<金口木舌>閉ざされた門


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 スポーツのクロッケーは芝の上で競い、打球が門(フープ)を通過し、ペグに早く当てた方が勝ちとなる。1900年、パリ五輪の公開競技だった。欧州などで盛んだ

▼クロッケーをヒントとしたのがゲートボール。47年、北海道の鈴木栄治氏が戦後の混乱の中、スティックとボールを手作りし、子どもが気軽に楽しむ遊びとして考案した
▼ゲートボールは30分間で得点を競う。5対5で戦い、チームワークが鍵。年代や性別を問わないスポーツとして国内外に広まったが、かつてハンセン病患者には門戸が閉ざされていた
▼名護市のハンセン病療養所沖縄愛楽園のチーム協会は82年に発足したが、市協会への加盟を拒まれ上部組織にも加われなかった。伝染しないにもかかわらず偏見や誤った認識で締め出され、認められるまで15年を要した
▼強制隔離を合法化したらい予防法は96年廃止されたが、差別は社会に残った。ことし6月の家族訴訟判決は国の責任を認め、これを受け今月23日に元患者家族の補償法案の骨子がまとまった。国会、政府の謝罪も記されたが、真の差別解消が実現しなければ意義を失う
▼26日には愛楽園でゲートボール大会があり、本島各地や久米島から集まった250人がプレーを通して交流した。力を合わせて門を越えるボールは私たちの社会。笑顔を絶やしてはならない。快音と歓声が響いた。