おいの結婚式に出席した。新郎新婦が住むのは、冬雪深い富山県の山村。地域の人たちは貸し切りバスで2時間かけて式場に来た。「限界集落」に、近年まれな一家に3代の夫婦が誕生するとあって、地域の人たちの祝福にも熱いものがあった
▼自営業を引き継ぐおいは31歳。近隣の町から嫁ぐ28歳の新婦は披露宴での感謝の言葉で、決心を伝えるまで1カ月間、新郎との連絡を絶ったと葛藤の一端を明かした
▼2004年の大合併で市の一部になったその村は、現在人口500人余。離れた町に住む人たちが通って祭りや冠婚葬祭を支えている。トンネルができるなど道路事情の改善で可能になった
▼冬の雪は大変だが、豊かな緑、おいしい水、山と川の幸がある。生業が確保でき教育や医療・介護の苦労を乗り越えられれば、魅力は十分ある。そんな故郷を誇りたい。県内の離島、農漁村の人々も同じだろう
▼しかし沖縄では、そんな故郷や田舎暮らしが常に軍事に脅かされる。東村高江で起きていることはあまりにも理不尽だ。基地建設のために市民を排除する警察官たちは、自分の仕事に誇りを持てるのだろうか
▼安倍首相はかつて著書で「美しい国へ」と掲げた。福島では原発事故で今も多くの人々が故郷と生業を失ったままだ。沖縄や福島で政府がしていることの先にどんな「美しい国」があるというのか。