沖縄差別の認識重要 ゲンロンカフェ 高橋氏ら「辺野古唯一」誤り提示を


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ゲンロンカフェで活発に意見を交わす、左から、東浩紀氏、高橋哲哉氏、初沢亜利氏

 【東京】沖縄の米軍基地問題について考えるトークイベント「本土に基地を引き取る覚悟はあるか―沖縄に照らして考える思想と運動」(ゲンロン主催)が9日、東京都のゲンロンカフェで開かれた。沖縄の米軍基地は本土が引き取るべきだと唱えている「沖縄の米軍基地」(集英社新書)の著者・高橋哲哉東京大学教授(哲学)は、本土の人々は、沖縄に基地を押し付けることで沖縄を差別しているという認識をまず共有すべきだなどと訴えた。

 写真家の初沢亜利氏、ゲンロン代表取締役社長兼編集長の東浩紀氏(哲学)も登壇し、沖縄の米軍基地の「本土引き取り論」を巡り活発に意見を交わした。

 高橋氏は「沖縄から県外移設の問い掛けがある。それに対し、本土側が安保(日米安全保障条約)は必要と言いながら、自分の所は駄目だと反対するのは明らかに沖縄差別だ。(本土の人々は)まずその認識を共有する必要がある」と強調した。「本土側が基地を引き取った後に、どう犠牲の転移にならないようにするかを本土側が徹底的に議論すればいい」と述べた。

 日本政府による名護市辺野古の新基地建設や高江のヘリパッド建設については「本来はヤマトの人が止めるべきだ」と指摘。「沖縄の人たちは生き延びるために闘っている。本土の人々はそれをさせているのはこちらの責任であることを自覚し、『辺野古が唯一』ではないことをこちらから示すべきだ。その意味で辺野古の闘いとつながっている」と話した。

 初沢氏は「翁長雄志知事は『イデオロギーよりアイデンティティー』と言っているが、本土側で重要なのは『イデオロギーよりポジショナリティー(政治的権力的位置・当事者性)』だ」と主張。「影響力のある人を基地引き取り運動のステージにどう上げていくか。保守側をどう巻き込むか。一刻も早く世論を動かさないと意味がない。この運動を大きくしないといけない」と訴えた。

 東氏は「ヤマト側は(基地問題の)当事者と思っていない。構造的差別に気付いていない。その中で何を優先すべきか。本土が沖縄に基地を押し付けて、それを忘れている本土人を変えることを優先するなら(基地引き取りは)戦略的にありだ」と述べ、基地引き取り論に賛同した。