<金口木舌>「リーダーの心得」とは


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 ジャマイカ系移民の子としてニューヨークのハーレムで生まれた。ストリートキッズでコカ・コーラの輸送やペプシ工場で白人が担当する瓶詰め作業を経験した

▼「誰でも入れる」ニューヨーク市立大で予備役将校訓練隊プログラムを卒業し陸軍へ。それが初の黒人で最年少の米軍トップの統合参謀本部議長に就任する。後に国務長官も務めたコリン・パウエル氏だ
▼パウエル氏は2003年、国連でイラクの大量破壊兵器疑惑を指摘した。これがイラク攻撃を正当化することになるが、侵攻後も大量破壊兵器は見つからなかった
▼著書「リーダーを目指す人の心得」で国連演説を「最悪とも言うべき失敗」と回顧した。その上で「失敗はなるべく早く克服すること。(中略)自分に責任があるなら、潔く認める」と教訓も記している
▼菅義偉新首相は同書を愛読書に挙げる。会見に臨む心得としてパウエル氏の「私には答えない権利がある」との言葉を引き「私も気が楽になった」と雑誌の特集で語った。それで会見の応答にも妙に合点がいくが、首相でも踏襲と考えると思いやられる
▼パウエル氏は「やればできる」との信条の項で「できると信じてやりはじめ、無理だという事実や分析が積み上がるまでやることが大事」と指摘する。失敗は早期に克服し、無理との分析に真摯(しんし)に向き合う。それもリーダーの心得だ。