沖縄から次世代リーダーを発掘・育成する人材育成プログラム「Ryukyufrogs(リュウキュウ・フロッグス)」。“想い”をカタチにしようと新サービスの構築に挑み続けた8期生9人を応援するため、シリコンバレーなど国内外で活躍する起業家や投資家ら8人のスペシャルゲストが12月11日の成果発表会「LEAP DAY」に駆け付けました。世の中に新しい価値を生み出し続ける8人の講演を全文書き起こしで順次紹介します。第3回は麻生要一さん(株式会社リクルートホールディングスMedia Technology Lab.室長/株式会社ニジボックス代表取締役社長兼CEO/TECH LAB PAAK所長)です。(今回は原稿の一部を割愛しています)
(次回は12月23日公開予定)
「イノベーターコミュニティ・TECH LAB PAAKと、
リクルートがつくる未来の社会」
リクルートという会社から来ました麻生要一です。
澤山陽平さんの話の中で、ユニコーン(時価総額1000億円を超えるようなベンチャー)企業が生まれる確率は1%ぐらいという話がありました。リクルートという会社はすごく大きな日本の会社ですが、僕はリクルート内外で新しくものを始める人たちを支援する活動をしているので、それを紹介させてもらいます。
リクルートが起業家を生み出す仕掛けというタイトルでお話したいと思います。
まず、最初に、きょうどんな人が来ているのか知りたいので、手を上げてください。10代の人?(挙手)すげ~いっぱいいますね。20代の人?(挙手)なるほど。30代以上の人?(多数が挙手)あ、30代以上が人口としては多いですね。ありがとうございます。バラエティー豊かなので、どこに焦点を合わせようかと悩みながら進めます。
もう1個だけ聞きたいんですけど、リクルートという会社を知っている人? (多数が挙手)。あ、よかった~。リクルートがやっているサービスの中で、沖縄では一番有名だって聞いたので、おうち探しを手伝う「SUUMO(スーモ)」をやっている会社です。よろしくお願いします。
三つの顔を持つ男
まず、自己紹介をさせていただければと思います。リクルートグループに新卒で入社をして、今年で11年目の33歳です。僕のキャリアはちょっと変わっていて、入社して2年目にグループの社内新規事業コンテストで優勝して、そのプロジェクトをずっとやってきました。
2010年にはそのプロジェクトが大きくなったので、リクルートに100%出資の株式会社ニジボックスという子会社をつくってもらい、そこの社長をしてきました。なので僕は、自分でゼロからサービスをつくって社長業をやってきたITベンチャー経営者の側面があります。
3年前にリクルートホールディングスに兼任で呼び戻されて、今メインでやっている仕事がリクルートグループ全体の新規事業開発部門Media Technology Lab(メディア・テクノロジー・ラボ)の責任者です。
三つ目の仕事が、TECH LAB PAAK(テック・ラボ・パーク)という起業家支援の取り組みをやっているオフィスで、そこの所長もやっています。
原点は中高時代の演劇部
今日は10代の人がたくさんいるので、僕が10代のときに何をやっていたのかをお話をして、親近感を持ってもらいたいなと思います。
ITベンチャーを経営し、新しいことが大好きな僕ですが、原点は中高時代の演劇部なんです。何もないところから自分で演劇部をつくって、部長をやっていました。役者もやっていたんですが、自分で脚本書いて、演出もして舞台をつくりあげるということをやっていました。
僕の新しいことをやりたいという原点は部活にあります。今日来ている10代の皆さんの中でも、みんながみんなプログラミングやったり、新しいことやったりしているわけじゃないと思うんですね。ただ今、目の前でやっている部活が将来つながるようなこともあるかもしれない、そんな風に思って聞いてほしいです。
ちなみに中高で演劇部をやりきった後、大学では地元の活性化をするようなお祭りを立ち上げて、商店街のおじさんたちと一緒にやったりしていました。あと、これはちょっと自慢なんですけど、2005年に名古屋で愛知万博があって、ハンバーガー屋さんを出店しました。学生が起業した会社としては、世界で初めて万博の会場内で営業出店したんです。
ま、こんなことをやってきた10代ですが、今も人間としてはあまり変わっていない。人を感動させたい、人の心を動かすことをしたい、自分たちの手で何かを生み出したいということを、中高の時から考えていたし、この人間性がずっと続いて、リクルートに入ってからもいろいろしている人だと思ってください。
選択肢を提供するリクルート
ここから本題に入っていければと思うんですが、リクルートという会社について簡単に紹介したいと思います。SUUMOというメディア以外にもいろいろやっています。歴史は長くて、1960年に立ち上がって57期目を迎えています。創業者の江副浩正さんが東大新聞の求人広告を販売する会社として設立されました。それから急速に成長してきたリクルートですが、僕たちはよく「ゆりかごから墓場まで」って言います。
人は生まれてから死ぬまでの間に大小さまざまな意思決定をしなきゃいけない。例えば学校はどこに行ったらいいのか、会社はどこに入ったらいいのか、おうちはどこに買ったらいいのか、誰と結婚したらいいのか、みたいな。そんな人生の意思決定のシーンにおいて、選択肢を提供することで人々の生活を豊かにしたい、それを支えるメディア業として成長してきた会社です。
例えばおうち探しの「SUUMO」、アルバイト探しの「タウンワーク」、結婚式場選びの「ゼクシィ」、ヘアサロン探しの「ホットペッパービューティー」、旅館選びの「じゃらん」のようなメディアをたくさんやっているんですが、どれぐらいメディアがあると思います? めっちゃやっているんですよ。ウェブサイトでは200以上、モバイルアプリだと350以上、エンジニアでいうと1000人以上で、日本最大級のITメディアカンパニーです。
新規事業を生み出すコアは?
そんなリクルートですが、今あるサービス全ては、たった一人の情熱ある人間が始めた新規事業、新サービスとして生まれているんですね。この200以上の新サービスを生み出し、大きくしていく仕掛けや仕組みというものがリクルートにはあります。
リクルートの新しいことを生み出す仕組みのコアは「NewRING」という名前に題される新規事業開発プログラムです。1990年から欠かさず開催しているので、もう30年近く毎年やっている活動、いわゆる社内新規事業コンテストです。でも、その辺にある社内新規事業コンテストと決定的に違う点が2つあって、優勝した作品には必ず投資をして事業化するということと、誰にやらせるんだといったときに提案した人にやらせるってことを含めて、ずっとやり続けていることです。