<金口木舌>足るを知る


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 大相撲初場所は平幕の最下位、いわゆる幕尻である徳勝龍の活躍で沸いた。千秋楽の結びの一番は出場する力士の中で最上位の大関と最下位による異例の取組となった。最終日の結びに幕尻が出るのは昭和以降初めてだった

▼幕内を長く務めた名力士の一人に元関脇高見山がいる。金星を挙げる強さに加え、コマーシャルにも出演し、人気があった。ハワイ出身だが、努力と忍耐を惜しまない日本人らしい気風も好まれた
▼節約の意図はなかったろうが、土俵でまく塩が少なかったため「高見山 塩の値段を 知っており」と詠まれた。清めぐらいは盛大にいきたいが、食材であると考えると複雑に思える当節である
▼食品ロスを減らす「30・10運動」をご存じだろうか。宴会などで乾杯から30分間とお開きまでの10分間は自席で料理を食べようという取り組みである。2011年に長野県松本市で始まった
▼上司や取引先にお酌に回って食べられなかった、というようなことを防ぐ。料理を食べきると、抽選で景品などがもらえる仕組みと合わせて全国に広がっている
▼徳勝龍の優勝は無欲の勢いによるとされた。欲をなくし足るを知る、君子の域にはなかなか到達できない。ただ、食べられる量を知り残さないぐらいのことはふんどしを締め直してかかればできそうだ。小さな改革でも一人一人の行いが大きな効果を生む。