沖縄で整備工場を経営されている方から先日、「求人をしても全然応募がなくて困っている」というご相談がありました。筆者は主に沖縄県内の中小・零細企業のご相談を日常的に受けております。
「40代50代の経営者仲間の飲み会での話題は、健康のことか、人手不足のことばかりだよ…」
ビジネスシーンにおいて「人手不足」というキーワードは、もはや挨拶代わり。筆者にも商工会や商工会議所、各種団体さまから「採用戦略セミナー」などのご依頼がかなり増えており、2018年は沖縄県内だけで500社以上の参加を頂きました。
まさにどこもかしこも人手不足です。
今回は特に中小・零細企業の人材不足の背景を探りながら、効果てきめんの改善策を紹介したいと思います。
◇執筆者プロフィル
小宮 仁至(こみや ひとし) ファンシップ株式会社 代表取締役
広告会社やWEBマーケティング会社を経て、2015年にファンシップ(株)を創業。2016年より「レンアイ型採用戦略」を提唱し、企業へのセミナーや求職者への採用支援を実施している。1979年生まれ 熊本県出身。うちな〜婿歴10年の2児の父。
※これまでのコラムはこちら→「働き方改革@沖縄」(https://ryukyushimpo.jp/style/special/entry-786593.html)
人手不足なのに採用担当者がいない
筆者がご依頼を受けた採用セミナーでは終了後、希望者には個別相談も承っているのですが、不思議なことにこの個別相談に来られる方の多くは「総務部の担当者」なんですね。10人中7人くらいは総務部の女性です。採用コンサルタントの仕事を始めて気づいたのですが、沖縄県において「人事部」がある企業は稀です。採用に関する業務は、たいてい「総務部」の方が担当されています。
多くの企業が「人手不足」なので、「採用について学べる機会があるなら、どんどん行ってこい!」と会社側もセミナーに送り出してくれるのだと思います。
ですが…採用って総務部の一担当者のお仕事でしょうか?
経営者仲間での「キーワード」になっているのに、なぜ経営者が相談に来ないのでしょうか?
“経営課題”に取り組む体制づくりができていない
冒頭に申し上げたように、もはや「人手不足は時候の挨拶レベル」です。つまり、多くの会社が抱える「経営課題」です。
「社内の会議では、人手不足と人材不足の話題は毎回出ます」
「社長から『何とかしろ』と言われています」
実際に個別相談に来られる担当者さんは、口々にそう言います。
それなのに、相変わらず「採用担当」は「総務部」の一担当者の仕事、しかも優先順位が3番目4番目の兼務…という不思議な現状が起こっています。
「今は売上高よりも、組織の基盤整備のために人材確保が最優先だ」
経営者の皆さんからは、そんな声が聞こえてくるのに、最優先課題であるはずの採用の仕事が、専門部署ではなく兼務の業務…って、とても不思議です。しかも、この現状に違和感を持っている企業が少ないことも、さらに驚きです。
例えば「会社の売り上げを増やしたい ⇒ 営業マンを増やす」
ならば「人を採用して定着させたい ⇒ 人事部を強化する」
というのがシンプルな解決策なのに、取り組まれていない…。
つまり「人手不足」の背景には、「人材確保に力を入れないといけないのに、採用に対しては以前の考え方のまま、組織強化にも取り組んでいない」という場合もあるのです。
人手不足企業が抱える4つの不思議な共通点
上記を含め、人手不足企業の不思議な共通点を挙げてみます。
① 「採用力ナンバー1企業を目指す」と言いながら、担当は総務が兼務の会社
前述の通り、これ、本当に多いです。とっても不思議ですよね。「採用活動は求人媒体社とのやりとりやハローワークの求人票掲載くらいしかやることがない」と思い込んでいることが原因です。採用活動って、やるべきことはもっともっとたくさんあるんですよ。
②「同業他社は、人が集まっているか?」を気にする会社
これも、とっても不思議な生態なのですが、相談に来られる方の中にけっこういらっしゃいます。「他はどうなっているんだ!?」と。気になるのもわかりますが、これを知って何が変わるんでしょう?
恋愛に例えると、野球部の男子生徒が「オレが彼女いないのは野球部だからだ。他の部員も彼女いるのか?」と聞いて回るようなもんです。そんなことしている暇があったら、とにかく女子と会話しようよ、って思いません??
