フラれた理由と退職理由は本音が聞けない【働き方改革@沖縄(8)】


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2019年。始まった途端に、沖縄中を南北に飛び回っております。
レンアイ型採用コンサルタントの小宮仁至です。
採用を恋愛に置き換えて例えると、「目からうろこ」の体験になるということを、2018年だけでも約400社の方々にセミナーでお伝えさせて頂きました。

さて、私の仕事はセミナーだけではなく、その後の個別相談やコンサルティングを通して、その企業の「採用力」を上げてもらうことです。

今年も新年早々、人手不足で「青い顔」をした経営者や総務の人事担当者が相談にいらっしゃいました。

◇執筆者プロフィル 

小宮 仁至(こみや ひとし) ファンシップ株式会社 代表取締役

広告会社やWEBマーケティング会社を経て、2015年にファンシップ(株)を創業。2016年より「レンアイ型採用戦略」を提唱し、企業へのセミナーや求職者への採用支援を実施している。1979年生まれ 熊本県出身。うちな〜婿歴10年の2児の父。

※これまでのコラムはこちら→「働き方改革@沖縄」(https://ryukyushimpo.jp/style/special/entry-786593.html

人手不足って何人不足していますか?

人手不足でご相談に来られる社長さんの多くは、皆さんとても「きつそうな顔」をしています。そうですよね。せっかく事業も、働くスタッフがいなくては何も動きません。

私のところに来る多くの社長さんは

「この2カ月で3人辞めて、来月あと2人退職するんです…」

みたいな状況でお越しになることが多いです。

仕事の受注はあるのに、このままじゃ顧客に迷惑をかけてしまう。かといって事業規模を縮小すると、周囲に心配されて、悪評がたち、悪循環になるのではないか…。

ニュースに出るような、明らかなブラック企業ではなく、たいていの経営者は真面目で誠実で一生懸命な方ばかりです。

だからこそ、私はできるだけ、社長のお話しに耳を傾けることにしています。

「信頼している部下に採用・面接を任せていたら、全然定着しない人材ばかりだった」

「求人を出している時給や初任給が同業と比べて安いようだ。どれくらい給与を上げればいいでしょうか…」

「ベテランスタッフが辞めたので、その負担が若手に回り、雪崩式に退職希望が出ている」

「新人が東京で自分探しをしてくるとか言い出した。さすがに本当の退職理由ではないようだけど本音が分からないから、対策も打ちようがない」

私も経営者の端くれとして、本当に胸が痛くなる話が次々に出てきます。

ひとしきりお話を聞いた後、
「それで、現在どの事業部(店舗)に何人必要なんですか?」

と、聞くと

「え~っと・・・」

と答えられないパターン。本当に多いです。
 

立て直すのは、給与体系の前に経営者のメンタル

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

「社長なんて、現場のことを全然わかってないから不足人員も数えてないんだ!」

という意見も聞こえてきそうですが、そればかりでもありません。

私も経験がありますが「従業員が辞める」というのは、理由が前向きなことであれ、後ろ向きなことであれ、とにかく、雇用主としては「傷つく」ものです。

まさにそれは「失恋」したときに似た心の痛みです。失恋って、1度でもしたら、引きずりますよね? 10代の頃の失恋を皆さん思い出してみてください。もう終ったことだと分かっていても、いまだに胸が痛みませんか?

それが2カ月で3回。これからもあと2回続く…。

そりゃ、正常な状態でいられなくなるのも仕方ありません。一体、会社の何が悪いのか? やっぱり給与なのか? いや、そうじゃなくて経営者である自分の問題なのか? それともこの仕事自体にやりがいがないのかな? 等々いろんなことを考えてしまうようです。

真面目で誠実で一生懸命な社長さんなら、なおさらそうなのです。

なので、人手不足のお悩みの経営者の皆さま! まずは、落ち着いてください。
人が採用できないからと言って、10年間変わっていなかった給与体系や人事考課を、急にいじったりする前に、まずは経営者自身が自信を取り戻すことが重要です。

実は先述の相談者の場合、各拠点の現在の人員数・昨年離職した人数を書き出してみただけで、冷静さを取り戻されました。

「そっか。人材不足といっても2人採用できればいいのか」

「待てよ。この際A事業所を以前からやりたかったモデル店舗に改変すれば、そもそも採用は1人でもいいのかな?」

などなど、次々に建設的なアイデアが出てきました。

普段は、数字と向き合っている経営者でも離職や退職の話を直視するのは、なかなかしんどい作業です。なので、漠然と「人手不足だ」という想念だけが広がってしまって、具体的にどこの部署に何人必要か?ということも、把握できなくなっている。ということがよくあります。

辞めていった人よりも今いる人にヒントがある

続いて前述とは異なる企業の人事担当部長さまの相談です。

この時も、辞めていった元従業員への怒り・悲しみ・憎しみ…愛憎が入り混ざったような話をしばらく話されていました。

「あんなに休みを融通してやったのに…」
「ついこの間まで、やる気を見せていてくれていたのに!」
「頼むから、〇月までいてね、と言ったのに自己都合で先月辞めた!」

などなど20分ほど、お聞きした後に私はこんな質問をしました。

「それで、今日〇〇部長は、この元従業員さんに戻ってきてほしいという相談にいらっしゃったんですか?」

「いやいや、そんな訳ないじゃないですか! もうあんなスタッフはご免ですよ。今度はもっと相性のいいスタッフを採用したくて、相談に来たんですよ!」

「でも、さっきからずっと、その辞めたスタッフさんの話をされていますよ」

「・・・」

ちなみにこの人事担当部長さん。決してこの元従業員さんのようなタイプの方がまた採用したい訳ではないそうです。

皆さん。友人が失恋した後に飲みに誘われて、ずっと元カレ元カノの話を続けていたら…なんて言いますか?

「終わった恋を引きずってないで、早く次の恋を見つけなよ!」

って言いません?

採用も全く同じです。辞めていったスタッフのことを、ああだこうだと考えても、あまりいいことはありません。もちろん退職理由を探り、職場環境の改善につなげることは大切です。ただ、フラれた理由と退職理由は、どちらも本音は聞けないものです。

ただ本当の恋愛と採用が違うのは、皆さんの会社にはまだ「現在働いているスタッフ」がいるということです。

今、在籍しているスタッフは、多少の不平不満はあるにしても、今現在は働いてくれる人たちです。今後改めた方がいいことのヒントがたくさんあると思います。

でもね。それ以上に、今働いてくれているスタッフの中には、社長が気づいていない「この会社で働くことの良さ」がたくさん埋もれているものです。

まさに長年連れ添った夫婦に改めて、お互いの良さを聞き合うようなものです。なかなか照れくさくて、聞き出しにくいことかもしれませんが、灯台下暗し。足元に皆さんの会社の魅力は隠れているものですよ。
 

執筆者プロフィル 小宮 仁至(こみや・ひとし)
ファンシップ株式会社 代表取締役

http://www.funship.jp/

「レンアイ型採用コンサルタント」「レンアイ型就転職コンサルタント」として、商工会議所など公的機関でのセミナーを随時開催し、2016年以降300社以上が受講。就・転職者向けセミナーや個別相談300件以上、中小零細企業向けの採用コンサルティングでは個別相談企業100件以上、契約企業で6カ月以内の採用成功率は87%。沖縄県商工会議所連合会エキスパートバンク登録専門家、沖縄県産業振興公社登録専門家。1979年生まれ 熊本県出身 2002年より沖縄移住。うちな〜婿歴10年の2児の父。