも言えます。

無断転載と「噂」がベースのテキスト動画

しかしながら手軽に再生回数を稼ぐ方法を考え、広告収入で儲けようとする人たちもいます。
それが「テキスト動画」と呼ばれる、大きな文字でニュースを伝える動画です。

テキスト動画は芸能・政治ネタが多く、既存のニュース報道を無断転載したものや、ネットでの書き込み、噂話をまとめている内容が多くなっています。
「テキスト動画 収入」と検索すると、この手の「ノウハウ」が沢山ヒットします。

ニュース報道の文章をコピー&ペーストして動画形式に変換するだけであれば、わずかな労力で動画を量産できます。わずかな労力で再生回数(=広告収入)を稼ぐことができます。
テキスト動画の多くで見られる無断転載は、著作権侵害です。
人の書いたニュース記事を盗用し、自身の広告収入へとつなげる。倫理観は推して知るべしです。
 

【関連記事】知っておかないとマズイ「引用」と「転載」の違い モバプリの知っ得![53]
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-713531.html

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

またネット上に流布する芸能・政治ネタの「噂」をまとめた動画も多く存在します。
例えば、「あの芸能人・政治家は性格が悪そう」とした先入観を持っている人が「名前 悪い噂」などで検索をすると、テキスト動画がヒットするという計算です。

はじめから結論ありきで調べ、自分の考えを補強することを「確証バイアス」と呼びます。
ネット上の「噂」「デマ」などはそうした確証バイアスを補完する材料となるため、再生回数を増やしやすくなっています。

【関連記事】結論ありきで情報を集める「確証バイアス」が恐ろしい モバプリの知っ得![10]
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-515464.html

自動で文字が流れてきて手軽に情報を得ることができる「テキスト動画」は、お年寄りや子供たちからするととても読みやすいかもしれません。
機械音声で文字の内容を読み上げる動画も出てきているため、受け取る側の手軽さは増しています。

しかしながら情報の正確性に欠け、バイアス(偏り)を引き起こす場合があります。、「◯◯が日本を支配している」などの陰謀論をまき散らすきっかけにもつながります。

こうした懸念を私がTwitterに投稿したところ、思った以上に拡散され「私の父親も見ています」とした報告も多数寄せられました。

テキスト動画を何度か見ていると、オススメ動画としてどんどん類似したテキスト動画が出てきます。バイアスにバイアスが重ねられるイメージです。

私たちにとって身近で、手軽なYouTubeにテキスト動画はウヨウヨと生息しています。
自分自身がこうした動画の情報に流されないのと同時に、家族や周りの人が影響を受けていないか注意深く見守る必要があるでしょう。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」9月23日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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