<金口木舌>「カムイ」と「ちゅら」


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 いろりの中に住む老女は6枚の衣をまとい、黄金のつえを持っている。アイヌ民族に伝わるアペフチカムイ(火の神)の姿だ。クマなどの動物から疫病に至るまで、自然界のものはカムイ(神の宿る物や場所)と恐れられる

▼寒い北海道で暮らす人々にとって暖かさをもたらす火は尊い存在だ。アペフチカムイは文字を持たないアイヌ民族が口承した叙事詩ユーカラに登場する
▼国立天文台は地球から410光年離れた太陽系外の恒星に「Kamui(カムイ)」、その周りを回る惑星に「Chura(ちゅら)」と名付けた。今年が国際先住民族言語年であることを考慮し、日常的に使う人の少ない言語に焦点を当てたという
▼アイヌ語とともに国連教育科学文化機関(ユネスコ)が消滅危機言語に指定しているのがしまくとぅば(琉球諸語)だ。国連の人種差別撤廃委員会は、しまくとぅばの回復などを日本政府に勧告している
▼「しまくとぅばの日」は制定されたが、県も国もしまくとぅば復興に向けた具体的な施策に取り組んでいるとは言い難い
▼しまくとぅばの継承に取り組む団体は、県に琉球諸語の第2公用語化や学校教育への導入を提言している。法的に可能なら県職員の採用試験にも導入した方がいい。日常や公の場面で土着の言葉が使える環境を県や国が整えれば、日本の豊かさを示すことにもなる。