本書は、米軍ヘリパッド建設により切り裂かれる「やんばるの森」と貴重な動植物、機動隊に力ずくで排除されながらも座り込み阻止行動を続ける市民たち、欠陥機オスプレイの飛行と墜落などの記録写真集である。
元琉球新報報道カメラマン山城博明氏の95枚の写真に、自然保護と基地反対運動を続ける伊波義安氏の解説が加わる。現地をよく知る著者たちの写真と文章には環境破壊への強い怒りと抗議が込められている。
国頭山地に広がるやんばるの森は、生物多様性豊かな亜熱帯性常緑広葉樹林であり、ノグチゲラなど固有種や絶滅危惧種が多く、地球規模で見て貴重な地域である。琉球国時代には、杣山(そまやま)として重要な林産物供給の場であり、王府・間切・村が共同で管理し持続可能な利用を行っていた。しかし、琉球処分後は現在の東村・国頭村の広い範囲が日本政府の官有林となり、戦後は米海兵隊北部訓練場として、地域住民の権利は排除されたままである。
30年前、安波区の訓練場で米軍がハリアー基地建設を始めたとき、区民は現場になだれ込み工事を中止に追い込んだ。現在もまた、市民たちが非暴力の座り込み抗議行動を続けている。威圧的な機動隊と対峙(たいじ)する市民の写真からは、基地と軍事訓練に反対する強い意志が伝わってくる。
森林施業では、尾根上の樹木を伐採しないのが鉄則である。強い降雨により尾根から土壌が流亡する、直射日光や風の吹き込みで乾燥化が進み樹木が枯死するなど、森林荒廃が斜面と流域におよぶ可能性があるからだ。ヘリパッドと連結道路、歩行訓練ルートの森林伐採の写真が、その危険性を強く告発している。ヘリパッド建設とオスプレイによる軍事訓練は、自然環境と野生生物に重大な悪影響を及ぼすことが予測される。
高江・安波のやんばるの森で今起きていることを理解し行動するために、特に本土の市民にこそ読んでもらいたい一冊である。
(花輪伸一・沖縄環境ネットワーク世話人)
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やましろ・ひろあき 1949年宮古島出身。75年に読売新聞西部本社入社、85年~2015年は琉球新報社。現在はフリーの報道カメラマン。