<金口木舌>お・き・な・わ・休・業


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 「おこ(嗚滸)」と呼ばれる人たちが、かつていた。辞書を開くと「痴」の字を当て、愚か者などの意味が並ぶ。現在も「おこがましい」という言葉で残っているが、もともとは笑わせる人を指していた

▼きっちりと当てはまる言葉はないかもしれない。民俗学者の柳田国男は「嗚滸の文学」で、嗚滸の者とは本来は人を楽しませる技術者で、いつしか「おろか」や「バカ」になり変わったと「嗚滸の零落」を憂えてみせた
▼なんとかして今の状況を乗り越えようと、笑いの力を発信する人も増えている。狂言師の野村萬斎さんは「うちで笑おう 狂言の笑い」と題した動画を公開し「型で笑っているうちにきっと楽しい気持ちになる」と笑い方を伝授している
▼「わぁー、はー、はー、は、は」と大きく口を開き、腕を広げて、前にかがめた体を起こしながら、全身で笑う。やってみると全身に血が回り、けっこう体力も使う。自宅にこもりなまってしまった体には笑いは妙薬かもしれない
▼休憩を取りながら進もう。まだまだ先は長いかもしれない。笑いを生み出す人たちの環境もなかなか厳しい。テレビ番組も「3密」を避ける形で収録している。それぞれが工夫を凝らしている
▼業(ぎょう)とは、励み努めて得たわざを意味する。研さんを積んできた人たちがまた、そのわざを披露してくれる場を夢想しながら、今日もうちで過ごそう。