<金口木舌>首里城、海を渡る


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 沖縄から最初の海外移民が出港したのは1899年12月5日。翌月にハワイ・オアフ島に到着した。ことしで120年。現在の県系人は世界に40万人ともいわれる

▼去る10月30日は世界のウチナーンチュの日。3年前の第6回世界のウチナーンチュ大会で制定され、ことしも世界各地で記念行事があった。3日付本紙でブラジル沖縄県人会の活動が紹介されたが、その写真に目を奪われた
▼琉球舞踊の舞台の背景に首里城正殿があった。沖縄芝居の舞台美術、新城栄徳さん(81)が描いた首里城幕だ。これまでに10作品ほどを制作した。北南米やハワイなどに贈られ、新城さんは現地で首里城幕を見て涙する県系人を見掛けた
▼首里城焼失のニュースは発生直後から世界に伝わった。ブラジルの県人会は書簡で「先人たちの勇気と底力に学び、復元に奮って立ち上がろう」と寄せた
▼火災発生から6時間後、ハワイの県系3世、ジョン糸村さんは再建支援への寄付金をインターネットで募った。「首里城は私たちのアイデンティティー。沖縄のちむぐくるは失われていない」と協力を求めた
▼「沖縄の歴史と文化を伝えたいという熱意を感じた」。県系人の支援に新城さんも胸を熱くする。海を渡った首里城幕は県系人の心の支え、沖縄との絆の証しになった。再建後の首里城に作品が集う。そんな目標があってもいい。