〈連載「強行の海」辺野古護岸着手(中)〉国、進展アピールに躍起


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 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府は当初の予定を前倒しにして25日に護岸工事着手に踏み切った。工事実施は2週間前には決まっていたものの、政府は政治日程などを踏まえて当日まで明らかにしなかった。それでも政府は、あらゆる手法で建設を阻止すると掲げる翁長雄志知事の権限封じ込めを狙い「本体着手」を大々的にアピールし、計画進展に向けた今後の政治日程をにらむ。

■2週間

海上に投下された砕石=26日午後1時24分、名護市辺野古(小型無線ヘリで撮影)

 護岸工事に着手する2週間前の11日、日米両政府は日米合同委員会でシュワブ沿岸の「K9護岸」を整備することで合意していた。通常、合同委員会での合意は当日に公表されるが、K9護岸整備の合意は「準備が整っていなかった」(防衛省関係者)として伏せられた。

 この間、政府は着手日を見定めていた。うるま市長選や米軍属女性暴行殺人事件発生から1年となる28日を避け、25日着手の方向に傾いていった。

 着手前に稲田朋美防衛相が翁長知事に説明する段取りも模索されていた。23日の陸上自衛隊与那国駐屯地開設1周年記念式典に合わせて来県し、知事と面談して直接伝える算段だった。だが、「北朝鮮対応」で与那国入りは今月中旬には見送られ、事前に伝えられることはなかった。

 結局、工事の実施決定から2週間、着手まで明らかにされることはなく「あらゆるレベルで沖縄県との対話を深めていく」(稲田氏)との言葉とは裏腹に、建設に反対する民意を顧みない政府の姿を浮き彫りにしただけだった。

■裏返し

 入念に準備されたかに見える護岸工事だが、25日に海へ投下した砕石は5袋だけで、26日は1袋も入れられなかった。それでも政府が大々的に「本体工事着手」とアピールするのは、辺野古新基地に反対する県民に諦めムードを演出し、翁長知事の権限行使を封じながら、辺野古が争点となる来年の名護市長選、県知事選を優位に進めようとするからだ。

 知事が埋め立て承認を撤回するには、根拠として「民意」の後押しも重要だとの見方もある。そのために実施が取り沙汰されている県民投票や出直し知事選をにらんで、工事進展のアピールに躍起になっている。

 同時に、辺野古新基地が最大の争点となる名護市長選、県知事選までに護岸工事が完了し、土砂投入まで進んでいれば「もう争点にならない」(政府関係者)との見方もある。

 裏返せば現状では工事の遅滞を懸念していることの表れとも受け取れる。県は今後、許可していないとする岩礁破砕行為が確認されれば差し止め訴訟を提起する方針だ。ただ、政府は損害賠償請求などをちらつかせ、権限行使を踏みとどまらせようとしている。現実に工事が進む中、政府は知事権限の無力化を狙うさまざまな策を繰り出す構えだ。(仲村良太)