<金口木舌>「ガラスの箱」を手放してみる


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 芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの小説「コンビニ人間」は、コンビニエンスストアでアルバイトをする女性が主人公。売り上げを伸ばすため天候を常に確認し陳列棚の入れ替えを考える。寒い日はおにぎりや中華まんがよく売れる。暑い日は麦茶や棒アイスを目立つ場所へ移すなど、余念がない

▼仕事に生きがいを感じ、コンビニを「透き通ったガラスの箱」と例える。明るくて清潔で、商品がひと目で分かるよう配置されている
▼コンビニは生活に欠かせないが、24時間365日営業に変化の兆しがある。ローソン沖縄の那覇古波蔵三丁目店が、24時間営業をやめて営業時間を午前6時~午前0時に短縮した
▼小売業界の競争激化に伴う、従業員の人手不足が背景にある。ローソン沖縄によると、他に時短営業の決まった店舗はないが、複数から時短の相談を受けている。今後、他のコンビニ各店にも波及する可能性がある
▼帰宅が深夜に及んだときには、コンビニでおでんを買うのが楽しみの一つ。朝食の食材も買う。店舗が閉まっていたら困ると考えてしまう
▼想像してみた。店を24時間開けるために、深夜、未明に働く人々がいる。地球温暖化防止が喫緊の課題となる中、大量の電気を消費する営業は持続可能なのか。消費者が便利さを少し手放してみると、人にも地球にも優しい社会になれるような気がする。