米軍普天間飛行場移設に伴う辺野古の新基地建設問題は25日、埋め立て工事着手という新たな局面に入った。国は工事進展をアピールし、沖縄県民に諦め感が広がることを狙うが、県内では「(政府は)既成事実に躍起」(翁長雄志知事)などと着工を冷静に受け止め、引き続き建設阻止へ団結しようとする空気が強い。県は今後、岩礁破砕行為が確認された時点で工事差し止め訴訟を提起する構え。一方の国も工事の手を緩める構えはない。双方一歩も引かぬ状況で再び法廷闘争に突入する見通しだ。
■政治生命
砕石の投下は、埋め立て工事の第一段階となる護岸工事の初期作業だが、関係閣僚は「埋め立て本体の工事開始」(菅義偉官房長官)、「本体部分に当たる護岸工事」(稲田朋美防衛相)と飛行場本体に着手したと強調し、後戻り不可能な状態に突入したとの印象を前面に打ち出した。国が前進にこだわるのは首相官邸の強い思いがあるからだ。
「俺は辺野古に政治生命を懸けている。そのつもりで説明を」。護岸工事の着手を説明するため官邸を訪れた防衛省幹部を前に菅氏は迫った。防衛省は当初、準備状況なども踏まえ5月上旬を想定していたが、菅氏の言葉を受け4月中の着手を探り始めた。
政府が早期着手に踏み切ったのは、あらゆる手法で工事を阻止する構えを崩さない翁長知事による対抗手段を封じるのが狙いだ。防衛省幹部も「工事は進む。今後は知事が何をやるかだ」と警戒感を示す。そのため、工事着手による影響を懸念していた23日のうるま市長選の後で、米軍属女性暴行殺人事件の発生から1年となる28日を避ける日程が組まれた。
■始まったばかり
県は護岸着手を受け、工事差し止め訴訟に向けた準備を今後本格化する。翁長知事が「暴挙だ」と、工事強行を激しく批判した直後、県の事務方は国によるその事例の数々を取材陣に説明した。
事前協議の一方的終了、サンゴ分布資料に残る多数の疑問、汚濁防止膜設置方法の不十分さ―。汚濁防止膜の設置に関しては、那覇空港の工事現場での汚濁防止膜の図面も示して辺野古の不適切さを強調した。着実に国の「違反」事例を積み上げつつ、1~2カ月後にも予定されるしゅんせつや、くい打ちという明らかに岩礁破砕を伴うとみられる作業着手をにらむ。
しかし、海の埋め立てという重大局面を迎えてもなお「埋め立て承認撤回」に踏み切らない知事に、この日の会見では「危機感は」と問う声も出た。知事は「県民もイライラするでしょうし、不安にもなるだろう。でも決してマイナスの面では考えてはいない。前向きに議論している」と理解を求めた。そして「護岸工事は始まったばかり。二度と後戻りができない事態にまで至ったものではない」と奮い立たせるように言った。
「県民は知事を、知事は県民を、互いに信じ合うしかない」。知事側近は、今後も続く国との戦いを乗り越えるには県民が一枚岩になることが不可欠だと強調した。「国は国家権力で今後も県民の分断を図ってくる。県民ができること、知事ができることを両輪でしていくしかない」と力を込めた。(仲井間郁江、仲村良太)
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辺野古新基地建設問題で、国の工事着手を受け翁長知事は訴訟を含めあらゆる手法で阻止する決意を改めて示した。新基地建設問題を巡る国、県の戦略や思惑を探る。