<金口木舌>雑誌の顔


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 「容姿(かーぎ)や皮どぅやる、肝心(ちむぐくる)第一(でーいち)」という沖縄の黄金(くがに)言葉がある。人は外見ではない、心の持ちようが大切だという格言である。然(しか)り、人間の価値は顔では決まらぬと当方は素直に賛同する

▼そう言うと「顔も大事だよ」と別の声も聞こえてきそうだ。顔は個性であり、それを最大限生かしている人もいる。歌手や俳優は顔も売りの一つ。作品と並んで風貌が有名な芸術家もいる
▼企業の顔と言えば社長である。県内でも社長がテレビCMで自社をPRするようになった。社長の顔や語り口がそのまま企業風土を表現しているように見える
▼雑誌の顔と言えば表紙である。肝心の題字を覆うがごとく記事の見出しを並べる表紙があれば、一枚のイラストで勝負する表紙もある。後者の代表といえる「週刊文春」の表紙を長年担当した和田誠さんが亡くなった
▼著書「表紙はうたう」の中で表紙担当になった1977年当時のエピソードを紹介している。どのような絵を描けばよいか尋ねる和田さんに、編集部の1人が「強いて言えば都会のメルヘンかなあ」と答えたそうだ
▼沖縄も描いた。石垣島の民家の屋根に載ったシーサー、南大東の港で船を係留するときに用いるビット(係留柱)である。売り上げに貢献しただろうか、いずれの表紙もちゅらかーぎーだった。週に一度のメルヘンチックな歌声は、今も心にこだまする。