<金口木舌>アインシュタインが見た景色


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 世界を一周してきた飛行機に乗せた時計と出発地の時計とを比べてみたら飛行機の時計の方が遅れていた。1971年に物理学者のジョー・ハーフェルとリチャード・キーティングが行った実験だ

▼ノーベル物理学賞を受賞したアインシュタインは特殊相対性理論で「運動する時計は遅れる」と予測した。運動や重力によって時間の進み方に違いが出るというもので、実験はそれを検証したものだ
▼ただし、その時間のずれはわずか数十ナノ秒(ナノは10億分の1)である。「グッド・フライト、グッド・ナイト」(マーク・ヴァンホーナッカー著)によると、旅客機のパイロットは世界中で単一の協定世界時に時計を合わせることになっているそうだ。こちらは時差によって乗客の時計とはずれが生じる
▼著者は世界中の空港を飛び回ってきたパイロット。3万フィートの空から見た各地の風景の移り変わりを紹介する。空港管制とのやりとりにも、発音などでその地の特色が感じられるという
▼きょうから那覇空港第2滑走路の運用が始まる。新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が影を落とす中、新滑走路の運用開始は新たな旅立ちに向けた吉兆と言えるだろう
▼「クリアード・トゥ・ランド(着陸支障なし)」。管制塔からの着陸許可を受け、新滑走路に降りる1番機のパイロットの目には、どんな景色が映っているだろう。