③2020年以降、人手不足は解消すると信じている会社
つまり東京オリンピック需要で、人手がみんな関東に流れていると思っている方々です。もちろんその影響もあるでしょうし、多少は人手も帰ってくるでしょう。ただそもそも人口は減っているわけですし、この場合、問題なのは「ただ待つ」というだけで、何も対策をしないでいる言い訳になっていることです。欲しい人材は、景気の動向で行ったり来たりする層なのでしょうか?
④求人広告もハローワークもHP掲載も、何もしていない会社
本当に驚くのですが、筆者に相談しにくる企業で一番多いのはこのケースです。人手不足だといいながら、「実際は何もやっていない」わけです。もちろん、ずっと何もやっていないわけではなく、「以前はやったけど効果がなかったから」という理由で止めている状態なのですが。
これも恋愛に例えると、「一度、合コンに参加してみたが、彼女なんてできなかったから、二度と行かない」と言っているようなものです。そもそもその合コンで、ご自身はどう振る舞ったか?ということに目を向けていないわけです。
明日から始められる解決策がある
沖縄の方言でいうところの「ウチアタイ」された方も多いのではないでしょうか?
耳が痛い話が続きました。
では、人手不足を解消するために、明日から何をすればいいのでしょうか? 前向きな話をしましょう。
まずは採用という業務を、経営者に“自分事”として捉えてもらう必要があります。
人手不足で困るのは現場だけではありません。結局、人がいないことには成り立たないのが経営です。それなのに「担当者はマネージャーだから、採用はあいつに任せよう」「でもマネージャーは忙しいからとりあえず総務部にやらせておけ」。それでは人手不足は解消しません。
筆者がコンサルさせてもらい、採用・定着が実現できている企業は、ほぼ経営者の方が自ら動いている企業です。従業員数が20〜30人という中小・零細会社は組織が小さいので、採用について経営者が自ら動かざるをない、という理由もあります。でも待遇面では大規模企業より劣る中小・零細企業が、採用に成功しているわけです。
人手不足を解消するのに、大幅な給与アップや難しい制度改革だけが必要ではないということです。まずは経営者自らが動く、そこからスタートすればいいのです。
経営者が「自分事」として仲間探しを
そもそも採用というのは、未来の仲間を発掘して、共感してもらい、共に頑張る仲間を探すことです。
まさに結婚や恋愛に近いですね。大事な仲間探しの作業だからこそ、経営者自らが動くことが重要なのです。
とは言え、経営者は「採用だけ」やるわけにも行きません。筆者も経営者の端くれではありますので、お気持ち実情もよ〜く分かります。
そこで、最近よくご提案しているのが、「総務部採用課をつくりましょう」という提案です。
まずは1人からでもかまいません。経営者はもとより、各部署の担当者と横断的にコミュニケーションが取れる人物が望ましいですね。
退職されたら生産性はどうなるか
「採用のことだけに人件費払えるか!」と、思いました?
それならば、昨年1年間で
- 求人広告にかけた予算
- 採用できた人数
- 昨年退職した人数
- 欠員が出たことによる生産性の低下
など、「採用費用と採用ミスマッチ」にかかった費用を計算してみてください。 採用を担う1人分の人件費が高いのか安いのか、おのずと判断がつくと思います。
執筆者プロフィル 小宮 仁至(こみや・ひとし)
ファンシップ株式会社 代表取締役
「レンアイ型採用コンサルタント」「レンアイ型就転職コンサルタント」として、商工会議所など公的機関でのセミナーを随時開催し、2016年以降300社以上が受講。就・転職者向けセミナーや個別相談300件以上、中小零細企業向けの採用コンサルティングでは個別相談企業100件以上、契約企業で6カ月以内の採用成功率は87%。沖縄県商工会議所連合会エキスパートバンク登録専門家、沖縄県産業振興公社登録専門家。1979年生まれ 熊本県出身 2002年より沖縄移住。うちな〜婿歴10年の2児の父。
【トークイベントのお知らせ】
☆テーマ:「働き方改革とは!?『あなたの・私の働き方』」
☆日時:12月20日(木)午後6時~7時
☆場所:沖縄県立図書館
☆登壇者:レンアイ型採用コンサルタント:小宮 仁至氏(ファンシップ㈱)、組織コンサルタント:波上 こずみ氏(Cosmic Consulting)
☆司会:永田 健作氏(オリジン・コーポレーション)