知っておかないとマズイ「引用」と「転載」の違い モバプリの知っ得![53]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

朝日新聞などの報道7社は、まとめサイト「NAVERまとめ」に報道写真や画像37万件が無断転載されていたとして、運営会社のLINEと子会社ネクストライブラリに削除を求めるよう要求し、4月26日に該当する画像を削除することで合意したと発表しました。

NAVERまとめは、登録したユーザーが自由に情報をまとめることができます。ユーザーが作った「まとめ」は、アクセス数に応じ報酬が支払われます。

誰でもまとめられる手軽さと、お金儲けができる仕組みが合わさったことで、数多くの「まとめ」が作られた一方、前述した著作権侵害などの問題点が生じています。

今回、NAVERまとめ側に画像の削除を求めたのは、朝日新聞、産経新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞、時事通信、共同通信の7社です。

読んでいる方の中には、「新聞社とNAVERの間の話で私たちとは関係ない」と感じる方がいるかもしれません。

しかしながら、著作権侵害は新聞社だけが被害を受けるものではありません。

誰でも簡単にSNSに写真をアップできる時代。あなたが撮影した写真・画像が盗まれ、勝手に写真集として売り出されるかもしれません。また、あなたが写っている写真が悪用される可能性もあります。実際に自分のプロフィル写真を出会い系サイトの「ダミー画像」として使われた例も。

さらに無断転載や著作権についての知識がないと、悪気がなくても「人のコンテンツを盗んでいた」という事態になりかねません。

もう一つ、「NAVERまとめ」をはじめとする、ユーザーが自由に投稿できるサイトでは間違った情報がさも正しい情報のように掲載されることもあります。

そうした観点からも、このタイミングで問題点を今一度整理してみましょう。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

引用・転載の違いは?

今回新聞社とNAVERまとめ側で問題となったのは「無断転載」です。

転載とは、人の著作物(文章・画像など)を勝手に複製し、違う場所に掲載することです。転載そのものは問題ないのですが、これを「無断」で行うとアウトになります。

例えばこの連載は「琉球新報Style」に掲載されていますが、「女性自身」にも転載されています。
 

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これは琉球新報、女性自身、そして筆者が合意をした上での転載なのでOK。

しかし、この連載の文章やイラストを無許可で転載すると「無断転載」となりNG。

人の文章や画像を転載する場合は必ず著作者に許可を求める必要があります。

ただし、著作権32条で定められている「引用」の形式であれば、著作者への許可は必要ありません。

引用となる条件が法律で設定されており、それを満たすことで「転載」の範囲から外れるのです。

“他人の主張や資料等を「引用」する場合の例外です。

【条件】
ア 既に公表されている著作物であること
イ 「公正な慣行」に合致すること
ウ 報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること
エ 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
オ カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
カ 引用を行う「必然性」があること
キ 「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)”

出典:文化庁

上に記した引用の条件も、文化庁からの「引用」になっています。
今回は著作権を考える「批評」の中で、引用の条件を説明する「必然性」があります。

細かいルールこそあれど、大事なことは引用元が「主」になってはいけないということです。

引用した文章が大多数を占めているのであれば、出典を明記してもカギ括弧などをつけていても、転載になるということです。

NAVERまとめでは、「引用」を主張しながらも、そのほとんどが引用元の文章で作られている「無断転載」のまとめが多数あり、以前から問題点が指摘されていました。

まずは「引用」「無断転載」の違いを把握し、自分自身が無意識に無断転載をしてしまわないよう、気をつける必要があります。

その情報本当に正しいの?

NAVERまとめのように、登録したユーザーが投稿した内容がコンテンツになるサービスをUGC(User Generated Contents)やCGM(Consumer Generated Media)と呼びます。

NAVERまとめやWikipedia、Yahoo!知恵袋、さらにはクックパッドなどのレシピアプリもUGC・CGMに分類されます。

こうしたサイトは基本的に投稿するとノーチェックで掲載されるので、時に正確ではない情報が載ることがあります。

2017年3月、東京都で生後5カ月の男の子がハチミツを食べたアレルギーで亡くなる悲しい事故が起きました。1歳未満の乳児は、ハチミツに含まれる「ボツリヌス菌」のアレルギーでまれに亡くなることがあるのです。

“赤ちゃんのお母さん・お父さんやお世話をする方へ

  1. 1 歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べることによって乳児ボツリヌス症にかかることがあります。
  2. ハチミツは1歳未満の赤ちゃんにリスクが高い食品です。
  3. ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱や調理では死にません。1歳未満の赤ちゃんにハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などの食品は与えないようにしましょう。”

出典:厚生労働省-ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。

事件の後に、ユーザー投稿型のレシピサイトで、赤ちゃんの離乳食としてハチミツを使ったレシピが多数公開されていることが分かりました。

亡くなられた男の子の両親がレシピサイトを見たのかは明らかになっていないため、事故との直接的な関係は分かりません。

しかしながら命を落とす可能性がある、間違った情報がサイトに掲載されていたのは事実です。

各レシピサイトは、事故後に「乳児のレシピの取り扱いに気をつけてください」とアナウンスし、確認を強化すると発表しましたが、結局のところユーザーが投稿すると掲載されてしまいます。

こうした「構造そのものの問題」はWikipediaも抱えています。

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Wikipediaも登録したユーザーが編集するため、間違った情報、悪意ある情報が掲載されることがあります。 2018年3月、タレントの坂上忍さんのWikipediaの国籍欄が書き換えられ、ネット上で中傷される事件が起きました。

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書き換えられた、国籍に関する情報はデマでした。

しかし、そのデマを信じた人たちが坂上さんや外国籍の方々を非難する言葉を書き込み、デマがどんどんと広がるのでした。

Wikipedia、NAVERまとめなどのサイトは情報が簡潔にまとめられているため、新聞や書籍などの情報と比較しても、分かりやすいというメリットがあります。

しかしながらユーザーが投稿するという性質上、情報の正確性についてはかなり怪しくなっています。検索でユーザー投稿型サイトが出てきても、それだけを見るのではなく、複数のメディアや情報源を確認し、正確性を高める作業が必要になります。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」5月6日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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