<金口木舌>平和のいしずえ


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 紀元前のギリシャで始まった競技会は戦乱の中でも、4年に一度のこのときだけは争いをやめて開催された。選手は安心して出場し、民衆も観戦できたという

▼憎しみを超えて連帯するスポーツの祭典。意義をよみがえらせようとクーベルタン男爵の提唱で国際オリンピック委員会が1894年6月23日に発足した。きょうはこれを記念するオリンピックデーだ
▼戦後50年の節目に沖縄県が最重要事業として建立したのが平和の礎(いしじ)だった。25年前の6月23日の除幕式典で県は「悲惨な体験をいしずえとして私たちは世界の人びとへ訴える」と非核・平和を宣言した
▼礎は戦争体験を風化させず、教訓を伝える継承の場である。平和の尊さを学ぶ場でもある。建立によって、恒久平和を永遠に世界に訴える沖縄の役割を確認した
▼図らずも「場」の意味が問われたことしの慰霊の日である。全戦没者追悼式の会場を国立沖縄戦没者墓苑とした県は批判を受け、例年通りに平和祈念公園の式典広場に戻した。戦争を肯定せず、美化せず、後世に語り継ぐ意義を思い起こしたい
▼オリンピックデーは第2次世界大戦後に制定された。平和に寄与する五輪の理念を広めるのが狙いだった。きょうは75年前を改めて思い返す日だ。平和を希求する沖縄の原点に立ち戻ることで、心の中の平和のいしずえも、より強くすることができる。