<金口木舌>命支え合う社会を


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 週末から連休にかけて、気象庁のホームページが伝える台風19号の進路図ばかりを見ていた。東日本直撃は避けられない。しかも勢力は強い。幾人かの知人のことが気になった

▼台風の爪痕は深く、広範囲に及んだ。70人以上が犠牲となり、行方不明者もいる。新聞は河川の氾濫で水没した街の惨状を写真と記事で伝えた。自然の猛威を見せつけられた思いがする
▼テレビで「命を守る行動」という言葉を幾度も耳にした。川や崖から少しでも離れることや、山と反対側の2階以上の部屋に避難することなどを指す。これとて、体の不自由な独居老人には困難かもしれぬ
▼SNSを通じて沖縄から台風対策を呼び掛ける動きがあった。「外の様子を見に、家から出てはいけません」はもちろん、「携帯充電」「懐中電灯用意」など細かいメッセージが並ぶ。沖縄発の「命を支える」行動であろう
▼90代の戦争体験者が「自分の命を守るので精いっぱい。人が変わってしまい、他の人のことを考えられなくなる」と語っていた。そんな戦場でも命を支え合った。1個のおにぎり、水筒の水を他人に恵んでもらい、命をつなげた人がいる
▼自らを守り、お互いに命を支え合う社会を目指したい。だから戦争は拒まねばならない。自然の猛威の中で安全を確保するすべを伝えなければならない。新聞週間を迎え、新聞の役割を考える。