<金口木舌>多様性の尊重を


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 ゲイであることを同級生に知られ、周囲の視線の冷たさに絶望した高校生が学校のベランダから身を投げる。「欲しかったなあ、普通が」とつぶやきながら。昨年、NHKで放送された連続ドラマ「腐女子(ふじょし)、うっかりゲイに告(こく)る。」の一場面だ

▼性的少数者(LGBTQ)を扱うドラマなどがここ数年、脚光を浴びている。2018年に放送された「おっさんずラブ」は性別を超えた純愛を描き、反響を呼んだ。当事者の苦悩への理解も深まるといい
▼厚生労働省の調査で、同性愛などの10代男子371人のうち65%が自殺を考えたことがあると答えた。自殺未遂の経験がある人も1割超だ。無理解や好奇の視線はまだ強い。性の自認と異なる肉体を嫌悪し、自傷行為を繰り返す人もいる
▼宜野湾市議会が「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」案を否決した。県内10市などが定めた男女共同参画推進条例の内容に加え、性別などに関係なく平等で多様性を認め合う社会の実現を目指す条例案だった
▼反対した市議は男女共同参画社会基本法を引き合いに、他自治体と同じ条例の策定を求めた。条例案の再上程と可決を求める署名運動が始まっている
▼日本の社会は、自ら選択できない指向により秘密を抱えざるを得ない人々にとって生きづらい。変えるには、社会を構成する一人一人が当事者の声を聞くことだ。