コリコリとした独特の食感がたまらない。「フギ(内臓)イリチャー」というマグロの胃袋の炒め物は、こしょうが利いて酒のつまみにぴったりだった。取材で訪れた北大東村で食した珍味だ
▼食は旅の楽しみの一つ。その土地で取れた食材を使った料理と地酒があれば、楽しみは増す。県振興審議会の離島過疎地域振興部会では、委員から「離島観光では食事で不満を持つ人も多い」と葉野菜などの栽培支援が指摘された
▼北大東村では「フギ」を煮付けなどにするという。島ならではの料理を島外の人にも味わってもらおうと、宿泊施設「ハマユウ荘うふあがり島」のレストランが入荷時限定で提供を始めた
▼南大東村は、2018年度から植物コンテナで水菜など4種の葉野菜を水耕栽培する。台風の影響で定期船が数週間入港できないこともあり、野菜の安定供給が課題だった。20年度にはコンテナを増設予定だ
▼水耕栽培の葉野菜は、南大東村のホテルではサラダなどで提供する。学校給食にも小松菜などを使ったスープや炒め物が加わった。苦みが少なく、子どもたちから人気という
▼進学や福祉、交通など「島ちゃび(離島苦)」を抱える中、南北大東島の人たちは知恵を絞り、たくましく生きる。機体の整備で帰りの飛行機が欠航し滞在が延びた。その中で思いがけず出合った「フギイリチャー」の感動は大きかった。