「全ての権力は国民に由来する」。韓国で大ヒットした映画「弁護人」で、主人公の弁護士が法廷で叫ぶ場面がある。独裁政権によって逮捕され、拷問による自白を基に起訴された学生を救うため、弁護士は国民主権をうたう大韓民国憲法をよりどころに闘う
▼映画の題材は1981年にあった実際の事件だ。主人公のモデルは故・盧武鉉(ノムヒョン)元大統領。現在の文在寅(ムンヂェイン)大統領は当時、盧氏とともに路弁(アスファルト弁護士=民衆に寄り添う社会派弁護士)として活動していた
▼文氏が法相に任命した曺国(チョグク)氏が14日、辞任した。韓国政府は辞任直前に提出された検察改革案を閣議決定した
▼改革案はあらゆる刑事事件の捜査権を独占する検察から権限の一部を警察に移し、権力分散を図る内容だという。韓国の検察は朴槿恵(パククネ)前政権時に元法務次官の性接待疑惑をもみ消したことが発覚するなど、政権との癒着も指摘されてきた
▼9月には文在寅政権の検察改革を支持する市民らが、ソウルで80万人(主催者発表)の大規模集会を開いている。前政権の退陣を求めて続いた「ろうそく集会」以来の規模だ
▼日本国憲法は国民主権を定めている。安保法、原発の再稼働、辺野古新基地建設。近年に限っても国民、県民はさまざまな問題で声を上げてきた。「全ての権力は国民に由来する」と胸を張って言える状況にあるのだろうか。